実は、「無印良品」で最も売れている商品がレトルトカレーってご存じ? 年間1300万食売れるそのヒットメニューを、カレー命のインド人に食してもらったら……予想外の結末になりました。「売れ筋BEST5カレー+α」を試食しながらのトークは、いつしか踊るマハラジャ状態に!
Yahoo!ライフマガジン編集部
「インドの神様に隠れて……」チキンカレーを好む不良インド人が“改心”!?
「もはや、無印良品はカレー屋さんである」
とは筆者が2週間前に思いついた迷言ですが、2000年前後にレトルトカレーの販売をスタートし、2019年現在、31種類ものカレーがズラリと並ぶ同店において、この考え方はあながち大袈裟すぎではないかもしれません。
ではもし、カレーが国民食のインド人に、無印良品で売れまくっているレトルトカレー上位5商品を食べてもらったら……いったいどんな化学反応が起こるでしょう?
さきほどの「迷言」はもしかして「名言」かも?という謎の高揚感も手伝い、そんな企画をうっかり思いついた取材班がコンタクトを取った相手は……!
2年前のカレー座談会の記事が、Yahoo!ライフマガジンでその年もっとも読まれた記事に輝くなど大反響を巻き起こした在日インド人の仲良し3人組です。ナマステ!
【伝説の記事】インド人を「ココイチ」に連れて行ったら、スゴイことになった
インド人にとって仰天の“無印カレー”とは?
――お久しぶりです! 今回は、無印良品の「売れ筋BEST5のレトルトカレー+α」を作って食べてみましょう。皆さん、無印良品のカレーは食べたことありますか?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「初めてです! 無印良品のベッドシーツは愛用してますけど」
- アルさん
- アルさん
- 「私も初。文房具なら持ってますけど」
- アショークさん
- アショークさん
- 「私、カーテンは無印派です。それにしても、無印良品の中でカレーが一番人気というのはびっくりです。驚いたといえば『国産りんごと野菜のカレー』の存在も。インドではりんごをカレーに入れるなんて、絶対に、絶対にありえないですから!」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「ありえない、ホントありえない! 甘いフルーツを入れるなんて、日本ならではのミラクルな発想です!」
- アルさん
- アルさん
- 「うんうん。一部、パイナップルをラッサム(注:辛酸っぱいスープ)に入れることはインドでもありますけどね」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「でもあれは、甘い香りを少し使うだけだしね〜。日本人はもともと甘辛いカレーが好きな傾向があるから、ハチミツを入れたり、わざと甘くするよね」
- アショークさん
- アショークさん
- 「私は怖いものみたさで食べてみたい気はします! 『国産りんごと野菜のカレー』」
――皆さんうなずかれていますね。では、一番食べるのが楽しみなカレーは?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「やっぱり私は、『スパイシーチキン』が一番楽しみ!!」
- アルさん
- アルさん
- 「……」
――理由を聞くのが怖いですが、聞いていいですか?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「なぜなら、私はチキンが一番、お肉の中で大好きだからです!!」
- アルさん
- アルさん
- 「ゴーリーさんは、インドの宗教的な問題で私と同じ生粋のベジタリアンの家系のはずなんですけど……。以前の座談会では『せっかく日本に住んでるんですから、一歩家を出ればベジタリアン料理には目もくれず、肉しか食べていません』などと悪びれもせず告白していました」
――「インドの神様は日本までは見えていない」という、Yahoo!ライフマガジン史上に残る迷言も飛び出しアルさんを硬直させるばかりか、多くの読者をザワつかせました……。
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「今でも見えてないと思ってます。全然見えてない」
- アルさん
- アルさん
- 「……!」
「第1回ナン作り選手権」勃発!
相変わらず素直すぎるゴーリーさんですが、気を取り直して……、クッキングタイムに突入です。無印良品にはルー以外にも、レトルトのナンやジャスミンライスもあって、家のキッチンで簡単に作ることができます。
――皆さんは、インドや日本の自宅でナンを作ることはありますか?
- アショークさん
- アショークさん
- 「私は週に1回は料理してますけど、作るのはナンじゃなくて、チャパティです。北インドでも、私たちが生まれた南インドでも、そもそもナンを作らない家庭が多い気がします」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「北インドの人はカレー&チャパティ、南インドの人はカレー&ご飯が主流っていう印象がありますね」
――へぇ、意外! ナンはインドの日常食というイメージを勝手に持っていました。皆さんは、子供の頃からチャパティを作ってきたのですか?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「そうそう、お母さんが作ってる隣で、見よう見まねで覚えて。大人になってからも趣味程度に作ることはありますが、私が実際に作れるかと言うと、作れないです」
――作れんのかい。
まずは、料理上手なアショークさんからナン作りにトライ! みるみる、見覚えのあるナンの形に仕上がっていきます。
- アルさん
- アルさん
- 「知ってる? チャパティは焼く前のタネもおいしいの。もっぱら私は、お母さんが作っているタネを横からつまみ食いする担当でした。でも、今回のナンはナンとかするよ〜!」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「よっ! アルさん、絶好調!」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「今ね、ちょっと緊張してるの。アショークさんがいいのを作ったから、私も同じカタチのものを作らなきゃ……。負けられません!」
ゴーリーさんがライバル心をあらわにしたことにより、唐突に勃発した「第1回ナン作り選手権」。果たして勝利は誰の手に?
- アルさん
- アルさん
- 「ナンとかできました!」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「ナンとかできたじゃない!」
- アルさん
- アルさん
- 「ナンとかナンでーーす!」
- アショークさん
- アショークさん
- 「ねぇねぇ、誰が一番上手にナンのタネを作れたか、取材班の皆さんに決めてもらいましょう!」
- アショークさん
- アショークさん
- 「ゴーリーさんのナンはインド大陸というより、アフリカ大陸ですね。おしい!」
インドの神様にお祈りをして、ナンを焼こう!
ーー次はフライパンでナンを焼いていきましょう! パッケージのレシピを読みますと……「一度フライパンを中火で熱し……」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「ストップ、ストップ。われわれにとってチャパティやナンを焼く作業は朝メシ前なので説明不要! お任せあれ。は〜い、じゃあ、みんな、インドの神様にお祈りしてくださ〜い」
ーーいつも、カレーを作る時はインドの神様にお祈りしてるんですか?
- アルさん
- アルさん
- 「はい、家では毎朝キッチンで料理を作り始める前に神様にお祈りします」
- アショークさん
- アショークさん
- 「たまに、やらない時もありますけどね」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「まあ、今は写真を撮られているからね(お祈りするよね)」
ーーゴーリーさん……。
- アルさん
- アルさん
- 「ゴーリーさんとは10年来の友達ですが、いつもこんな調子なんです。いい加減、私も慣れなくては……」
ーーゴーリーさんが、不良になってしまったのは、日本に来てからでしょうか?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「いえ、インドにいた時からそんなもんでしたよ。でも日本に来てからさらにフリーダムにお肉もお酒も楽しむようになりました」
- アショークさん
- アショークさん
- 「ちょいワルから、本当のワルになったということでしょう」
前置きが長くなりましたが、いよいよ無印良品のカレー売れ筋BEST5の発表&試食とまいりましょう! 第5位はこちら。
【売れ筋5位】ガラムマサラが効いた「素材を生かしたカレー スパイシーチキン」
実は無印良品のカレー開発担当チームは定期的にインドへと赴き、1日7カレーほど食しては北から南から本場の味を研究しています。本気で試行錯誤したカレーの味、インド人の皆さんがどんな感想を持つのか気になるところ。
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「5位は私が一番楽しみにしていた『スパイシーチキン』ですね」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「(もぐもぐ)……全然いいじゃん! インド人的にはもう少し辛くてもいいけど、おいしいよ!」
- アショークさん
- アショークさん
- 「100%とは言えないけどインドで食べる味にとてもよく似ています。カレーの味を左右するガラムマサラもしっかり入っていて、スパイスのバランスがナイスです」
――ゴーリーさんが不良なのはよく分かっているのですが、アショークさんは、宗教的にチキンは食べていいんでしたっけ?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「この3人の中でチキンを食べて問題ないのはアショークさんだけです。同じ宗教なんだけど、インドのカーストなどによってチキンを食べていい人と悪い人がいるんです」
- アルさん
- アルさん
- 「私とゴーリーさんは、先祖の代から基本的に肉を食べちゃいけないベジタリアンの家系です」
- アショークさん
- アショークさん
- 「一方、うちはおばあちゃんもチキンを子供の頃から食べていました。厳密に言うと、私はチキンは食べてもいいけど、豚肉とか牛肉は食べちゃダメなんですよ……まあ、食べてますけどね、せっかく日本にいるんだし。それだけに、アルさんは本当に真面目で尊い存在です」
- アルさん
- アルさん
- 「ここでインドのお父さんと呼ばれているマハトマ・ガンディーさんのエピソードを紹介させてください。彼は弁護士になるためにイギリスへ行った時、『イギリスに来たならお肉も食べてよ』と誘われたんですが、一切肉は食べないって断ったらしいんですよね。私も彼のように、どんな状況にあっても菜食主義を守りたいのです」
――なんだか感動しました。ゴーリーさんは、そんなアルさんの話を聞いてどうですか?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「お肉、おいしいのになぁ〜って」
- アルさん
- アルさん
- 「……!」
ーー次のカレーにいきましょうか……。
【売れ筋4位】女性受け抜群!「素材を生かしたカレー プラウンマサラ(海老のクリーミーカレー)」
第4位は、南インドのシーフードカレーを参考に開発されたこちら!
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「これは、一見、ポテトカレーのようで、ベジタリアン的にNGな海老が入っているかどうか見た目には分かりづらいから、私にとってはラッキーですね! 早速いただきましょう!」
- アショークさん
- アショークさん
- 「ココナッツが入っていてマイルドなので、辛いのが苦手な日本人の方は安心して食べれそうです」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「海老の旨味が染みていますね〜。肉もいいけど、海老もいい!」
【売れ筋3位】素材の味を堪能できる「素材を生かしたカレー キーマ」
そしてBEST3に食い込んだのが、定番のこちら!
- アショークさん
- アショークさん
- 「インドでもガラムマサラが苦手なお年寄りもたまにいるので家庭によって入れる量が異なるんですが、これは強めのバランスがおいしい。今のところMY BESTです」
――ところで、インドにもレトルトカレーはあるんですか? インドではカレーは毎日のように作るでしょうから、レトルトがあると便利そうですが。
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「それこそ日本のカップラーメンならたくさんあるけど、カレーはないんじゃないの? 少なくとも私は見たことないなぁ。奥さんがレトルトカレーを出してくれたら、『何か怒らせてしまったのかも…』とドキドキします」
- アショークさん
- アショークさん
- 「カレーだけは、その日自分で作った新鮮なものを食べたいと思うインド人が多いのかも」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「しかしアルさんは一口も食べられなくて、かわいそうだねぇ。お昼寝したくなっちゃうよね? 編集部さん、アルさんが食べられるものはないの?」
――アルさん、長らくお待たせしてすみません。菜食主義の方でも食べられそうなカレーを、番外編として用意したのでご賞味ください。
【番外編】アルさんも食べられる「素材を生かした 国産りんごと野菜のカレー」
そうです、記事冒頭で「まさか、りんごを!?」と面々から驚きの声が上がった「国産りんごと野菜のカレー」です。本当にお口に合うか心配しつつ、取材班はそっとアルさんの前にお皿を差し出しました。
ーーパッケージ裏の材料一覧を見ると、お肉など動物性の食材が入っていないので、おそらくアルさんでも大丈夫かと思うんです。
- アルさん
- アルさん
- 「おいしいです! りんごを混ぜたカレーを食べるのは生まれて初めてですが、すご〜くおなかにやさしい。りんごの甘味とスパイスのバランスがよくて辛くないから1歳の子供にも安心して食べさせられます。ああ、本当によいカレー! 目からウロコが落ちました!」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「私も、これは全然好き! おいしいね!」
- アショークさん
- アショークさん
- 「りんごってパッケージに書いてあったから先入観から身構えちゃったけど、実際に食べると、想像以上にいけます!」
【売れ筋2位】“無印カレー”人気の火付け役「素材を生かしたカレー グリーン」
いまの無印良品のレトルトカレー人気の礎(いしずえ)を築いたといっても過言ではないのが売れ筋2位の「素材を生かしたカレー グリーン」。発売された2000年頃は、日本にグリーンカレーがそこまで普及しておらず、「こんなカレーって、アリなんだ!」という衝撃をもって世に迎えられました。
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「グリーンカレーは、タイのカレーだよね。パッケージの辛さ表示はMAXだけど、私にとってはちょうどいい辛さ。口に合うインド人も多いんじゃないでしょうか」
【堂々の1位!】4度目のリニューアル!「素材を生かしたカレー バターチキン」
栄えある1位は、2019年2月に、なんと4度目のリニューアルをしたばかりのこちら。
これまでリニューアルごとに、必ず無印良品のカレー開発担当者がインドにリサーチに行き、本場のおいしさを分析。バターチキンカレーに欠かせないスパイスや、高価ゆえレトルトでは使ったことのなかったギーを加えるなど、改良を重ねてきた歴史があります。
――1位を食べた感想は!?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「インドの味とは少し違うけど、日本人の舌に合わせたオリジナルのバターチキンですね。うん、なかなか!」
- アショークさん
- アショークさん
- 「トマトの味が濃厚で、酸味と旨味のバランスがいい感じですね。日本で一番人気があるのも分かる気がします」
ゴーリーさん、ベジタリアンに戻ることを決意!?
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「ところで、さっき食べた『素材を生かした 国産りんごと野菜のカレー』は売れ筋ランキング1位じゃないんですか!? 私、あれに一番感動したんですけど!」
- アルさん
- アルさん
- 「うん、あれは本当においしかった!(あれしか食べてないけど)」
――こちらのカレーは番外編でして、実際は全31種類中、9位の売れ行きだそうです!
- アショークさん
- アショークさん
- 「え、そうなの!? これ個人的な意見だけど『ヘルシーな野菜カレー』に改名したら間違いなく在日インド人パワーで1位になると思いますよ。りんごとパッケージに書いてると、どうしても甘いんじゃないかという先入観が邪魔をして手に取らないインド人が多そうで、もったいない」
- アルさん
- アルさん
- 「うん、うん。オリンピックも近いですし、ベジタリアンでも食べられるカレーを探している観光客も、間違いなく手に取ると思います」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「無印良品のマーケティング担当さんにわれわれは強く改名を訴えたいですね! 私なんて、『国産りんごと野菜のカレー』にあまりに感動しすぎて、『よし、改心してベジタリアンに戻ろうか!』 という気持ちになりましたよ」
- アルさん
- アルさん
- 「まさか!? ゴーリーさんが⁉」
- ゴーリーさん
- ゴーリーさん
- 「まあ、一瞬だけど」
- アルさん
- アルさん
- 「…………!」
取材メモ/インドの神様、今回もごめんなさい……。
取材・文=城リユア(mogShore)/撮影=岡本卓大
\本場外国人に聞いてみたシリーズ/