名物はキムチサンド。ドン底を味わったママの人情しみる老舗喫茶

特集

話のタネになりそうな ご当地の出張ゴハン!

2019/03/22

名物はキムチサンド。ドン底を味わったママの人情しみる老舗喫茶

コリアンタウンを擁し、焼肉店やキムチ店がひしめき合う鶴橋は、大阪でも1、2を争うエネルギッシュな街。特に鶴橋駅の下に広がる鶴橋商店街は細く入り組んだ道がまるで迷路のよう。そんな商店街に地元民や遠方からの旅人がこれ目当てに足を運ぶという絶品のキムチサンドがあるんです。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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愛され続けて40年、地元民の憩いの場

今や鶴橋の名物となったキムチサンドを生み出した名物ママとお店の物語は、とてもドラマチック

JR・近鉄・地下鉄の鶴橋駅に隣接するような形の「鶴橋商店街」は、終戦後、駅の周辺に約3000人もの露天商が集まって自然発生した闇市を起源に誕生。昭和22年には大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国、中華民国、中華人民共和国、そして日本の5カ国・300店舗が加盟した鶴橋国際商店街連合が結成されるなど、市場は多国籍な空気と活気に満ちあふれました。

各線への乗換駅とあって驚くほどたくさんの利用客が。商店街にはおいしそうな韓国惣菜が並び、焼肉の香りが漂います

現在も細い迷路のような商店街の中には、飲食店、食料品店、衣料品店などがひしめいていて、おいしい焼肉や韓国料理、キムチを求めて各地から人々がやって来ます。近年では韓流カルチャーのブームも手伝って、アーティストの作品やグッズを買い求める女性の姿もよく見られます。

取材の数日前がママのお誕生日とあって入り口はとっても華やか!

今回ご紹介する名物ママがいるのは、鶴橋商店街の11班のストリートにある「珈琲舘 ロックヴィラ」。今年、創業40周年を迎えるこちらは、こぢんまりとした店内ながら、営業中は常にお客さんでいっぱい! ご近所へは出前も対応、さらにはフードのテイクアウトもOKとあって、スタッフのみなさんはチャキチャキと忙しそう。ゆったりした時間を楽しむお客さんと常に活気がある店内というコントラストも、ロックヴィラならではの光景です。

コーヒーのいい香りがフワリと店内中に漂います

人生の荒波乗り越え、キムチサンドを生み出したママのロックヴィラ一代記

毎日キッチンに立つママの岩村瑛子さん。入ってくるお客さんに声をかけたりカウンターのお客さんと話をしたり、常に動き回っています

ロックヴィラは、もともと岩村さんのご主人がサイフォンで丁寧に淹れたコーヒーを楽しんでほしいと昭和54年に創業。その後、日本への憧れを持って来日したママとの出会いがあり、お店は今の形になっていきます。ちなみにロックヴィラの店名の由来は、「岩」「村」の英語読み(ROCKとVILLAGE)を合わせたもの。

岩村さん
岩村さん
「23歳の時、韓国から日本に旅行に来たんです。その時の日本の印象が忘れられなくて、再度日本に来て住み込みで仕事を始めました。そんな時に出会ったのが、すでに『ロックヴィラ』を開店していた主人でした」

出会いから3ヶ月後に結婚、かわいいお子さんを3人もうけ、お店の営業も順調でしたが、平成元年、ご主人が若くして病に倒れ亡くなられます。以後はお店の営業も子育ても、岩村さん1人で行っていくことに……。

若かりし日の岩村さんと娘さんたち。旅行で訪れた韓国・済州島での1枚
岩村さん
岩村さん
「とにかく子どもが3人とも幼かったので、子育てをしながら必死で喫茶店の営業を続けました。『再婚するなよ、店を守ってくれ』と言っていた主人の言葉を守らなくちゃ!と思って頑張りました」
カウンター内でコーヒーを淹れる岩村さんの娘さん

サイフォンでコーヒーを淹れるご主人の姿を見ていた岩村さんは、独学で淹れ方を学びつつ、記憶を頼りにロックヴィラのコーヒーを再現するための日々を過ごします。試行錯誤しては常連さんに飲んでもらい、こうだった、ああだったと意見を聞きながら、コーヒーはようやく完成しました。

岩村さん
岩村さん
「コーヒーが自分のものになるまで、5~6年ぐらいかかりました。あの時、意見をくれたり変わらずに40年通ってくれている常連さんたちには感謝しかありません」

その後、今やお店を代表するほどの看板メニューとなった「キムチサンド」が生まれることに!

思いつきから始まった「キムチサンド」

今やロックヴィラの代名詞的メニューの「キムチサンド」(650円)。食べごたえがありコーヒーにもベストマッチ!

サンドイッチメニューはご主人が営業していた頃から提供していましたが、ある夏の日、食欲がないけどパンを使ったものが食べたい……何かピリッとしたものなら食べられそうかなぁと思い立った岩村さん。自宅にあった食パンにキムチを挟んでパクリ! しかし、初めてのキムチサンドは、岩村さんいわく「まぁ、おいしくなかったわね(笑)」とのこと。

岩村さん
岩村さん
「でも発想は悪くないと思って。その後、キムチを変えたり、いろんな具材を一緒に挟んで改良を重ねてから常連さんに食べてもらったら、これはイケる!と言ってもらえて。おかげで自信になりました」
バターを塗った食パンを軽くトーストした後に具材を重ねていきます

食パンを軽くトーストし、マヨネーズ、きゅうり、ハム、たまご、そして、キムチをたっぷりと。「家族やお客さんに愛情をたっぷり込めた料理を食べてもらうこと」を大切にしてきた岩村さんのキムチサンドは、韓国にもないという斬新さと鶴橋らしさあふれるオリジナリティー、圧倒的なおいしさですぐに人気メニューに。

岩村さん
岩村さん
「白菜のキムチを使っているのですが、韓国のキムチも含めて季節によって3〜4種類ブレンドしています。韓国のキムチは塩辛くなくて、旨味もしっかりしているのが特徴。いろいろな具材と一緒にサンドイッチにした時のバランスを考えたら浅漬けは合わなくて。しっかりと発酵して旨味がありつつ、酸味も効いているキムチがベストなんです」
「萌え断」なんて言葉が流行る前からこの美しき断面!

水分をたっぷり含んだままのキムチは、その水分がパンに染み出してベッチョリとしてしまうため、ロックヴィラのキムチサンドは少しずつ、徹底的に手で水分を絞り出すというひと手間をかけています。テイクアウトもOKなのでお土産に購入したいという人も多いそうですが、水分の問題もあり、ベストな状態は「ロックヴィラで注文してロックヴィラで食べること」なのだそう。

優しい味わいのアイデアメニュー、ロックヴィラ流「ミックスサンド」

「ミックスサンド」(650円)も断面が素晴らしい

こちらも岩村さんが考案したオリジナルメニューのミックスサンド。コーン、ハム、たまねぎをバターで炒めて、たまごでしっかりととじたものを、トーストした食パンでサンド。コーンの甘味とバターのコクがしっかり効いた、子どもも大好きな優しい味わいのサンドイッチは、これまでの「ミックスサンド」の概念を軽やかに超えてきます。ミックスサンド界の革命児!

韓国の定番家庭料理「キムチピラフ」

「キムチピラフ」(700円)。「韓国ではキムチはピラフやチャーハン、チゲなんかに無駄なく使うのよ」と岩村さん

こちらは韓国の家庭ではキムチを使った料理として定番のキムチピラフ。キムチサンドに使われるオリジナルのブレンドキムチをたっぷりと使ったピラフは、目玉焼きの黄身がぐっと味をまろやかにしてくれます。おなかいっぱいになってほしいという岩村さんの心意気もあいまって、かなりボリューム満点の一品。

お店の魅力、教えて常連さん!

このように数々のメニューでお客さんをとりこにしているロックヴィラ。常連さんにお店の魅力を聞いてみましょう。

近所の焼肉店でお勤めの山本さんは、30年以上ほぼ毎日、しかも1日2回来店されるという常連中の常連さんです
山本さん
山本さん
「出勤前と休憩中に必ず来ています。ここのコーヒーは本当にまろやかで、私はほかの店では、よう飲めません。ママとはボランティア仲間で、娘さんたちを頑張って育てている姿もずっと見てきました。今、みんなで仲良くお店をされているのが本当にうれしく思います」
商店街でホルモンの小売店を営まれている宋さんも週6で通うというヘビーユーザー
宋さん
宋さん
「毎日、午後3~4時の休憩で来て、たまごサンドとアイスコーヒーを頼んでいます。ママをはじめスタッフのみんなが愛嬌(あいきょう)があって優しいし居心地もよくて、まるで自分の家みたいにくつろいでいます」

2019年、迎えた40周年と新たな挑戦の始まり!

店に入ってすぐの壁には来店した有名人の写真がズラリ

キムチサンドの提供を開始してすぐ、たまたま通りかかった在阪テレビ局のスタッフが番組で取り上げてからというもの、キムチサンドはもちろん、お店自体も注目を集め、テレビに出演すること45回! もはや在阪テレビ局には「全部出たわね〜」と岩村さん。さらにはキムチサンドが全国誌や新聞、旅行ガイド雑誌で取り上げられたことで、日本全国から“ここにしかない味”を求めてたくさんの人が毎日やってくるのだそう。

4月28日(日)には上本町の大阪新歌舞伎座で40周年イベントを開催!

ご主人が始めた喫茶店を継ぎ、「愛情込めておいしいものを」との思いで岩村さんが積み上げた40年。なんと、今年の4月には大阪新歌舞伎座で、岩村さんが大好きな韓国のアーティストを呼んで40周年記念公演を行うのだそう。さらには、今年中に近所でもう1店舗飲食店を始めようとしているのだから、岩村さんのバイタリティには驚かされるばかりです。

鶴橋のロックヴィラだからこそ誕生した名物キムチサンド。大阪に来たら食べるべきリストに入れるのが旅のセオリーですよ。

取材・文=桃井麻依子 写真=川隅知明 構成=伊東孝晃(クエストルーム ) 


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