こだわりの本棚で魅せ収納!ライダーが集うオートバイ専門書店

2019/03/23

こだわりの本棚で魅せ収納!ライダーが集うオートバイ専門書店

収納のしかたは十人十色。おうちの収納やお気に入りのものから見えてきた、「収納と暮らし」をめぐる短い物語をお届けします。

HOUSTO おウチの収納.com

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白井 祐樹さん

白井 祐樹さん

「Cool Beans! Classic Books」店主

ありえないほどの贅沢空間でヴィンテージバイク本を手にする喜び

東京都大田区の中原街道沿いにその店はある。扉を開けると目に入るのは、壁一面の本棚と、店の中央に鎮座する美しいオートバイ。「Cool Beans! Classic Books」は、ヴィンテージのオートバイに関する希少本を揃える専門書店。2013年の秋に開業し、今年で6年目を迎える。

カフェカウンターには、オートバイ専門書店ならではのディスプレイが

カフェも併設した“1ドリンク制”の本屋で、ソファに身を沈めてコーヒーを愉しみながら、本を吟味することができる。座席は数えるほどしかない贅沢な空間作りは、飲食店の友人からは「ありえない」と言われるほどだとか。

しかし「ゆっくり映像を観たり、コーヒー飲んでしゃべったり、この空間で楽しんでほしいんですよ」と、スタイルを変える予定はない。

訪れる客のほとんどはオートバイ愛好家。さまざまな愛車で乗り付け、客同士で話に花を咲かせる

店主の白井さん自身も穏やかな雰囲気ながら、実はレースにも参戦するほどの筋金入りのライダーだ。店の中央でつやつやと黒光りするオートバイは、今の愛車であるイタリアの名車ドゥカティ。これまでもヴィンテージを中心に小型スクーターから大排気量車まで、さまざまな車両を乗り継いできた。

天井近くまでディスプレイされている

「たくさん乗ったほうがお客さんと話もできるっていうのもあるけど、知れば知るほど実際に乗ってみたくなっちゃうんですよね。やっぱり好きだし、この店を深夜までやっているのも、走る理由のひとつにしてほしいから。ツーリングの帰りにでも寄ってもらえたら」

本屋ならではの見せる収納術

理想のカタチが実現できるのは、特注ならでは

店の壁一面にどっしりと構える書棚は、旧知の友人のつてで知り合った長野の家具職人の手によるもの。制作の前に、実際に店までサイズを測りに来てくれたそうで、まさにこの店のために作られた書棚だ。

本を平置きにもでき、最大サイズの本も立てられるよう、棚板の高さ、奥行きともにサイズは考え抜かれている

頑強なホワイトアッシュ材の棚板は1枚でもかなりの重さで、そのぶん大量の本を乗せても少しのたわみもない。店とともに月日を重ねるうち、最初は明るかった無垢材の色味は少しずつ深みを増してきて、その風合いも気に入っている。収納家具にも、育てる楽しみはあるのだ。

国産車の関連書籍コーナーも

世界中から取り寄せる整備書や写真集、DVDの中でも、特に70年代以前のヴィンテージオートバイ関連書には力を入れており、中には貴重な絶版書も多い。湿気から本を守るため、壁には湿度調整ができる漆喰を塗った。

サイズがまちまちな本をスッキリと見せるのは、さすがの本屋収納術。高さと色を揃えるのがコツだそうで、ただ並べるだけではなくところどころ表紙を見せることで、収納としても変化をつけている。メーカーやカテゴリー別に並べられた輸入書のたたずまいは、インテリアとしても秀逸だ。

写真や文章だけでなく、装丁や紙質も愛せる書籍

希少なコレクションが並ぶ

断舎離しても本だけは手放せない人も少なくないが、この店の本を「売れるまでは全部、俺のものですから」と冗談めかして言う白井さんも、当然ながらブックマニア。野暮かとは思いつつ、白井さんを虜にする本というものの魅力を尋ねると、しばし考え、答えてくれた。

「すべてのページを熟読しなくても、たった1ページの写真に心を奪われたら、その本は十分、手元に置く意味があるんです」

これまで趣味で買い集めた蔵書は数えきれないほど

一般書店では対応できない難解な注文もこなせるのが強み。「1924年製の○○の整備書が欲しい」と言われても、存在すらしないこともあるが、本屋歴13年で英語も堪能な白井さんは、世界中にネットワークを持つ専門家だ。

「古いオートバイには必ずと言っていいほどオーナーズクラブがあるんですよ」と、そういった文化の継承者をさながら探偵のごとく探し出し、お客さんに連絡先を教えることもあるそう。手間はかかるが「それで喜んでもらえるなら、いいかな」とおおらかだ。

目下の悩みは安価な本が流通するECサイトだが、実際に手に取れるという本屋の良さはかけがえのないものだとの自負もあるそう

「本の価値は情報だけじゃなくて、紙の質感や重みといった手ざわりも大事な要素。洋服と一緒で、一度ふれてみないと自分に合うものって分からないと思うんです。とくにこういった専門書やヴィンテージ書籍ならなおさら。

外国の本は装丁もきれいで物としての価値も高く、暮らしの中で飾る喜びもあります。お店に来て、自分の手と目で確認しながら、いい本と出会ってほしいですね」

シンプルに暮らすというこだわり

店主のこだわりがディスプレイにもあらわれている

さて、店が終わるとここは白井さんのリビングになる。ソファに腰を下ろし、好きな映画をいい音で楽しむ至福のひとときだ。築65年の一軒家、さすがに隙間風も入るはずだが、不思議と温かい。聞けば、風の通り道は粘土で丁寧に埋め、ガラスには断熱フィルムを貼ってあるそう。

驚くほどシンプルなベッドルーム

2Fの寝室はシンプルそのもので、見えるのはほぼベッドのみ。オーディオやテレビもあるが、配線が気にならないのは、壁と同じ白いコードをなるべく選んでいるから。さらに、配線カバーを設置してとことん隠してある。

この部屋のコンセプトは「いかに快眠するか」だけ。好きな本に囲まれ、いい音で音楽が聴ければ、それで十分だそう

もともと散らかっているのが嫌いな白井さんは、本当に好きなものしか持たない主義。もちろん洋服も厳選したものだけで、クローゼットを見せてもらうと、ハンガーにかけられた服が整然と並んでいた。
クローゼットの中には衣装ケースをいくつか置き、見えないところまで整頓してある。隠れたところも雑然とさせない整理整頓術は、“好きなものだけ”を貫いているから実現できるのかもしれない。

すべてが詰まった書棚とともに、きっとこれからも変わらない本屋

ひとしきり話を伺った後、ヴィンテージのガラスマグカップでコーヒーをいただく。コーヒー好きが淹れる味とでも言うのだろうか。ゆったりと香り立つ穏やかな味。この店の雰囲気そのものだ

「“仕事”としてだけやっていたら、何も面白くない。コーヒーが好きだからおいしく淹れたいと思うし、好きだから本も探したくなる。好きなことだから、ずっと続けていられるんです」

白井さんの話は引き込まれるものばかりで、あっという間に時間がたっていく。勤めていた映像制作会社を辞めた時の、オートバイ三昧の日々。思い立ってNYで1年暮らしたこと。ハーレーでアメリカを横断したこと。

今後の店の展望を伺うと「見て楽しいお店」とだけ。つまり、これまでと同じことを、これからも続けていくということだ。ブレない人のブレない本屋は、これからも変わらない

聞いていると、“好きなことだけやる人”であると同時に、“計画と実行の人”だと分かる。穏やかな語り口の中に、夢の実現には努力を惜しまない信念が垣間見える。

好きなものだけに囲まれ、書棚を中心にすっきりとまとまった店と、シンプルな暮らしを実現したのは、その信念と実行力があるから。神は細部に宿ると言うが、棚のあらゆるディテールに白井さんの美学が息づいているような、まさに魅せる収納を体現した書棚が印象的だった。

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