群馬・桐生市 人々に親しまれる宝探しの場

2019/03/31

群馬・桐生市 人々に親しまれる宝探しの場

毎月第1土曜に開かれている、桐生天満宮古民具骨董市。貴重な品や懐かしい玩具などが並び、1万人近い人が訪れる日もある。桐生天満宮の宮司である前原勝さんと、同市事務局の橋本正利さんに、骨董市の歴史と面白さを聞いた。

中広

中広

市民の発案で始まった 25年の歴史を数える骨董市

桐生市の中心を南北に貫く、本町通り。起点には、桐生天満宮がある。地元の人々から天神さまと親しまれ、初詣や七五三の時季には多くの人で賑わう。その境内で、毎月第1土曜に行われるのが、桐生天満宮古民具骨董市(以下、骨董市)だ。同日開催の買場紗綾市(かいばさやいち)桐生楽市と併せて、桐生三大市と呼ばれている。

桐生楽市は、本町通りに添って並ぶフリーマーケット。買場紗綾市は専門店による市場で、地元洋品店や飲食店などがひと所に集まる。そして骨董市は、骨董商が露店を出し、古民具や名品、珍品を並べている。

骨董品や古民具など、普段は見られない珍しい物も並ぶ

菅原道真公を学問の神として祭る天満宮は、全国に数多い。京都の北野天満宮から、ここ桐生市に分霊されたのは、1350年頃の観応年間。それから300年以上を経た江戸時代中期、桐生市で絹織物の一種である紗綾織が盛んになると、境内で行われていた絹市は紗綾市と呼ばれるようになる。その後、紗綾市は買場と呼ばれていた物産売買所へ移動、しばらく途絶えていたが平成8年に復活した。

それに先駆けて平成5年10月、桐生天満宮の境内で骨董市が始まった。きっかけは、市内在住の有名な骨董品収集家だった、故河原井源次さんの声掛けによる。

河原井さんは会社経営の傍ら、地域活性化にも尽力。市内の名所を歩いて回り、健康と参拝によるご利益を得ようという、桐生七福神めぐり健和会の立ち上げや、市へのコレクション寄贈など精力的に活動を行っていた。その一環として、まちに人の集まる場所を作り、賑わいを生みだそうと始めたのが骨董市だ。開催場所として桐生天満宮に白羽の矢が立った。

前原勝さん

前原勝さん

桐生天満宮 宮司

以来、骨董市は毎月開かれ、今では開催200回を超えた。100回を達成した際には、境内に碑が建てられたほど、地域の人に喜ばれ、親しまれている。

「出品物に着物が多く見られるのは、桐生市の骨董市ならではでしょうか。どんな品が並ぶのか、私も毎回楽しみにしています」と、前原さんは笑顔を見せる。

桐生市らしく、あちこちの店に古い着物が並ぶ

インターネットにはない 思いがけない品物との出合い

骨董市で、誰よりも早く掘り出し物を見つけようとする人は、早朝からやってくる。店の設営は6時からだが、7時頃から、ちらほらと人の姿を見かけるようになる。人出のピークはお昼頃まで。多いときは1万人を数える。

最初は30店ほどからのスタートだった。「今日は70店くらい出ていますね。以前は骨董店ばかりでしたが、近頃は創作着物や昭和30年代のおもちゃなど、出品の内容も変わってきていますと話すのは、骨董桐生の店主である橋本正利さん。桐生天満宮古民具骨董市事務局を担い、河原井さんと共に骨董市の立ち上げに携わった1人だ。

桐生にはもともと、骨董品の集まる要因があったと橋本さんは話す。織物・繊維の産地として栄え、全国各地から人や物が集まる場所であり、高価な絹を扱っていたため、財を蓄えた旦那衆も多くいたからだ。

「明治時代には、輸出用の絹織物を横浜へ運んだ折りに、珍しい品物を持ち帰ったのでしょう。桐生には、質の高い骨董品が昔からありました」

河原井さんのような収集家も少なからず存在し、骨董市が成り立つ下地は十分あった。一流の骨董品店に入りづらくても、骨董市ならば気軽に出かけられる。一つひとつの品を手にとって吟味できるのも、インターネットでの売買にはない魅力。この人気に期待して、東京や神奈川など、遠方から参加する骨董店も多い。

橋本正利さん

橋本正利さん

桐生天満宮古民具骨董市事務局

良い物が出ると、「飽きたら買い取るから」と言って、親しい客に勧めたりする。「骨董の面白さは、品物がそうやって人々の手を渡り、長く大切にされていくところですね」と、橋本さんは目を細める。見る目を養うには、良い品を数多く見るのがいちばんだと、目利きのコツも教えてくれた。

店の人との会話を楽しみながら、気に入りの品を選ぶ

最近は若い人や、雰囲気に合わせて着物姿で買い物に訪れる人が増えたそうだ。古い着物の端切れをパッチワーク用に買ったり、コーヒーを飲むためにそばちょこを求めたり、今の人は自分らしい楽しみの見つけ方がうまいという。

人と物が思わぬ出合いを果たす骨董市。店の人に、品物の由来を尋ねると、興味深い答えが返ってくるかもしれない。そぞろ歩きながら、自分だけの宝物を見つけに、出かけてみてほしい。

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中広

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