日本生まれの洋食文化を守り続ける 札幌の老舗洋食屋さん

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旅で行きたい!こだわり料理の店。

2019/03/15

日本生まれの洋食文化を守り続ける 札幌の老舗洋食屋さん

大人も心が躍る洋食メニュー。札幌で35年以上続く「グリルラパン」は、ランチにみそ汁が付いているなどどこか日本風だ。その理由を尋ねた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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洋食のいろはを教えてくれた初代の味を守る若きシェフ

レストランでもなく「洋食屋」という響きにどこか懐かしさを感じる。グリルラパンも「昔ながらの町の洋食屋」とうたっている

ビーフシチュー、オムライス、ハンバーグに代表される洋食を無性に食べたくなるときはないだろうか? しかも、家で作る手料理ではなく、“洋食屋さん”が作る手の込んだもの。1983年創業の「グリルラパン」は、そんな恋しさを埋めてくれる店として親しまれている。

繁華街・すすきのから中島公園を越えてさらに南へ行くと、中心部のにぎやかさとは無縁の静かな住宅街がある。このあたりは山鼻地区と呼ばれ、開拓時代に屯田兵村が置かれた歴史の古い街だ。そこに店はある。

路面電車に乗って行くと繁華街から住宅街へと変わっていく様も見られる。西4丁目停留所から外回りの路面電車に乗り、静修学園前停留所で下車
停留所のすぐそばに札幌静修高校があり、グリルラパンはその向かいにある

調理を担当するのは2代目マスターの廣田幸喜(こうき)さん。初代から店を受け継いだのは2年前だが、料理人としての第一歩は18年前にグリルラパンから始まった

高校卒業と同時に調理師免許を取得した廣田幸喜さん

数年間、初代マスターから洋食の基礎を学んだ後、料理人としての視野を広げるために、居酒屋や弁当屋、オーガニックレストランなどで約10年間経験を積んだ。

店を引き継ぐことになったきっかけは、初代から2代目を探しているという相談を受けたことだった。

マスター 廣田幸喜さん
マスター 廣田幸喜さん
『引き継いでくれる人がいなければ、店を畳もうと思う』と言われた時に、あの味を守りたいと思ったんです。新しい人に一から教えるのは時間がかかることですし、マスターの年齢的にも大変なことだろう。でも、自分なら10年間のブランクはあるけれど、教えてもらった土台があるから受け継ぐことができるのでは、と思ったんです」
「ラパン」はフランス語でウサギのこと。フランスのモンマルトルにあった有名なカフェの店名に「ラパン」が含まれていたことから、大勢の人に愛される店であるようにという願いを込めて初代が名付けた

廣田さんは「自分で良ければ継がせてもらえませんか」と申し出て、2代目として店に戻ってきた。しかし、まったく不安がなかったわけではない。10年間で常連客も変わっていて、そのブランクを埋めることができるだろうか。それが気がかりだった。

その不安を埋めてくれたのが、廣田さんと共に“2代目ママ”を引き継いだ七緒(なお)さん。七緒さんは高校生の頃から、約10年にわたりグリルラパンの主力として働いてきたため、常連客からの信頼も厚く同店には欠かせない存在だ。廣田さんの心の大きな支えにもなったという。

木目調のテーブルや椅子、淡いトーンの壁色など温かみを感じる店内

自慢のデミグラスソースを堪能できるランチメニュー

廣田さんが受け継ぎ、守りたいと思ったグリルラパンの味。そのおいしさの鍵を握るのは、洋食の要といえるデミグラスソースだ。デミグラスソースとビーフシチューができるまでのトータル時間は、12〜13時間にのぼる。

マスター 廣田幸喜さん
マスター 廣田幸喜さん
創業以来、継ぎ足ししながら作っています。当店のデミグラスソースは、野菜の甘み、トマトとワインの酸味、ほろ苦さのバランスを大切にしています」

\うま味を凝縮! クセになる味わい/

ビーフシチュー御膳(1180円) ごはん、みそ汁、ミニサラダ付き
肉は口の中でほぐれていくやわらかさだが、適度に弾力もあり、食べ応えがある

\美しい見た目にうっとり/

オムライス御膳(880円) みそ汁、ミニサラダ付き

ケチャップソースの酸味とデミグラスソースの濃厚な味わいの両方を楽しめるオムライス。幅広い客層から支持されている。

マスター 廣田幸喜さん
マスター 廣田幸喜さん
「中のケチャップライスには、シメジ、タマネギ、ピーマン、合い挽き肉を入れています」
半熟とろとろではなく、きれいに包まれている
そこにデミグラスソースをたっぷりかけていく

\ソースをたっぷり絡めて食べたい!/

ハンバーグ御膳(880円) ごはん、みそ汁、ミニサラダ、小鉢2品付き

まるでハンバーグがデミグラスソースの海に浮かぶ島のように見えるくらい、たっぷりのソースに圧倒される。かむごとに肉の味がじゅわっと口の中に広がり、ごはんが進む。

マスター 廣田幸喜さん
マスター 廣田幸喜さん
「肉をこねすぎると食感がなくなってしまうので、肉の食感を残すように気を配っています
家庭では真似できないビジュアル

ランチメニューの御膳には、みそ汁と茶わんに盛られたごはんが付いている。コンソメスープやコーンスープでもなく、平皿に盛られたライスではない理由を尋ねた。

マスター 廣田幸喜さん
マスター 廣田幸喜さん
「洋食は日本で発展した食文化です。ナポリタンのように日本で生まれた洋食もあるように、イタリアンでもなく、フレンチでもなく“洋食”というジャンルなんです。初代は『ごはんに合う味付け、箸でいただく洋食』と考えていて、このスタイルになりました。『御膳』という名前もそういう理由からです」

ふらっと立ち寄れる街の洋食屋さんでありたい

廣田さんがマスターを務めるようになってから、人気メニューを一度に食べられるセットメニューが登場した

1つはオムライスにビーフシチューをかけた「特別セット」、もう一つは通常サイズよりも量を少なくすることでビーフシチューとハンバーグの両方を味わえる「イチオシセット」だ。

特別セットは札幌最大級の花火大会当日に提供した限定メニュー。「花火大会のときに食べたメニューをもう一度食べたい」というお客さんの声に応えて、レギュラーメニューに仲間入りした
マスター 廣田幸喜さん
マスター 廣田幸喜さん
「初めて来られたお客様に人気メニューを聞かれると、ビーフシチュー、オムライス、ハンバーグと答えていますが、『どれも食べたい』と迷われる方が多いんです。それがきっかけで誕生しました」
オムライスのような明るめの黄色がかわいらしい壁は、廣田さんに代わってから塗り替えた

廣田さんは味だけでなく、初代マスターが築いた“街の洋食屋さん”を守るために、アットホームな雰囲気と接客を心がけているそう。「開店から35年以上経っていますので、今では親子3代でお越しになる方もいます。これからも、帰り道にふらっと立ち寄れる店でありたいですね」

札幌で愛される洋食店で、アットホームな雰囲気に包まれながら、ランチを味わってみてはいかが。

取材メモ:残念ながら、取材当日は2代目ママに会えませんでしたが、長く続いている店にはマスターを支える存在がいるのだと改めて実感しました。初代マスター・ママのように、お客さんから愛される存在であり続けてほしいです。

取材・文=西田晴美(みんなのことば舎)、撮影=山下恭子

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