サラリーマン必見!「ラーメン二郎」熱狂の秘訣を経営学に学ぶ

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2019/03/14

サラリーマン必見!「ラーメン二郎」熱狂の秘訣を経営学に学ぶ

カルト的な人気を誇るラーメン店「ラーメン二郎」。デカ盛りラーメンの先駆けとして、ラーメン業界に多大な影響を与え、近年はインスパイア系といわれるお店も話題となっている。胃袋の限界を突破する強気な量。それなのになぜ、人はラーメン二郎に並ぶのか。その人気の理由を経営学から紐解いてみた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

ラーメン界は二郎か、じゃない方に分けられる

ラーメン二郎のデカ盛りラーメン(イメージ)

1968年に東京・三田で創業したラーメン二郎は、現在全国38店舗に広がる人気ラーメン店だ。黄色い看板のそのお店には、連日開店から閉店まで多くの人が列を成すため、目にしたことのある方も多いのではないだろうか。

ラーメン二郎の大きな特徴は、なんといってもデカ盛り

濃厚なとんこつ醤油のスープ、豪快に盛り付けられた麺と野菜、そして分厚い豚肉からなる独特なラーメンは広く知られるところであり、筆者自身も興味はあるが、「本当に食べ切れるのだろうか」との不安から、なかなか行列の一員にはなれないでいる。

しかし客が不安を抱くほどの量とハードルの高さでありながら、ラーメン二郎の行列はあとを絶たない。なぜラーメン二郎は人気なのだろうか。

自身もジロリアン(※ラーメン二郎のコアなファンのこと)であるという経営学者、牧田幸裕教授にお話を伺った。

話を聞いたのはこの人!

牧田幸裕(まきた ゆきひろ)さん

牧田幸裕(まきた ゆきひろ)さん

ジロリアン・名古屋商科大学ビジネススクール教授

聞き手は美しきフードファイターのこの方!

ますぶちさちよさん

ますぶちさちよさん

対談の場所は、なんとカラオケ店!? 

秋葉原駅昭和通り口から徒歩2分。そこはラーメン店ではなく、「カラオケパセラ昭和通り館」

カラオケパセラ昭和通り館。平日昼から多くの方で賑わう。ランチ利用する方もいるそう

アニメやゲームのコンセプトルームがあるため、ファンの集いや、パーティー、女子会などで幅広く利用されるカラオケ店だが、ここになんと二郎系のデカ盛りラーメンがあるのだ。

そもそも二郎系と呼ばれるラーメンは2種類ある。

一つは店主がラーメン二郎三田本店で修行し暖簾分けされた、いわゆる「直系」。もう一つは二郎好きの人たちが、自分なりに二郎を解釈して作った「インスパイア系」

ここ「ラーメンパ郎」は「インスパイア系」と呼ばれるジャンル。一般的なラーメン二郎との大きな違いは、個室でソファに座りながら二郎を楽しむことができること。

女性やファミリーといった、普段二郎をなかなか体験できない層も二郎系ラーメンを体験できるとのことで、話題となっている店舗だ。ラーメンと同時に、他のフード・ドリンクメニュー、デザートまで注文できるのは、パセラならではの特徴である。

\牧田教授に聞いた二郎熱狂の秘訣/

・その①「達成感」
・二郎が広告なく行列をつくる理由
・その②「一体感」

なぜ人は二郎へ足を運ぶのか。その理由は「達成感」にあり

牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「一般的なラーメン店は、スープ・麺・チャーシューなどの違いで個性を出しますが、既に日本のラーメンはどこも90~95点くらいととてもハイレベルです。となると、非常にレベルが高いところで勝負しなくてはならない。これを経営学では『レッドオーシャン』といいます。競争が絶えず魚が血を流している海という意味なんです」
ハイレベルで競い合うラーメン業界のグラフ
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
こういう戦い方をすると消費者はどこに行ってもおいしいと感じます。しかし『どこに行ってもおいしい』と『どれでもいい』になってしまう。日本の家電製品も一緒です。どれも優秀。なら一番安いものを…となってしまうわけです」
一般的なラーメン店と二郎の決定的な違いは何なのか、真剣に話を聞くますぶちさん
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「その点二郎は全く別の軸で勝負をしています。その一つが『達成感』です。これは他のどのラーメン店とも競合しない。これを経営学では『ブルーオーシャン』といいます。敵がいない独自の軸をもっているんです。この軸にハマった人が常連となり、強力な顧客となります」
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「達成感ですか」
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「普通の人は二郎を食べるのに、相当苦労するわけですね。完食までに自分の限界と向き合うわけです。例えばフルマラソンは、一般的に3~4時間走るわけですが、諦めたくなる瞬間もあるでしょう。でも結果諦めないでゴールをすることで達成感を感じるんですね。二郎はわずか十数分、1000円以内で、自分の限界を知り、自分自身と向き合える非常に稀有な機会を提供している店なんです」

果たして本当に「達成感」は得られるのか、いざ実食!

牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「パ郎は、サイズが『2倍』『3倍』という表記ですね。二郎は『大』か『小』というサイズ展開なんです。行列に並び食券を買うまでに逡巡するんですよ。強気な自分と弱気な自分が頭の中で喧嘩するんです。やはり年齢とともに『大』はなかなか難しくなりましたが…」
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「私は3倍のラーメンパ郎に挑戦してみます!」
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「二郎は注文の仕方も独特です。食券を買って終わりではなく、『コール』と言ってトッピングや量の調整をしなければならない。よく聞く『〇〇マシマシ』のような呪文です。これも店舗によって、言うタイミングもまちまち。とても緊張するシーンです」
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「難しそうですね…。その点、パ郎はメニューを見ながら落ち着いて注文できますね」
3倍ラーメンパ郎(2300円)

牧田教授は通常のラーメンパ郎を注文。サイズを比べると…。

左:ラーメンパ郎(860円)、右:3倍ラーメンパ郎。重さは約3kg
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「あはは! 大きいですねえ」
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「器が違いますもんね。私も二郎へ行くとかなり大盛りにしてもらいますけど、これはなかなか(笑)」
2人
2人
「いただきます!」
食べ始めるのかと思いきや、なにやらラーメンに細工をする牧田教授
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「牧田教授、麺をひっくり返していますが、これは皆さんやるんですか?」
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「これを『天地返し』といいます。麺がスープを吸って量が増えるのを避けることと、上に乗ったゆで野菜をスープに浸すことで、味をつけるわけです」
キレイに天地返しされたラーメンパ郎
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「大食いの大会でもこの戦法を使います。決勝では大抵ラーメンがでるんですが、スープの熱さが不利になります。麺がスープを吸わないようにするのと、冷ますために天地返しするんです。流石に3倍だと、野菜の重みで天地が返せないですが…(笑)」
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「野菜の食感はミディアムですね。野菜をステーキで例えると、レアを「シャキ」、ウェルダンを「クタ」といいます。スープはあっさり系ですね。そんなに乳化(※)もしてなくて、カラオケをしながらでもすっきりいけると思いますよ」

※乳化 … 豚骨を煮込む際の加熱沸騰にかける時間等で、水と脂が混ざり合いスープが白濁しコクが増すこと。

ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「二郎はお店によって味が違うということですか?」
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
違いますね。直系であっても、店主なりに二郎をどう解釈しているかによって味や量が変わります。僕らはそれを楽しみに行ってるんですね。この店主は二郎をどう解釈し、どう表現しているのか。これらの特徴も把握して、準備していくという場合もありますし、突然のドッキリを楽しむという日もあります」
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「でも二郎ってCMとかやってないですよね。どうやって下調べしていくんでしょう?」

二郎が広告なく行列をつくる理由

牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「そこが二郎の成長の理由です。時代背景として、90年代半ばからインターネットが普及し、2000年代からはブログサービスが急成長しました。二郎の店舗の増え方をみると、2000年代から角度があがってきてるんですね。これは僕の仮説ですが、インターネットで文字の口コミ文化が生まれ、ブログ時代には写真を気軽に投稿できるようになった。やはり映えるんですよ。なぜあんなに大盛りなのか、なぜ大量にもやしが乗っているのか、分厚い豚なのか。二郎自体が、ツッコミどころ満載だった。それが人々の興味を掻き立て、二郎は行列ができる人気店となった。二郎の見栄えは時代背景にマッチしたんですね」
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「『映え』がキッカケだったんですか(笑)。お店によって味が違うことも、たくさんの人から愛され続ける秘訣なのかもしれませんね。そういう意味でいうと、ラーメンパ郎はにんにくの香りがそんなにしないので、女性や会社員さんも嬉しいと思います。二郎というとにんにくのイメージでしたから」
3倍パ郎に食らいつくますぶちさん。かっこいい…!

仕事の途中や女性の方にも楽しんでもらうため、敢えてベースのにんにく量は控えているというラーメンパ郎は、トッピングで味変が可能だ。

トッピングは、無料のにんにく・カレー粉・マヨネーズの他、50円でチーズ・生たまご、150円で豚増しができる。その他オプションとして、麺を豆腐、もやし、低糖質麺に変更可
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「生たまごを溶き、つけ麺のようにして食べるのが個人的にはオススメです。二郎三田本店にはないですが、生たまごは支店やインスパイア系で食べられる店舗もあります」
極太麺には生たまごがよく絡む
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「すき焼きみたい! マイルドになりますね!」
ますぶちさんもお気に入りのご様子

ますぶちさんは更に、店長オススメというカレー粉とマヨネーズに挑戦。

カレー粉は味が一気に変わるので、後半に追加するのがオススメとのこと
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「カレー粉を入れるとスープが全く別のものになりますね! スパイスでコクは深くなるのに後味は更に爽やかになります。マヨネーズはお野菜にぴったり! 食べきるのがつらいなというとき、いい気分転換になると思います。私にはその必要はないですけど(笑)」
カレー粉で味変し、3倍ラーメンパ郎を完食完飲するますぶちさん
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「すごいですね! どんどん加速していくんですね」
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「あ〜美味しかった! ごちそうさまでした! お腹はまだ全然余裕があります! 二郎ではいつもとんでもなく大盛を注文するんですが、周りの視線を感じるんですよね。『女性がこんな量頼むのか』っていう。職業病のようなところもありますけど、気分がいいですよね(笑)」
空のラーメン鉢、もといすり鉢と記念撮影。顔より大きい器に驚愕

ラーメン二郎人気の秘訣、もう一つは「一体感」にあり

牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「二郎の特徴の一つとして、隣の人の食べ進め方が気になるということがあります。レストランやファーストフード店では、隣の人なんて気にならないですよね。二郎はカウンターに座ると5〜6杯が一度に提供されるんです。それを「ロット」と呼び、皆よーいどんで食べ始めるわけです。同じロットにいる人達は皆知らない人ですが、その瞬間だけは仲間なんです。ひとりで二郎を食べきることが難しかったとしても、皆がいて、意識し合うから頑張れるんですね」
ますぶちさちよさん
ますぶちさちよさん
「ロットって言うんですね! 初めて知りました。確かにお隣がどんなメニューを頼んでいるのか気になりますね」
知らない人でも、同じロットは皆同志
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「スポーツジムも、ひとりでトレーニングするのはつらくても、スタジオレッスンなら最後まで頑張れる。この『一体感』と、食べきったときの『達成感』が、一般的なラーメン店とは違う世界なんです。こういう独自のポジションをとっているから、二郎は人気だし、経営学では差別化が成功していると言えます」
一体感・達成感という独自のベクトルが、二郎を二郎たらしめる
牧田幸裕さん
牧田幸裕さん
「一体感といえば、ラーメンパ郎には『鍋パ郎』というメニューがあるんです。大鍋に入った大量のラーメンを皆でシェアするメニューです。これはもう一体感の極みじゃないですか! こういった点で、ラーメンパ郎の店主はどう二郎を解釈しているかが垣間見えますね」
ごちそうさまでした!

二郎の人気の理由は、他のラーメン店にはない「達成感」と「一体感」で勝負していること。

本家二郎デビューにはちょっと勇気がでないという方も、個室でみんなで楽しめる「ラーメンパ郎」で、まずはこの達成感と一体感を体験してみてはいかがだろうか。

取材メモ/私は絶対にチャレンジできないですが、3倍パ郎を食べる姿は見ている方もストレス発散になります。良い汗かきました(見てただけだけど)。

取材・文・撮影=蛯原天、イラスト=安田はつね

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