“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第9回は『どすこい酒場てんま』。
犬養 裕美子
レストランジャーナリスト
ちゃんこ鍋の常識を破る個性的料理
赤羽駅前の一画、その名も“赤羽OK横丁”。小さな店がぎっしりと並ぶ、一昔前ならどの駅前でも見られた光景。昭和のにおいがするスナックや流行の海鮮居酒屋やワインバルなどの店がいい感じに並んでいる。
その中で悠然と我が道を行くのが 「どすこい酒場 てんま」だ。この店に初めて来たのは某雑誌のちゃんこ鍋テイスティングの企画だった。店主の横山清さんの小山のような体格を見て、さぞかし大盛りで出てくるだろうと不安になった。
ところが登場したちゃんこはエノキ、ニラ、キャベツ、長ネギなど野菜8種に、油揚げ、豚バラ、鶏肉など、野菜たっぷり、肉も2種類。鍋一杯のボリュームにもかかわらず1200円と衝撃の値段。しかも、昆布と鶏ガラでとったスープのおいしいこと。大満足の内容だった。
聞けば、夏には冷やしちゃんこが登場するという。私は少女のように(?)夏が来るのを心待ちにしていた。
鍋の中は禁じ手なしの味の解放区!
そしてやってきました、赤羽の夏! 初体験の冷やしちゃんこはまるでサラダだった。
レタス、キュウリ、トマトに赤と黄色のピーマン、ミヨウガに鶏のササミ。ここに冷たいスープを注いである。スープサラダともいうべき新しい食べ方だ。食べつくせば」、野菜を思う存分摂取したと実感がわいてくる。
続いて焼きちゃんこの登場。キャベツ、モヤシ、ニラと鶏の4部位を少なめの汁で炒めるように煮る。八丁味噌をブレンドした味噌スープは炒めると香ばしい香りに変化していくのが面白い。「一人客の常連も多いので、1人前の量にして」とは言うが2人でも十分の量。ちなみに鍋にも焼鳥にも頻繁に登場する鶏は、横山さんがほれ込んだ富士山麓の紅ふじ鶏。「レバーが絶品!」との宣言通りそのとろける食感はフォワグラともひと味違う、日本ならではの味。
そして飲み物にもユニークなものがある。“ブラジャー” (ブランデー+ジンジャエール)Aカップ650円~なんて、ドキッとさせられるネーミングのドリンクや、升ワイン400円(日本酒の升に入ったグラスにこぼれてもワインを注ぐ)など、気前のいいサービスに、つい「ごっつぁんです!」と杯を重ねたくなる。
どすこい酒場 てんま
住所:東京都北区赤羽1-17-4
電話番号:03-5939-7288
営業時間:17:00~23:30LO
※スープを使うちゃんこは要予約
定休日 月曜
※子ども可
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