エスニックの新聖地!? 神田駅西口商店街は酒場だけにあらず!

特集

東京商店街グルメ

2019/03/13

エスニックの新聖地!? 神田駅西口商店街は酒場だけにあらず!

商店街は日常生活の場であると同時に、街歩きも楽しませてくれる包容力を持っている。そんな、国内外の散歩好きにも注目されている東京エリアの商店街をシリーズでご紹介。第12回は千代田区にある「神田駅西口商店街」を食べ歩いた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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「神田駅西口商店街」ってどんなとこ?

JR神田駅西口正面にある青いアーチが商店街の入り口

皇居の北東に位置する神田駅西口界隈。江戸時代の初めには秋田藩佐竹氏が屋敷を構えていたが、「天和(てんな)の大火」(1683年)で焼失したため、現在の台東区・佐竹商店街付近に移転。その後この地は商人や職人が集まり“江戸城の下町”として町人文化が花開いた。

商店街入り口から皇居方面に向かって撮影した1954年ごろの神田駅西口商店街。当時から会社員や学生で賑わっていたようだ(写真提供:神田駅西口商店街振興組合)

今回訪れた「神田駅西口商店街」はその名の通り、JR神田駅の西口から西へ向かって延びる全長約300メートルの商店街で、およそ100軒の商店が軒を連ねている。

エスニック料理を代表するカレーの名店も(写真は「COZY」)

日本屈指のオフィス街である大手町や丸の内への通勤路ということもあり、手頃な価格でおいしい料理を楽しめる飲食店が充実しているのも、この商店街の大きな特徴だ。

商店街の中ほどには関東大震災による区画整理で移された佐竹氏ゆかりの佐竹稲荷神社が鎮座

神田のおいしい食べ物といえば、日本そばや焼き鳥など“和の大衆食”が思い浮かぶが、和食と並んで個性的なエスニック料理店が存在感を放っているのもこの商店街の魅力。そこで今回は、江戸の風情を今に伝える神田駅西口で、エスニックの名店を食べ歩くことに。


\食べ歩いた3軒はこちら/
1:「Cozy(コージー)」(欧風カレー)
2:「エルトロス」(メキシカンバー)
3:「あろいなたべた」(タイ料理)
コラム:「藤田酒店で和のエスニック“角打ち”再入門」


フレンチ流の技が冴える

1:「Cozy(コージー)」(欧風カレー)

2017年12月オープンの「コージー」は、商店街の表通りから一本入った静かな路地裏にある

その起源には諸説あるが「欧風カレー」とは、言わずと知れたインドの民族料理を、日本の料理人がフランス料理の手法で発展させた、ある意味非常にややこしい経緯で生まれたエスニック料理なのだとか。食べ歩きの最初に選んだ「コージー」は、2017年12月にオープンした欧風カレーの専門店だ。

店舗は店主の石川潤さんが古い印刷会社を1年掛けてコツコツ改装したもの

ーー神田周辺はカレーの名店が多いですが、この商店街にお店を作った理由は?

コージー店主・石川潤さん
コージー店主・石川潤さん
「ちょっとややこしいので、カレーを食べながらお話ししませんか?」

ーーぜひとも!

\カレーを仕込むのはこの人/
コージー店主・石川潤さん

消防庁、高級ホテルのコック、大手コーヒーチェーンのメニュー開発を経て、ここ神田で居酒屋も営む石川さん
石川さん
石川さん
「消防庁に数年勤めてからホテルの厨房でフランス料理を学び、その後チェーン店のメニュー開発の仕事を経て、この商店街で23年前から『味彩(あじさい)』という居酒屋を経営しているんです」

ーーいきなりややこしくなってきましたね。

石川さん
石川さん
「東京駅の近くにあったホテルは『利益は宿泊で上げるので厨房は味だけを追求しろ』という考えで、素材と手間を惜しまず料理に没頭できた。そこでコンソメを作るスープの担当をしていました」

\骨付きチキンがドーン!/
「チキンローストカレー」(1000円、コーヒー付き1200円)

バターの香りや野菜の甘み、トマトのほのかな酸味が20種のスパイスと調和する

ーーこのカレーソースのおいしさは、ホテルの厨房で磨いた技の結晶なんですね。

石川さん
石川さん
「伝統的なコンソメを使うホテルのカレーは1皿2800円。湯水のように材料費をかけた料理を商店街で出すわけにいかないので、舌の肥えた神田のお客さんに通用する味と値段を実現するために試行錯誤しました」

ーーそれがなぜ最初に居酒屋を出すことに?

石川さん
石川さん
「中途半端なフレンチで独立するくらいなら、いっそ別の業態がいいと思ったんです」
カレーソースの下には、フライパンで焼き色を付けてからオーブンで焼き上げられた骨付き鶏モモ肉が隠れている

ーーこの商店街を選んだ理由は?

石川さん
石川さん
「山手線の駅から徒歩圏の物件を探しましたが、数百軒見て回っても『これだ』という店は見つからない。そうこうしているうちに『神田駅西口商店街の2階のお店が辞めたがっている』と聞いたんです」

ーーそこが今の「味彩」ですか?

石川さん
石川さん
「そうなんです。前の経営者は、店と一緒に馴染みのお客さんも引き継いでほしいという思いがあったので、何度かお店に通って話をして譲ってもらえることになりました」
タマネギ、トマト、ニンニク、ショウガを別々に炒め、20種のスパイス、バターと小麦粉のルウを加え、牛・豚・鶏・野菜から取ったブイヨンで丁寧にのばしていく

ーーそのおよそ20年後に「コージー」を開業するわけですね。

石川さん
石川さん
「2軒目はずっと考えていたんですが、今まで培ったスキルを活かしたいという気持ちがあった。例えば居酒屋で人気のお酒は仕入れれば誰でも売ることができます。でも、フレンチの技を活かした欧風カレーなら誰にもマネできないと思ったわけ」
商店街の表通りにある居酒屋の「味彩」。2階でも入りやすく、昼の定食も人気

ーーこの商店街で商売をして感じたことは?

石川さん
石川さん
年齢層も食べ物に対する考え方も様々だということ。味彩では開業当初にランチを480円で出していましたが、全然お客さんが来ない。商店街の知り合いが『安すぎて怪しまれているんだよ』と言うので、それもそうだなと思って恐る恐る500円に値上げしたんです」

\ビーフもうまいよ/
「ビーフカレー」(1000円、コーヒー付き1200円)

「チキンローストカレー」と同じカレーソースを牛肉のトッピングと合わせたもの

ーー値上げといっても20円ですか。

石川さん
石川さん
「でもその結果、お客さんが増えただけでなく、客層も入れ替わった。さらに思い切って650円にしたらまたお客さんが増えた。そうなると質の高い食材やお酒を仕入れることができ、さらにいいお客さんが増えるといった好循環が生まれ『神田は人の層が厚いな』と驚かされました」
具材の牛肉は煮詰まらないようカレーと別鍋で調理される

ーーところで、どちらのカレーも野菜の優しい甘みとバターのコクが豊かで、ワインにも合いそうです。1000円でここまでおいしいと、ホテル時代の2800円のカレーの味が気になっちゃいます。

石川さん
石川さん
「値段ほどの差はないですよ(笑)。今後は夜のアルコールメニューも増やしたいですね。春には、見たことないような大きなエビを使ったエビフライカレーを出そうと思っているんです」

ーーそれは楽しみです! でもお値段も気になります。

石川さん
石川さん
「そこは神田の商店街の店らしく、庶民的な価格で提供するよう頑張るのでご期待ください(笑)」

間口2間のメキシコ文化圏

2:「エルトロス」(メキシカンバー)

ここだけ見ると神田であることを忘れてしまう

商店街と交差する路地沿いでひときわ目を引くカラフルな「エルトロス」。2019年10月に創業20周年を迎える、本物のテキーラやメキシコ料理を楽しめるメキシカンバーだ。

お店の中はもう完全にメキシコ

ーーメキシコのお酒といえばテキーラですが、どういうお酒なんですか?

「エルトロス」マスター・奥村さん(通称セニョ)
「エルトロス」マスター・奥村さん(通称セニョ)
「簡単に言うと、『竜舌蘭の1種のブルーアガベ“だけ”を使った蒸留酒』のこと。ブルーアガベが原材料の51%以上ならテキーラと名乗れますが、うちでは主に100%の『プレミアムテキーラ』をそろえています」

\教えてセニョール/
「エルトロス」マスター・奥村哲夫さん

語学留学したロサンゼルスでメキシコ文化に魅了されたという奥村さん。常連さんからは「セニョ」と呼ばれている
セニョ
セニョ
シャンパンと同じように原産地呼称が認められ、テキーラ村があるハリスコ州をはじめ、ナヤリ、タマウリパス、グアナファト、ミチョアカンの5つの州で醸造された物だけが『テキーラ』と呼べるわけ。まあ、1杯お出ししましょう」

\駆けつけ1杯はこれ/
「バタロン アネホ」(ワンショット:税別1000円)

ボリビア産のローズソルトとメキシコのレモンを合わせる。「大昔にテキーラ村でバスを降りたら人っ子一人いなくてさ」と、かつてテキーラ醸造所を旅した奥村さんの土産話もオツ

ーーこの塩とライムはどうすればいいですか?

セニョ
セニョ
「塩はボリビアの岩塩で、果実はメキシコのレモン。テキーラにライムを合わせる風習は、アメリカ人が緑色のレモンをライムと勘違いしたせいみたい。このレモンはライムより油分が少ないのが特徴なんです」

\覚えておこう/

テキーラ通を気取るならこのスタイルを覚えるべし
セニョ
セニョ
「親指の付け根をレモンで湿らせてから塩を乗せ、レモンを指先でつまむ。で、テキーラグラスでゆっくり酒を味わいながら、気が向いたらなめればいいんです」

ーーイッキ飲みしなくていいなんて……。

セニョ
セニョ
「そんなもったいない飲み方しているのは日本人くらいだよ。ストレートなので酔うのが早いけど覚めるのも早いんです」

ーー「サボテンステーキ」が気になります。触ってもいいですか?

\テキーラのアミーゴはこれ/

メキシコから空輸される新鮮なサボテンを使用(トゲは抜く)
セニョ
セニョ
「トゲが痛いから気をつけて」

ーー触った感じは普通の葉っぱですね。

セニョ
セニョ
「そりゃそうだよ」

\焼けました/
「サボテンステーキ」(税別800円)

SNS映えっぷりも申し分ない

ーーまるごと出てくるんですね。食べ方は?

セニョ
セニョ
「肉のステーキみたいに普通に切って食べればOK。ちぎったトルティーヤで挟むのがメキシコ流です」
巨大なメカブと言えなくもない

ーーお、これはおいしいですね! オクラのようにクセがなくて、ガーリックがよく合います。

セニョ
セニョ
「びっくりするほど普通のおいしい野菜でしょ?『メカブみたい』と言っていた女性もいたなぁ。メキシコ人にはお馴染みの野菜で、サラダやスープにも使われるので市場では山積みで売っているんです」

\肉系のオツマミはこれ/
「チキンエンチラダス」(税別900円)

煮込んだ鶏のムネ肉をトルティーヤで巻き、ソースをかけて焼いたもの。ほどよい塩気がテキーラやメスカルによく合う

ーー最近よく耳にするメスカルもあるんですね。幻覚剤のメスカリンと関係があるんですか?

セニョ
セニョ
「名前が似ているだけで全くの別物です!」

ーーテキーラとの違いも今ひとつわかりません。

\ちょっとお高いが飲みやすい/
「メキシキャット メスカル エクストラアネホ 3年」(ワンショット:税別3000円)

楢の樽で熟成されたメスカルの逸品。ウイチョル族のビーズアートが施されたボトルが美しい
セニョ
セニョ
「メスカルもテキーラと同じ竜舌蘭で作られるのでほぼ同じ物。こちらは52種類のアガベを使って9つの州で製造が許可されています。アガベの加工法がテキーラと異なるので、土の香りに似た独特のスモーキーさが特徴です」

ーー口に含むとガツッと来ますが、後口が滑らかで気に入りました。

セニョ
セニョ
「高い銘柄を勧めるわけではないけど、熟成が進んだものほど飲みやすいので初心者向けではあるね」
「軒先にハラペーニョの苗を植えたら神田でも実がなったよ。意外と寒さに強いんだね」(奥村さん)

ーー食べ物も飲み物もシンプルなのでじっくり楽しみたいです。

セニョ
セニョ
「店主の愛想が悪いせいか入りにくいらしく『酔った勢いでやっと入店できました』ってベロベロで来る人も。間口2間の小さな店だけど、お一人か気のおけない人と一緒に本当のメキシコ文化を気軽に味わってほしいですね」

タイのポップカルチャーの魅力を発信

3:「あろいなたべた」(タイ料理)

店内のステージではバンドが演奏の準備をしている様子

タイ料理も中華やインドカレーのように、日本でポピュラーなエスニック料理の一つ。そんなタイ料理を630円(税別)均一で味わえる人気のお店が商店街の表通りの2階にある「あろいなたべた」

商店街の通りに面した2階にある「あろいなたべた」は、大きなメニュー看板が目印。ちなみに店名の「あろいな」はタイ語で「おいしいな」という意味だそう

ーー店内が広くて驚きました。奥にはステージもあるんですね。

あろいなたべたオーナー・廣瀬康年さん
あろいなたべたオーナー・廣瀬康年さん
「運がいいねぇ。今日は3か月に一度のタイ人バンドのライブイベントなんです。タイ人は音楽が大好きで、生バンドが入っているレストランが多く、家族そろって出掛けて音楽を聞きながら食事を楽しむ文化があるんです」
1年の半分はタイで暮らすというオーナーの廣瀬康年さん
廣瀬さん
廣瀬さん
「2014年まで有楽町のJRガード下で営業していたんだけど、耐震補強工事で立ち退きになったんです。本場タイの屋台みたいに狭い店で、とんねるずの『みなさんのおかげでした』にも紹介してもらったほど(笑)」

ーーなぜ移転先にこの商店街を選んだんですか?

廣瀬さん
廣瀬さん
「前の店はタイを知るお客さんからも『タイの屋台で食事をしているみたい』と言われるほど雰囲気があったんだけど、以前から店にタイ人バンドを呼んでライブをしたかったので、3倍の広さがあるこの場所を選びました」

\プレートランチもオトク/
「Cセット」(税別630円)

グリーンカレー、空芯菜を炒めたパックプン・ファイディーンと、豚肉をアミの塩辛と炒めたムーパックーイケムなどのワンプレートメニューが630円(税別)で楽しめる

ーー音楽にこだわったんですね。料理は630円均一とかなりオトクです。

廣瀬さん
廣瀬さん
「ちょっと安くしすぎちゃった(笑)。同じ料金で昼はセットメニューを15品、夜は45種のタイ料理を用意しています。値段はお手頃でも、厨房を仕切るのはタイ大使館でも活躍していたベテランのタイ人シェフで、調味料も直輸入の物を多く使っているので味は本場と遜色ありません

\ライブスタート/

キャッチーな曲やスローなバラードなど多彩な楽曲で楽しませてくれる

ーーグリーンカレーが入った「Cセット」は、カレーだけでなくおかずもご飯に合う味付けでおいしい! ですがものすごく辛い!

廣瀬さん
廣瀬さん
「言い忘れちゃったけど、青菜炒めの唐辛子は食べないほうがいいよ。もし辛すぎた時は、冷たい物を飲むと余計に辛く感じるので温かい飲み物にしてね」

\プルプルの豚肉が絶品/
「カオカームー」(税別630円)

日本ではまだ珍しい「カオカームー」はリピーター率ナンバーワンの人気メニュー
廣瀬さん
廣瀬さん
「ぜひ食べてほしいのが『カオカームー』。『カオ』はご飯、『ムー』は豚肉という意味で、スネとモモの部分を6時間以上煮込んだ料理。タイではポピュラーな屋台料理だけど、日本で出している店は珍しいはず」
柔らかくても味はしっかり残るよう絶妙な火加減で煮込まれている

ーー脂が適度に抜けてゼラチン質がぷるんとしておいしい。漬物もあっさりといい具合です。

廣瀬さん
廣瀬さん
「女性のリピーターが特に多いんです。『パッカドーン』という、高菜の一種を使ったタイの漬物は、肉料理の口直しにぴったりで日本人好みの味ですよね」
曲によってはボーカルが増えることも

ーーそれにしてもバンドのレベルがすごく高い気がします。

廣瀬さん
廣瀬さん
「たくさんあるタイのバンドの中から、楽器のパート毎に一番うまいミュージシャンを集めたオールスターバンドなんです」
お客さんが飛び入りでタイの歌を熱唱する一幕も

ーーお客さんが飛び入りで歌っていて楽しそうです!

廣瀬さん
廣瀬さん
「タイのポップスは、日本の歌謡曲のメロディに通じる魅力があります。常連さんにはタイのポップソングを歌える方も多いです」
ステージを終えたボーカルのAliceさん。お疲れ様でした!
廣瀬さん
廣瀬さん
「ライブイベントはまだまだ大赤字なんだけど、音楽と一緒においしい料理を食べるという、タイらしいエスニックな文化を神田駅西口から日本に広めたいですね」

今回訪れた3軒のご主人はみな、自分の愛する国と食文化への熱い思いであふれていた。そんなエスニックの名店に一歩足を踏み入れれば、大飲食街・神田駅西口をより深く楽しむことができるだろう。

コラム:「藤田酒店で和のエスニック“角打ち”再入門」

酒場好きなら素通りできないオーラで満ちている

辞書によると「エスニック」とは、「風俗・習慣などが民族特有であるさま(デジタル大辞泉)」とある。ならば“日本らしさ”もまたエスニックに他ならない。というわけで、世界に誇りたい日本文化の“角打ち(かくうち)”の名店「藤田酒店」で、神田駅西口らしいお酒の楽しみ方を伺うことに。

\教えてくれるのはこの方/
藤田酒店店主・坪田維修(つぼた・まさのぶ)さん

「神田は気品があって誇り高い街ですね」と話す深川生まれのご主人は、石油化学関係の企業に勤めていたという理系な下町っ子

ーー買ったお酒をその場で飲ませる角打ちは、居酒屋の原型だそうですね。

藤田酒店店主・坪田維修さん
藤田酒店店主・坪田維修さん
「神田のこのあたりはかつて『鎌倉河岸(かまくらがし)』と呼ばれ、江戸初期には店先で簡単なつまみで酒を飲む『居酒(いざけ)』ができる酒屋さんが存在していたそうです」

\春らしい華やかさがいいね/
飯沼本家・純米大吟醸
「甲子春酒香んばし」(90ml/500円)

千葉県の酒蔵「飯沼本家」の春の限定酒。季節感のある銘柄が楽しめるのも藤田酒店の魅力

ーーここはいつ頃から角打ちを始めたのでしょうか?

坪田さん
坪田さん
「うちは女房の祖父から3代続く酒屋で、80年ほどの歴史があります。角打ちにしたのは2011年になってからです」

\王道のつまみは缶詰/

サバやイワシや焼き鳥などの定番缶に混じって、つぶ貝など通好みの缶詰もそろう

ーー東日本大震災があった年ですね。

坪田さん
坪田さん
「自分が店に入った1995年ごろはまだ普通の酒屋でした。当時の酒販業界は価格競争が激化する転換期。“次の一手”として角打ちの構想を温めていました。そこに震災が起きて、物不足だった時期に酒屋のルートで仕入れた缶詰を、皆さんが喜んで買ってくれたことがきっかけの一つとなりました」

「鮭の中骨缶詰」(400円)

鮭の中骨だけを使った缶詰は、水菜などの野菜を添えてくれるのがうれしい

ーー自分も震災の時に缶詰の魅力を再発見しました。

坪田さん
坪田さん
「『これは面白いぞ』と思って、とりあえず缶詰をつまみに缶ビールやカップ酒で立呑みができるスペースを、2011年の7月に作ったんです」
酒選びは直感に頼るもよし、店主にオススメを聞くのもよし。日本酒は90ミリリットルから提供している

ーー神田界隈の人々の反応はいかがでした?

坪田さん
坪田さん
「西口商店街が駅へアクセスする表通りだとすると、うちは一本入った裏通り。ですが、神田は酒場好きが多いせいか、『裏通りに角打ちができた』とあっという間に広まっちゃった(笑)」
缶チューハイ(260円〜)や瓶ビールは、冷蔵庫から自分で出してお会計する「キャッシュオン」スタイル。「赤星」こと「サッポロラガービール」(大瓶500円)もあるぞ!
坪田さん
坪田さん
「順調にお客さんが増えたので、2号店でも出すかという話しになった。でも、酒屋のご贔屓さんともお付き合いを続けたかったので、2016年に店の奥の住居スペースも立呑みできるように拡張して現在の形になりました」

\常連さんも太鼓判/
櫻正宗・純米大吟醸
「荒牧屋太左衛門」(90ml/800円)

「本当にいい酒だから飲んでいった方がいいよ!」と常連さんが話すこちらは、櫻正宗の創業時の屋号「荒牧屋」と当主が代々受け継ぐ「太左衛門」の名を冠する純米大吟醸。締まりのあるキリッとした味わい

ーー立呑みはお隣さんとの距離が近いのですぐに仲良しになれます。

坪田さん
坪田さん
「お客さんの力を借りながらなんとかやっています(笑)。お客さんの嗜好もさまざまで、お酒とじっくり向き合う方もいれば、人との一期一会を楽しむ方もいます」

\女性のお一人様も楽しめちゃう/

「初めて来ましたが、ご主人がつかず離れず気配りしてくれるので安心して楽しめます!」と話す女性客も。(異性の一人客にしつこく声を掛けるのはマナー違反なのご注意!)
「ママカリ」(写真左:1枚50円)はさっと炙って出してくれる。「クリームチーズ酒盗のせ」(300円)は日本酒にもビールにもよく合う

ーー角打ちで粋に飲むにはどうすればいいですか?

坪田さん
坪田さん
「ただ楽しめばいいんじゃないかな。他のお客さんに迷惑をかけるのはいただけませんが、角打ちにいる時くらいは、普段抑えている感情を表に出してもいいと思いますよ(笑)」

取材メモ/異国文化をも飲み込んで街のパワーに変えてしまう神田の懐の深さを再認識しました。

構成・取材・文・写真=杉山元洋

次回、3月27日(水)は阿佐ヶ谷北口駅前の「スターロード商店会」を公開予定

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Yahoo!ライフマガジン編集部

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