群馬・太田市 クラフトビールに込める情熱

2019/03/24

群馬・太田市 クラフトビールに込める情熱

上質な空間で地ビールを提供し、地域活性化へ貢献しようと、1996年に誕生した株式会社夢麦酒(ゆめビール)太田。麦芽100パーセントとこだわりの醸造法で造る、クラフトビールへの思いをスタッフに聞いた。

中広

中広

地域活性化を目指す 太田市の地ビール

1994年4月、酒税法の改正を受け、ビールの製造免許取得に必要な最低製造数が、2000キロリットルから60キロリットルへ引き下げられた。これを機に、全国各地で小規模の醸造所が次々と誕生。日本中で地ビールブームが巻き起こる。

しかし当時は、お土産感覚で購入する消費者が多く、次第にブームも下火となる。販売量の低下に悩み、廃業するメーカーも少なくなかった。

こうした背景のなか、太田市で地ビールメーカーが誕生したのは、1996年。観光客相手の土産ではなく、地元の人々がおいしい地ビールを楽しみながら交流できる場にしたい。地域貢献への思いを掲げ、太田市と地元団体企業の協力で誕生したのが、第三セクター法人、株式会社夢麦酒太田だ。商品開発と同時に、店内の醸造所で造られた出来たてのビールを楽しめるレストラン、ブロイハウス・ヨラッセがオープンした。

創業当初、店で振る舞われたのは、ビールの本場、ドイツスタイルを基調にした4種類。バイエルン地方で発展した小麦を原料とするヴァイツェンや、デュッセルドルフ発祥の伝統的なアルトに加え、季節限定のビール2種類が提供された。当時のラベル名は市内の有名な寺院、大光院の名僧・呑龍(どんりゅう)上人にあやかった、呑龍夢麦酒(ドンリュウドリーム)。地域活性化の大きな柱にしたいと思いを込めた。

当時の醸造スタッフは地元産大麦や、湧水を使用するなど、思いつく限り試みる。結局、大量仕入れが叶わず地元産の原材料は使えなかったものの、何度も麦芽の銘柄や製造法を見直し、味の向上へ励んだ。やがて、職人の思いが込められたビールは評判となり、地元での知名度も高まった。

玉置大輔さん

玉置大輔さん

ダニエルハウス店長

その後、経営が軌道に乗った同社。第三セクターの目的を果たしたと行政が判断し、設立14年目の2010年5月、運営を民間企業の株式会社ソニアプランへ委託。名称をダニエルハウスと変更してリニューアルオープンし、新たなステージに踏み出した。

ダニエルハウスの外観
開放感いっぱいのメーンホール。部屋の一角には仕込み用の釜が置かれている

味の違いを楽しめる 新ブランドを発表

かつて流行した地ビールという呼び名に代わり、現在、国内で広まっているのは、手作りを意味するクラフトビールだ。各地では、個性豊かなビールが多く登場し、愛好家も増えている。

同社のビールに大きな転機が訪れたのは、2015年。日本酒、ビール、ワイン、焼酎など、さまざまな酒造りに携わってきた醸造家、森田智之さんが醸造責任者へ就任したのだ。森田さんはこれまでの醸造法を継承しつつ、新作ビールの開発へまい進。同時に同社は、商品力底上げのために、太田市出身の世界的なファッションホイールデザイナー、片岡達也さんへ商品プロデュースを依頼。新ブランド・クロアを発表した。

森田智之さん

森田智之さん

醸造責任者

ビールの原材料に使用する麦芽。甘いカラメル麦芽やほろ苦いチョコレート麦芽など、焙煎方法によって味や風味が異なる

麦芽の仕込みは、一定の温度で糖化させるインフュージョン法を採用。すっきりした飲み心地の良さは、この工程にかかっている。ホップを加え、苦味のついた麦汁へ酵母を入れる際に用いているのは、エールビールの発酵方法である上面発酵だ。比較的高い温度で酵母を発酵させ、酵母が麦汁の表面に浮き上がる。甘い香りと豊かなコクを引き出すには、この製法が効果的だ。

麦芽の糖化具合を確認する醸造責任者の森田智之さん。発酵状態を確認しながら行う繊細な温度管理が、おいしいビール造りの決め手となる

さらに、「同じビールでも、樽詰め後の日数によって味が変わるのをご存知ですか」と、森田さんは続ける。一般的なビールは熟成が終わった後、ろ過や加熱処理で酵母の動きを止める。しかし、無ろ過製法で保存すると貯蔵タンクの中で発酵が進み、同じ種類のビールでも日によって、味の違いを楽しめるのだという。

店のバックヤードにある発酵タンク。冷却した麦汁に酵母を加え、1週間熟成させる

「ダニエルハウスでは、1杯200ミリリットルのビールが5種類味わえる、飲み比べセットを用意しております。今までにないクラフトビールをご堪能ください」と、教えてくれた玉置店長。メニューや気分に合わせてビールを選ぶ楽しみが、多くの人々へ広まってほしいとほほ笑む。

店内で味わえる出来たての手作りビール。3種1,000円と5種1,500円の飲み比べセットも楽しめる

2018年5月に発売した新作、ダズを加え、現在のクロアシリーズは5種類。これからも、新しいオリジナルビールを造りたいと、森田さんは意気込んだ。

現在、5種類発売しているクロアシリーズ。左からタブー レッド、タブー ギルティ・ホワイト、タブー ダウト・グリーン、クロア ダズ、クロア IPA

太田市から、味だけでなくデザインまでこだわった、新しいクラフトビールを発信したい。人々の情熱が込められたビールは、まだまだ進化するに違いない。

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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