スナック遊びと聞くと、みなさんどのような印象をお持ちでしょうか。なじみのない人にはとっつきにくく、なおかつ出張先で見知らぬスナックに足を踏み入れるのは、かなり至難の業。しかし、人情の街・大阪にはそんな不安を微塵も感じさせず遊ばせてくれるお店「スナック蟻」があるのです。
Yahoo!ライフマガジン編集部
スナックビギナーも大歓迎
「スナック蟻」が創業したのは今から48年前の1971年。周辺は近年、ウラなんばという呼び名で人気を集めていますが、こちらは、その名が付くずっと前からなんばの移り変わりを見てきおり、まさにレジェンド級のスナックと呼ぶにふさわしいお店と言えます。
なんばの酔客を癒やして半世紀。みんなのママがこちら!
「スナック蟻」のママである上野静子さんは、もともとOLとして働いていましたが、ふとしたきっかけでグランドパブのお手伝いをしたことから夜の世界に。その美貌と丁寧な接客であれよあれよという間に人気を集め、26歳で独立し、自分のお店を開業されました。
- 静子ママ
- 静子ママ
- 「この近辺で何度かお店を引っ越ししていて、今の場所に来て14年になります。以前はもっと大きなラウンジで毎日着物でお店に出ていたんですけど、体力的にもしんどくなってきたので、私もお客さんも気軽に楽しめるような形態に変えたんです」
サービス精神あふれる蟻スタイルのおもてなし
スナック遊びでは、だいたいどの店でもカラオケ、お酒、軽食という3点セットが付いてきて、お値段は場所によってさまざまですが、セット料金4000円ぐらいというのが相場でしょうか。しかし、「スナック蟻」はウラなんばというミナミのど真ん中にありながら、飲み、食べ、歌い放題でなんと1時間2000円(延長料金は15分毎に500円)という破格の料金で遊ぶことができるのです。
しかも食事は静子ママと調理を担当するチーフによる手作りのお惣菜が数多く用意され、どれだけ食べてもお値段は追加なし。破格のサービスぶりがうれしすぎます。
\30種ほどのお惣菜がよりどりみどり/
- 静子ママ
- 静子ママ
- 「もともと料理が好きというわけではなかったのですが、この場所に移転してきて食べ放題制でやろうと思ったときに自然といろいろなお惣菜を作るようになっていきました。母から教わったダシをもとにやさしく、お酒のお供になるものを作っています」
目移りししそうなほど、たくさんのメニューが用意されている「スナック蟻」の食事メニューですが、ここでは、その中から、ぜひ味わってもらいたい3品をご紹介します。
もちっと食感とダシの風味が魅力の「かやくごはん」
いきなりご飯ものではありますが、「かやくご飯」は、ぜひ食べていただきたい一品。お店に到着して、まず最初にダシがしっかり染み込んだご飯をいただけば、頭もおなかもシャッキリ。グッドコンディションでスナック遊びに臨めます。
初めてなのに懐かしい「くるみと里芋の和え物」
里芋のとろふわな食感とくるみの歯ごたえの融合がくせになる「くるみと里芋の和え物」。毎日出ているメニューではないので、ありつけた人はラッキーです。
定番の「おでん」
小鉢の定番として外せない「おでん」は、鳥の手羽でダシをとることで、クリアーな色味なのにしっかり風味が味わえる一品に仕上がっています。ダシのがらになった手羽も注文すれば食べることができますよ。
同業者たちも羽を休める止まり木の魅力
長い歴史を誇る「スナック蟻」には、一般のお客さんだけでなく同業者たちもよく訪れます。この日もすぐ近くにある味園ビルのバーのオーナーらが集まってお酒を酌み交わしていました。
大阪随一のディープスポットとして知られる味園ビルのバーの中でも、特に多種多様な人種が集まることで有名な「深夜喫茶 銭ゲバ」マスター・ムヤニーさん。「スナック蟻」への来店歴も長くママとも顔なじみです。
- ムヤニーさん
- ムヤニーさん
- 「蟻さんが今の場所に来てから、僕の周囲の人たちの間で、すごくいい店がある!ということでウワサになっていたんです。それで行ってみたら、どっぷりハマってしまって。今では僕も『スナック蟻』の広報部員の1人です」
イベントスペース「なんば紅鶴」でブッキングなどを担当されている天野宇久さんも、ついつい「スナック蟻」に足を運んでしまうというフリークの1人です。
- 天野宇久さん
- 天野宇久さん
- 「仕事が休みになると、とりあえず蟻に行こうかな〜となりますね。僕は以前、東京でも働いていたのですが、こんなお得な値段でゆっくりくつろげる店ってなかなかないですよ」
マイクを片手に『三都物語』(by 谷村新司)を熱唱しているのは、バー「マンティコア」のマスター・リシュウさん。普段はほとんどカラオケに行くことはないけど、「スナック蟻」では歌うのが楽しくて仕方ないのだとか。
- リシュウさん
- リシュウさん
- 「僕ら昭和生まれの人間にとって、スナックは大人になったら必ず行くと思っていた場所。でも、実際はなかなかここぞというお店がなくて、そんなときに蟻さんを教えてもらって通うようになりました。自分の店のお客さんもよく行っていると聞きますよ」
スナックというとお父さんたちの社交場というイメージでしたが、場所柄もあってか、「スナック蟻」はお三方のような文化的な雰囲気のお客さんや若いお客さんも多いのだとか。
- 静子ママ
- 静子ママ
- 「テレビや雑誌で取り上げていただくようになってから若いお客さんが増えましたね。こういうお店に普段来ることがないから新鮮に感じていただいているようです。当店は本当にお手軽に安心して遊んでいただけるので、スナックがどんなところか興味があるという方には、まず実際に来て様子を知っていただけたらと思います」
システマチックになりがちな飲食業界の中で、個人店ならではの温かな交流が楽しめるスナック。近年では、じわじわと再評価の熱も高まっており、一部の若者の間でスナック遊びがブームになっているのだとか。スナックデビューを計画しているという読者の方は、まず「スナック蟻」へ足を運んでみてはいかがでしょうか。人肌恋しい出張時にもぴったりです。ちなみに月・木曜は女性のみ4名以上のグループに限り料金50%オフという超お得なサービスもありますよ!
取材・文=伊東孝晃(クエストルーム) 写真=古賀亮平
\あわせて食い倒れたい/