中田英寿が語る。日本最大級“SAKE”イベントへの想いとは

2019/04/18

中田英寿が語る。日本最大級“SAKE”イベントへの想いとは

2016年から東京・六本木ヒルズアリーナにて毎年春に開催される日本最大級の“SAKE”イベント『CRAFT SAKE WEEK』。4回目となることしは4/19(金)〜29(月・祝)の11日間開催される。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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『日本酒のその先』を考えるために発見を提供する場を作りたい

4/19(金)〜29(月・祝)、六本木ヒルズアリーナにて日本最大級の“SAKE”イベント『CRAFT SAKE WEEK at ROPPONGI HILLS 2019』が開催。昨年は延べ12万人以上が訪れるなど、すでに東京の春の風物詩的な大きな催しとなっている。イベントをプロデュースする株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANY代表の中田英寿に今回で4年目となる『CRAFT SAKE WEEK』について話を聞いた。

中田英寿/プロサッカー選手引退後、日本全国を巡る旅を経て、15年(株)JAPAN CRAFT SAKE COMPANY設立。現在は日本の文化の素晴らしさを多くの人々に知ってもらうための活動を行っている

プロサッカーの世界を離れたのちに世界中を旅した彼は、いまは日本各地を訪ね歩き、旅で出会った日本の素晴らしいものや人々、文化を広く紹介する活動をしている。

『CRAFT SAKE WEEK』は全11日間の期間中、中田英寿が日本全国から厳選した合計110蔵の日本酒が毎日日替わりで提供される。それらの日本酒に合わせる食事として、同じく彼が実際にお店に足を運び自分の舌で味を確かめたシェフたちの作る最高の料理を味わうこともできる。

2016年の六本木会場の様子。櫓(やぐら)を囲んで、日本酒と食事を楽しみながら会話できる空間を演出

「『CRAFT SAKE WEEK』の会場ではこれまでも生ハムやスイーツなど、さまざまなジャンルの料理を提供してきました。会場にあるお酒は全て日本酒なので、普通に考えたら和食だけ並べていたら良いと思われがちですが、日本酒がこの先大きく世界で羽ばたくためには、ワインやシャンパンなどと同じようにさまざまな国の料理と合うということをきちんと知っていただく必要があると思っています。『CRAFT SAKE WEEK』の会場では、日本酒といろんな料理を合わせていただくことができるので『あ、スペイン料理にも日本酒って合うんだね』という風な新しい発見を提供したいんです」

2016年にスタート、ことしで4年目となる『CRAFT SAKE WEEK』のテーマは『日本酒と世界各国料理とのペアリング』。ここには、中田英寿のある想いが込められている。

「例えば、ワインやシャンパンを『この料理にしか合わない』と言って出しているお店はないですよね。でも昔は、フレンチワインはフランス料理店、イタリアワインはイタリア料理店でしか出していなかったと思います。しかし、徐々に料理の枠を越えたレストランでも提供されるようになって、ここまでワインの市場が大きくなったんだと思います」

『CRAFT SAKE WEEK』のテーマは『日本酒と世界各国料理とのペアリング』

ワインは日本酒と同じ醸造酒。そう考えた時に、彼は日本酒の可能性を感じたという。

「日本酒の現状というのは、日本ではもちろん和食と一緒に飲まれています。世界でも和食と一緒に飲まれて広がっています。では、『その次を目指す』ということであれば、日本酒は和食だけではなくて、いろんな国の食事の時に飲まれるようになっていくことが大事だと思っています。これはすでにワインやシャンパンなどの日本酒と同じ醸造酒というカテゴリーのお酒が実現しているので、日本酒にも必ずそのポテンシャルがあると思っています」

11日間の期間中、合計15店舗のレストランが登場

今回の会場では、4/19(金)〜23(火)の前半5日間はアジア料理を提供する5つのレストランが登場する。「虎峰」(六本木)、「ミ・レイ」(蒲田)、「若狭」(中目黒)、「サイフォン レストラン」(小岩)、「ファイブスターカフェ」(中目黒)といったいずれも“超”が付くほど人気のアジア料理店だ。

「現在、特にアジアでの日本酒市場はすごく伸びています。日本へのインバウンドという中でも、アジアから日本を訪れる人がすごく多くなっています。彼らは日本に来てこれまで飲んだことがない美味しい日本酒を経験して帰るので、そうすると日本酒の需要というものがアジアの国々で伸びていきます。それを考えた時に、きちんと日本酒といろんな国の料理との合わせ方を見せていける土壌を作り、データを貯蓄していくことが非常に大事だと思ったので、まずはアジア料理とのペアリングをやろうと考えました」

数あるアジア料理の中で彼がまず選んだのは5つの国の料理だった。

「なぜ中国、韓国、タイ、シンガポール、ベトナムの料理を選んだかというと、アジア市場で日本酒が伸びているトップ5の国だからです。それらの国の料理と日本酒のペアリングを提案することで、『日本酒と合う』ということが情報として伝わっていけば、日本酒をもっと楽しもうということが始まるかもしれない」

「虎峰」鶏の唐揚げ四川風

プロサッカーの世界を離れ、世界中を旅した彼はアジアの国々を旅した際にあることに気づいたという。

「アジアはお米文化ですよね。例えば韓国に行くとマッコリがあったり、他の国に行ってもお米による醸造酒があります。僕は色んな国を旅する際に、必ず農家を訪ねています。そうすると、アジアの農家の皆さんはお米を作っているから、そのお米で醸造酒を作っていることが分かりました。僕がこれまで訪問したどんなアジアの国でも田舎に行くとお米の醸造酒や蒸留酒を作っています。それを見た時に、『あ、やっぱりお米でお酒を作っているんだな』と。そう考えた時にお米が原料の日本酒は、日本料理だけじゃなくてお米を基準とした文化を持っているアジアの国々の料理と合わせるのは簡単だなと思いました」

「ファイブスターカフェ」海南チキン

そして後半となる4/24(水)〜28(日)の5日間はヨーロッパの料理が登場。「シュマッツ」(南青山)、「キャビアハウス&プルニエ」(高輪)、「リストラテ ラ チャウ」(芝浦)、「アロセリア ラ パンサ」(銀座)、「六本木 kappou ukai/六本木うかい亭」(六本木)といったこちらも名店ばかり。

「当然のことながら、日本酒をヨーロッパの料理に合わせるのには少し壁があります。でもその壁は、ワインが日本食に合わせらるようになった時の壁と同じだと思います。もともと文化圏が違うので少し時間はかかるけれども、ワインが和食と一緒に楽しまれるようになったように必ず日本酒もそうなれると確信しているので、それを意図的に伝えていかなければならない」

「リストランテ ラ チャウ」チッポラリピエナチーズソース

アジアやヨーロッパの国々の料理と日本酒のペアリングを経験した人はあまり多くはないだろう。この試みが何か新しい発見をさせてくれるかもしれない。

「例えば、今回の面白い取り組みだと、『キャビアと日本酒』。世界中では、いまキャビアといえばシャンパンが出てくることが多いですよね。でもキャビアのような塩辛いものだと、日本酒とも絶対に合うんですよ。これは知り合いの料理人の誰にいっても『あ、それは合うよね』と言われます。それを実際に試していくことで、『キャビア=シャンパン』という図式が、『キャビア=日本酒』というものに変わるかもしれない。僕たちは美味しいレストランを用意しながら、『それが先につながるには』ということを毎回考えてやっています」

「キャビアハウス&プルニエ」キャビアおろしわさび

さらに、最終日となる4/29(月・祝)は京都のフレンチ「モトイ」、神戸のスペイン料理店「カセント」のほか、「ペレグリーノ」(恵比寿)、「中勢以 内店」(小石川)、「神楽坂 石かわ」(神楽坂)が一日限定で登場する。

「今回選んだレストラン、特にアジア料理店などは、もともと日本でレストランをされているところなので、すでにお店で日本酒を出しているところもあります。毎回出店していただくレストランは、すべて普段自分が行っているところから選んでいます。今年もトップクラスのレストランが出店してくれたと自信を持っています。レストランでも自分が行ってないところを『有名だから』ということで出店をお願いすることもありません」

「ペレグリーノ」ペルシュウ オーロ 熟成24カ月
「モトイ」オマール海老の蓮の葉おこわ

期間中、1日10蔵の日替わりで登場する日本酒と世界各国の料理。会場でそれらを味わった人たちは「私この組み合わせ好き!」というような、新しい発見をするだろう。中田英寿はこの『CRAFT SAKE WEEK』に参加する酒蔵やシェフたちにも同じように発見をして欲しいと考えている。

「会場に来ていただくお客さんだけでなく、今回参加いただく蔵元さんたちにも『自分の作るお酒を和食のお店だけに売っていていいの?』、シェフたちには『ワインやシャンパンだけをお店で提供するだけでいいの?』という風に、このイベントを通して考えてもらうことでその先が生まれていくんじゃないかと。会場に遊びに来るお客さんたちだけでなく、蔵元、シェフ、いろんな方に日本酒のその先を提案していくことが大事だと思っています」

日本酒が海外で広まるために大切なこと

現在も世界中を旅している彼だが、日本酒が海外で広まっていくためにはあることが必要だという。

「いまの海外で飲まれている日本酒は残念ながらきちんとした温度管理がされていない。先日、ワインメーカーの方と話をする機会があったのですが、昔はワインもきちんとした温度管理がされないまま海外に出ていたとお聞きしました。その結果、ワインの状態がひどくなり、売り物にならないと送り返されていたことできちんと温度管理をするようになったと伺いました。温度を管理することで、ワインをいい状態のまま海外にも届けることができるようになり、今度はそれを保管するためにワインセラーというものができて、きちんと管理をすることができるようになりました。温度管理できるようになることで、美味しい状態を長く保つことができる。それによってワインの価値と市場性が上がりました。ここ10年で世界に広がっていった日本酒業界は、まだその状況まで来ていません。日本酒も適した温度で管理されたまま配送され、保存する際にも温度管理をしなければいけません」

世界中を旅した際も日本酒を味わっているという

たしかに日本でもワインは家庭用ワインセラーで保管している人も増えつつあると思うが、日本酒は出しっ放しか、冷蔵庫で保管している人が多いだろう。

「ワイン、シャンパンを管理するのに適した温度や湿度があるのに、どうして日本酒を管理するのに温度がないの?と疑問に思いました。温度管理をすることで味が変化します。常温に置いたワインと、セラーで管理したワインはやっぱり味が違います」

日本酒の普及にも尽力している中田英寿は、日本酒のセラーの開発なども行なっている。

「世界中のいろんなところを周って、それぞれの国で日本酒を飲みますが、日本と同じ状態で日本酒を飲めることは少ないです。それに気が付くくらい温度管理ひとつで味が変わります。日本は蔵元からレストランまで距離が近いので、いい状態のまま日本酒が届けられます。これが外国だと船に乗って長い時間をかけて海外に送られ、それから数ヶ月も放置されているような状況が続きます。そういう日本酒は色が変わっていき、香りがダメになっていきます。しかし、日本に来て温度管理された日本酒を飲んだことがない海外の人たちはそれがどういう状態なのかわからない。日本酒がもっともっと美味しくて、ポテンシャルを持ったお酒だということを多くの方に知っていただくためにも、きちんと温度管理をしなきゃいけません。現在はそれができてないので、日本酒の低温物流システムの整備をしたり、日本酒のセラーを作ったりという活動をしています」

『CRAFT SAKE WEEK』に出店する日本酒の試飲をする様子

海外からの来場者にも対応

2020年の東京オリンピックを目前に、ここ数年は数多くの外国人たちが東京を訪れている。2016年から3年連続で開催している『CRAFT SAKE WEEK』だが、年々外国からの客も増えているという。

「予想以上にいろんな国の方が毎年増えているのですが、きちんと対応もしています。期間中、唎酒師の皆さんがオススメのお酒を持って会場を歩いていますが、どこの国の言葉が話せるかわかるようにバッジをつけて、外国の方にも気軽にお越しいただける仕組みを作っています。僕がプロデュースしている日本酒アプリ『Sakenomey』もさらに進化させて多言語化を進めようとしています。やはり伝えるということをきちんとやっていかないと、その先には進めないので」

会場には唎酒師のみなさんがいるので気軽に尋ねてみよう

会場は中田英寿の考えるライフスタイルを体現

中田英寿が自ら試飲や試食を重ね、自信を持って推薦する日本酒と料理が味わえる『CRAFT SAKE WEEK』だが、このイベントももう一つの魅力は “会場”。毎年訪れる度にそのスケールに圧倒されるほど素晴らしい空間が用意されている。

「毎年、会場構成にもこだわっています。『こういうライフスタイルの人たちは、こういう場所に来て、こういうものを食べる』という風に関連性があると思っています」

昨年の六本木会場の様子。会場をグルリと竹で囲むという圧巻のスケール。連日多くの人で賑わった

「『CRAFT SAKE WEEK』には、いい日本酒、美味しい食事、素晴らしい空間と音楽がある。そう、中田英寿の考えるライフスタイルの全てが盛り込まれている。

「例えば、いいお酒があってもただ単にテーブルを並べただけのつまらない空間だったら、お酒の価値を感じづらいと思います。いいレストランに行っても、いい器が使われていなかったら美味しく感じないと思っています。だからこそ、会場もみんなが楽しめる場所にする必要があり、全てに凝らないとつまらない場所になってしまうと考えて会場を構成しています」

彼の考えるライフスタイルを表現するために、今回は『CRAFT SAKE WEEK』では初となる女性建築家に会場設計を依頼したのだそう。

「過去3回は会場の設計を男性建築家に依頼していたのですが、“会場の下を埋めていく”という観点が強くありました。今回は上の方、会場の“空間”を埋めたいという想いが僕にはありました。空間だから『ズシッと重いものよりもフワッと軽いものを』というイメージが湧いて、今回は女性建築家の永山祐子さんにお願いしました。永山さんにはできれば日本の文化と結びついているもので空間を埋めて欲しいということをお伝えしました」

今回の空間デザインを担当をする建築家・永山祐子氏(右)
会場のジオラマを見せていただいた。全長16km、570本の縄で構成される大きな天蓋が会場を覆う

令和という新元号が発表され、もうすぐ平成という時代が終わるが、日本酒にとって平成はどんな時代だったのだろう。

「平成と言っても30年間ありますが、日本酒の進化でいうと、ここ15年くらいじゃないですかね。この平成の30年間でいろんな情報が手に入るようになったことで、日本におけるワインの売り上げが変わっていったように見受けられます。その様子を見ていた日本酒に携わる人たちが(日本酒と)同じ醸造酒であるワインができるんだったら日本酒でも、という風に思われていったのではないかと僕は思います」

『CRAFT SAKE WEEK』で伝えたいこと

6年半をかけて日本中を旅し出会った彼が「世界の人に誇りたい」と考える日本の逸品とその作り手を紹介した本『に・ほ・ん・も・の』(KADOKAWA)を上梓

「『CRAFT SAKE WEEK』はお酒のイベントではありません。会場に来ていただいてお酒が売れたからって僕らに何かがあるわけではないですし。一番大事だと僕が考えているのは、『日本の持つコンテンツ、日本の文化はこんなに面白いんだぞ、こんなに可能性があるんだぞ』ということを多くの人に見てもらう場所を提供したいということなんです。大事なのは会場に来ていただいた方が、ここで日本の素晴らしいものについて自分の知らなかったことをどれだけ発見をして、どれだけ楽しんでくれたか、それにつきますね」

全11日間、毎日10蔵ずつ蔵元を変え、期間中の前半と後半で提供する料理を入れ替えるということはイベントを開催する上では非常に難しいことだと想像に難くない。全ては「ここで常に新しい発見や出会いを提供するために」中田英寿はそう考えている。

「僕はオーガナイザーをやっていますが、僕が会場にいるから皆さんが会場に来られるわけではなく、美味しい日本酒やレストランの料理を味わいにくる人もいれば、素敵な空間を楽しみにくる人もいる。いろんな方に来ていただけています。僕が見つけてくる日本の素晴らしい人たちを世の中に紹介していく、『CRAFT SAKE WEEK』はそういうプラットフォームなんです」

<イベントデータ>
「CRAFT SAKE WEEK at ROPPONGI HILLS 2019」
日時:4/19(金)〜29(月・祝) 全11日間 各日12:00〜2100(LO20:30)
会場:六本木ヒルズアリーナ
料金:CRAFT SAKE WEEKスターターセット3500円(酒器グラス+飲食用コイン11枚)

<株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANY>
JAPAN CRAFT SAKE COMPANY は、酒蔵やその数々の銘柄の魅力、日本酒にまつわる文化を世界に向けて紹介している。国内最大級の日本酒イベント「CRAFT SAKE WEEK」の開催をはじめ、日本酒販売に関するコンサルティングやプロモーション、酒器の開発など、日本酒業界の国内・国外での発展を多岐にわたってサポートしている。

取材・文=Yahoo!ライフマガジン編集部

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