40年間愛される隠れ家的喫茶「ジャズ喫茶おくら」/熊本県

2019/03/26

40年間愛される隠れ家的喫茶「ジャズ喫茶おくら」/熊本県

1960年代に流行した、音楽を嗜むジャズ喫茶。音楽を愛する幅広い層の人々から愛されながら、年々その数は減っていき、近年では貴重な存在となっている。今回、熊本で隆盛期からずっと続いている、心地いいジャズの旋律が流れる、老舗「ジャズ喫茶おくら」の話をお届けします。

シティ情報くまもと

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40年間愛される、隠れ家的ジャズ喫茶「ジャズ喫茶おくら」。

木の扉を開けると聴こえてくる、旋律が美しく優しいジャズの音色。落ち着いた照明のおかげで、昼間でも街なかの喧騒から離れてジャズの余韻に浸ることのできる「ジャズ喫茶おくら」。
まるで海外の片田舎にあるバーを彷彿とさせる内装は、開店から40年間ほぼ変わっていないという。客層は学生からジャズファンの年配の方まで、県内外問わずさまざまな人が集まる。

並木坂のメインストリートから一本入った、南坪井の通りに佇む。異国情緒を感じるレンガ調の建物の中は、まるで映画の舞台のよう。ジャズライブの開催時は、奥のスペースが特設ステージへと様変わりする

また、ジャズファンに留まらず多くのミュージシャンに愛され、ほぼ毎週店内でライブが開催されている。大学生時代にジャズに魅了され、卒業と同時にお店をオープンさせた、マスターの小倉達弘さん。お名前は店名にもなっている"おくら"さんかと思いきや、"こくら"さんと読むのだそう。
「40年前はジャズ喫茶をはじめ、周りは横文字の店名が多かったので、日本語表記にしたかったんです。自分の名前の"こくら"に、レコードの表現にもある"お蔵入り"をかけて『おくら』にしました。"大きい蔵"の意味合いも兼ねています(笑)」と、ユニークなネーミングの秘密を教えてくれた。

熊本が誇るコーヒー豆の販売店『まる味屋珈琲店』の豆を使用した"おくらブレンド"(500円)。食後の一杯に◎

小倉さんとジャズの出会いは、今から40年以上前のこと。
中学生時代はビートルズの影響でロックやフォークギターを嗜み、音楽漬けの日々を送る中でオーディオにも興味を持つように。当時、オーディオを気軽に楽しめる身近な場所がジャズ喫茶だったことから、次第にジャズに傾倒していった。
そんな小倉さんにとって転機となったのは、大学に通っていた19歳の頃。アメリカのラテンロックバンド・Santana(サンタナ)と、ジャズトランペット奏者のマイルス・デイヴィスが、福岡でそれぞれライブを開催した際、熱いロック魂も抱いていた小倉さんは、どちらのライブに足を運ぶか真剣に悩んだという。
結果、マイルス・デイヴィスのライブを選び、インドやアフリカ、さらにはロックなど、エレクトリックな要素もジャズの中に盛り込むマイルスの妙技に、すっかり魅了されたのだそう。そこからジャズの世界にさらにハマり、ジャズ喫茶のマスターとしての道へ進むキッカケとなった。

カウンター裏には、小倉さんのレコードコレクションがズラリと並ぶ。店内に設置されたオーディオで、CDやレコードを楽しめる

「もしもその時、サンタナのライブに行っていたら、今頃はロック喫茶になっていたかも(笑)」と小倉さん。
ジャズについて語る際の朗らかな笑顔と、丁寧に解説してくれる親切な人柄から、たとえロック喫茶のマスターだったとしても、多くのお客さんやミュージシャンから愛されて、40年以上続くお店になっていただろうと、容易に想像ができる。
「ジャズ喫茶おくら」には、優しいジャズの音色だけでなく、朗らかなマスターが漂わせる心地いい安らぎの時間が流れている。

週末は深夜2時まで営業しており、バーとしての利用も可能。お酒のおつまみに、絶品ピザやカレーを注文する人も多いという

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