群馬・太田市 太田市の子どもたちへ地元産のおいしい牛乳を

2019/03/18

群馬・太田市 太田市の子どもたちへ地元産のおいしい牛乳を

太田市の給食牛乳は、特有の臭みがなく、しぼりたての生乳のような甘さが魅力。風味や栄養素が損なわれない製法を実現するために、牛の飼育から衛生管理まで徹底してこだわる、東毛酪農業協同組合の思いを聞いた。

中広

中広

群馬・太田市 太田市の子どもたちへ地元産のおいしい牛乳を

子どもたちが楽しみにしている給食の時間。太田市の学校給食では、全国でも珍しい低温殺菌牛乳が提供されているのをご存知だろうか。

一般的な低温殺菌牛乳とは、生乳を63度から65度で30分間殺菌したもの。有害な病原菌だけを死滅させ、しぼりたて牛乳の栄養と風味を残すのが、大きな特徴だ。この製法は、加熱殺菌法を発見した19世紀の細菌学者ルイ・パスツールの名をとって、パスチャライズド処理と呼ばれている。

しかし、日本の市場に出回っている牛乳の90パーセント以上は、超高温瞬間殺菌牛乳である。130度以上の熱を約2秒加えると滅菌できるため、殺菌時間も短く、大量生産に向いているからだ。

太田市新田市野井町に牛乳製造工場を持つ東毛酪農業協同組合は、1952年、地域の酪農家30人で設立。低温殺菌牛乳の製造へ、国内でもいち早く取り組んできた。

衛生管理が徹底された、東毛酪農業協同組合の牛乳工場。長年、子どもたちの工場見学を受け入れている

同組合が低温殺菌牛乳の製造を始めたのは37年前の1982年。食の安全について勉強会を開いていた東京の消費者グループから、製造について相談されたのがきっかけだ。低温殺菌牛乳は殺菌温度が低いため、細菌数の少ない生乳でなければ作れない。協力してくれる牛乳製造工場を探していた同グループの人々は偶然、旅行中にバスで通った高速道路から、組合の看板へ目を留め、調べてみたという。

すると、同組合が低農薬で育てた自家栽培の草を牛の餌に使い、安全な牛乳製造へこだわっていると知り、訪ねてきたのだ。

大久保克美さん

大久保克美さん

東毛酪農業協同組合 代表理事組合長

同年の夏、同組合は低温殺菌牛乳の実現を目指し、消費者、酪農家、製造工場が連携した、勉強会開催へと動き出す。製法を確立するには、乳牛の衛生管理や生乳の鮮度、集乳から発送までの細菌数チェックなど、乗り越えなければならないハードルがいくつもある。割高なコストや、消費期限の短さも懸念されたが、組合員たちは安全でおいしい牛乳を作りたいとの目標に向け、突き進んだ。

多くの人々が一体となり、翌年1月、念願の低温殺菌牛乳は誕生。製造に関わったすべての人の思いを込め、みんなの牛乳と名付けた。

豊富な種類がそろう、東毛酪農業協同組合の低温殺菌牛乳。みんなの給食牛乳は、工場と同じ敷地内のミルクランド東毛でも販売している

地元の子どもたちへ贈る みんなの給食牛乳

同組合が太田市内の学校給食に牛乳を提供し始めたのは、1975年。太田市農協の牛乳工場閉鎖を機に、引き継ぐ形で現在の場所へ工場を建設した。

当初から製造していた超高温瞬間殺菌牛乳は、衛生面で優れている一方、高熱処理の際、タンパク質のこげた臭いが残るデメリットもある。独特の臭いや後味を嫌がる子どもが多いのも、生産者にとっては厳しい現実だ。

みんなの牛乳を製造した組合員は、「太田市の給食でも、低温殺菌牛乳を提供できないだろうか」と模索。しかし、いきなり63度の低温殺菌牛乳を提供しては、味の違いにとまどう子どもや、殺菌が不十分ではないかと懸念する保護者もいると予想された。

そこで同組合は、通常の低温殺菌牛乳よりも殺菌効果が高く、生乳の風味を損ないづらい85度に設定した、給食用の牛乳開発へ乗り出す。地元の太田市では、同組合が開発した低温殺菌牛乳への信用も厚い。子どもたちのためならばと、この提案を保護者たちも快く受け入れた。

酪農家と工場が総力を挙げて完成したみんなの給食牛乳は、1992年から学校給食へ提供開始。味や臭いに敏感な子どもたちから、「家で飲む牛乳よりおいしい」という声が、たくさん届いたという。

みんなの給食牛乳は、他の牛乳よりもおいしいと話してくれた綿打小学校の子どもたち。給食の時間はいつも、笑顔でいっぱいだ

酪農家の遠坂(えんざか)和仁さんは、「地元の子どもたちへおいしい牛乳を届けたいという思いから、生産者の結束が高まりました」と話す。生き物が相手だから、365日休みはない。それでも信用には変えられないとほほ笑む。

広々した牛舎で、健康管理に気遣いながら牛の世話に励む、遠坂牧場代表の遠坂和仁さん

太田市の学校給食用牛乳は評判が高まり、市内の保育所や幼稚園、県内外の小中学校から提供依頼も相次いだ。その後、殺菌器が入れ替えられ、2009年10月から75度15秒の低温殺菌牛乳を提供。さらに、しぼりたての生乳に近い味の牛乳を提供している。

これらの功績が評価され、平成29年度の食品産業優良企業等表彰で同組合は、農林水産省食料産業局長賞を受賞した。

「牛乳には、豊富な栄養がたっぷり詰まっています。子どもたちのために、これからもおいしい牛乳を作り続けていきたいですね」と、大久保組合長は力強く話す。

おいしくて安全な太田市自慢の給食牛乳。子どもたちの健康を願った東毛酪農業協同組合の牛乳は、生産者の思いと共に未来へ受け継がれていく。

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