世界文化遺産登録 明治の面影を残す「熊本県・三角西港」へ

世界文化遺産登録 明治の面影を残す「熊本県・三角西港」へ

2016/07/13

石積みの埠頭(ふとう)や水路、そして明治時代の面影を色濃く残す建築物。2015年6月に「明治日本の産業革命遺産」のひとつとして世界文化遺産登録が決定し、注目される『三角西港』の魅力に迫る。(月刊タウン情報クマモト編集部・福永)

月刊タウン情報クマモト

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“明治三大築港”のひとつ
当時にタイムスリップしたかのような情緒ある街並み

埠頭で釣り糸をたれる姿と、穏やかに波打つ海。宇城市から上天草市へ向かう国道57号沿いにある三角西港ののどかな日常だ。

ここが日本近代化に貢献した貿易港だったとは信じがたいが、かつて大型蒸気船や帆船が停泊し、回船問屋の商人たちでにぎわっていたのは間違いない。

静かに余生を過ごしてきたこの港が「ユネスコ・世界文化遺産」への登録を受け、今また脚光を浴びているのだ。西欧風の雰囲気を生かして、ドラマの撮影現場としても使用される注目スポットへいざ!

当時の姿をそのまま残した建築物。築港により行政や司法などの都市機能が集約。市役所や裁判所だった建物もあり、明治期の港が完璧に完璧に存在するのは日本でもココだけ!

港を中心に都市が発展 西洋の最新技術を取り入れた港づくりは圧巻!

丹念に調査を進めたムルドルは「宇土半島の先端に位置する三角は水深が深く、潮の流れも穏やかで熊本県の貿易港に最適」と進言。これにより明治17(1884)年、築港へと着手した。さらに山を削って海面を埋め立て、近代的な港湾都市を建設。

当時の最新技術を用いた石積み

最長756mに及ぶ埠頭は、ムルドルの設計と名だたる天草石工たちの技術が見事に融合したもの。画一化された切石積みに高度な技術を要した

国家の威信を懸けて開港し、明治三大築港のひとつに数えられた三角西港。その始まりは、今から約130年前にさかのぼる。

当時の熊本は良港に恵まれず、貿易港の必要性が建議された結果、政府から派遣されたのがオランダ人水理工師、ローウェンホルスト・ムルドルだった。

西洋から取り入れた道幅と曲線美

ムルドルの設計によると当時、日本の建造物に見られなかった曲線を多用し、水路幅や道幅ともに当時の日本の基準をはるかに超えるスケールで描かれている。

また、道路沿いの建物は2階建てまでに制限され、景観デザインによる美しい街並みも魅力のひとつになっている。

国道57号の両脇を走る2本の道路幅は約10mあり、その道沿いに街が形成。排水路や架け橋には当時の日本にない曲線加工が用いられた

急速に発達した港街しかしその栄華はわずか12年

この地域一帯の政治・経済の中心となり、今では想像できないほどの上流社会を築き上げていった。

しかし、その栄華はわずか12年で終焉(しゅうえん)を迎えることとなる。港の潮流が思いのほか速く、船がうまく着岸できなかったこと。さらに明治32(1899)年には現在の三角東港近くに鉄道が完成し、重要港としての役割が移されたことが理由だ。

衰退からチャンス到来!
世界文化遺産へ!

こうして明治期の産業革命の表舞台から姿を消した三角西港だが、その結果として石積み埠頭をはじめとする当時の施設がほぼ原形のまま残され、存在意義が見直され始めることにも つながった。

そして平成18(2006)年、九州一体となって取り組む政策連合の一項目として、世界遺産登録に向けた取り組みが動き始めた。三角西港と荒尾市の万田坑を含む8県・23の産業遺産が「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」として世界遺産候補に挙ったのだ。

1840年に起こったアヘン戦争の際、清国がイギリスに敗れることをいち早く察知した日本が、西洋の先進技術を独学で習得。極めて短期間のうちに急速な産業化を達成した点が、世界史上において評価されているのだ。奇麗な海の眺めに、往時への思いをはせてみてはいかがだろうか。


三角西港に行ったら立ち寄ってほしい おすすめカフェ2選

1.『三角西港珈琲屋 和蘭館』

港沿いに佇(たたず)む異国情緒漂うカフェ

三角西港内にあるカフェ。デミグラスソースがたっぷりかかった“ハンバーグセット”1650円をはじめとする洋食を存分に味わうことができ、有明海の絶景を独占できるテラス席で味わえば気分も格別だ。

サンセットを眺めながら、のんびりと過ごすのがオススメ
白壁の美しい外観

2.『CAFE GALLERY LAFCADIO』

名作が生まれた海沿いの洋館でくつろぎの時を

文豪・小泉八雲の紀行文“夏の日の夢”に登場する『浦島屋』を復元した建物内のカフェ。

地元の野菜を使ったサンドイッチなどの軽食に加え、地元・三角町の『一心珈琲』で自家焙煎(ばいせん)したコーヒー、数量限定の奥さま手作りのケーキなどがメニューに並ぶ。

明治時代のレトロな風情を残す港を眺めながら優雅なひと時を過ごしたい。

三角西港の敷地内にあり、散策していると洋風の外観が顔を出す
カーテンが揺らめき、淹(い)れ立てのコーヒーの香りが漂う
“バゲットサンドセット”は地元の野菜を使用

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