山口県民のソウルフード!「瓦そば」といえば「たかせ」

特集

【特集・第5回】地元人が推薦! グルメ甲子園 〜 ローカルフード編 〜

2019/06/23

山口県民のソウルフード!「瓦そば」といえば「たかせ」

熱した瓦の上に茶そばと具材をのせて作る「瓦そば」。県民に愛され、全国で有名になった郷土料理の原点に迫ります。

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

歴史は、200年!? 老舗旅館で誕生した味

瓦そば発祥のたかせ本館。創業から使われている建物は、築100年以上だ

山口県のソウルフード「瓦そば」は、かつて県内有数の湯治場として賑わい、長府藩第三代藩主・毛利綱元も愛したと言われる「川棚温泉」で1962年に誕生しました。当時旅館業を営んでいた高瀬慎一氏は、老人からある昔話を耳にします。それは1877年、西郷隆盛を盟主にして起きた士族による武力反乱、「西南の役」のときのこと。熊本城を囲む薩軍の兵士たちが、長い野戦の合間に瓦を用いて野草や肉を焼いて食べていたという話でした。

南本館の店長、竹原真奈美さん。たかせで14年前からホール業務に携わっています

老人の話にヒントを得た高瀬氏は、宿泊客向けの料理として「瓦そば」を考案。それが評判を呼び、今では瓦そば専門店「元祖 瓦そば たかせ」として県民なら誰もが知っている有名店となりました。

南本館店長 竹原さん
南本館店長 竹原さん
「川棚では古くから藁の屋根ではなく瓦屋根が毛利のお殿様から許可されていました。そんな背景もあって、瓦は比較的手に入りやすく、身近な存在だったと聞いています」

でき上がりまでほんの数分。 瓦そば専用「瓦」で仕上げる

瓦は食器であり調理道具です。まずは茶そばを鉄板で軽く下焼きして、瓦に盛り付けます。

下焼きは両手に竹箸を持って手早く麺を炒めるのがポイントだ
麺の上に錦糸卵、牛肉、ネギ、海苔、レモン、もみじおろしの順で重ねていく

この時瓦の温度はなんと約300度! 普通の瓦では高温に耐えきれず割れてしまうため、たかせでは島根県の石州瓦店に専用の瓦を特注しています。油を塗って火で炙る工程を何度も繰り返し、わざと瓦を焦がしていくことで瓦が炭化し強度がアップ。遠赤外線効果によって表面はカリカリに、中はふわっとした麺が仕上がるのです。

竹原さん
竹原さん
「私がここで働き始めた14年前までは、まだ民家の日本瓦を使用していました。『民家を取り壊す』と連絡が来たら、トラックに乗って瓦を取りに行き、きれいに洗って使っていたんです。ただ扱いが難しく、今は瓦そば専用『瓦』のみを使用しています。お皿や鉄板では、すぐに冷めたり焦げすぎてしまったりしますが、これだと丁度いいんです」

熱々のうちにひと口、薬味を加えてもうひと口

写真は「元祖 瓦そば」2人前(1人前1188円〜)

瓦で麺が焼けるパチパチという音が消える前に、さっそくいただきましょう! 昆布カツオでとった温かいそばつゆを碗に注いで、具と麺をつゆにつけてひと口。宇治茶を練りこんだそばは風味豊かで、瓦でほどよく焦げたパリパリ麺と麺本来のコシが組み合わさった絶妙の食感を楽しめます。

レモンともみじおろしは後から入れるのがたかせ流

半分ほど食べたら薬味で味を変えられるのも瓦そばの醍醐味。レモンもみじおろしをつゆに入れれば、ピリッと爽やかな味に変わり、新たな魅力に気づきます。ネギや海苔には山口県内のものを使用。地元のいいものもしっかり取り入れているんです。

竹原さん
竹原さん
「『黒の瓦に合うのは、ネズミ色のそばよりも緑の茶そばがいいのでは』『それなら上には卵や肉をのせ、レモンともみじおろしで見た目も華やかに』と創業者が試行錯誤して完成したそうです。本館だけで、1000食以上出る日もありますよ」
つゆは甘さ控えめでそばの味が引き立つ

一度で三度おいしい「うなめし」

2〜4人で少しずつシェアできるのがうれしい
茶碗によそってまずはそのまま
お好みで薬味をトッピング
締めは「うな茶」で決まり

瓦そばに匹敵するたかせの看板商品が「うなめし」です。鹿児島産のウナギを使用してふっくら炊き上げた一品で、半数以上の方が瓦そばと一緒に注文します。茶碗によそってまずはそのまま、次に薬味をのせ、最後は出汁を入れて「うな茶」でいただきます。

竹原さん
竹原さん
「そばを食べながら、ウナギも頬張るのが定番なんです。お持ち帰りを希望されるお客様もいらっしゃいますよ」

創業当時から変わらぬ味とお客様の心

大型連休や週末は、2時間待つこともあるんだとか。テレビや雑誌など数々のメディアに取り上げられ観光客や著名人が多く訪れるなか、「昔から変わらぬ常連さんも多いんです」と竹原さんは創業当時からある来福帳を見せてくれました。

レジの近くに置いてある2冊の来福帳
古くからのお客様が書いたメッセージが今でも残されている
竹原さん
竹原さん
「そばつゆが好きだと週に3回も来てくださる方、普段は遠方にいても帰省したら必ず寄ってくださる方など常連のお客様は多くいらっしゃいます。ほかにもお手紙をいただいたり、箸入れに『美味しかったよ、また来るね』と書いてあったり。お待たせをして、十分にお構いできなくてもそれでも食べにきてくれる。本当にうれしくてありがたく思っています。変わらぬ味を守りつつ、『瓦そば』を愛してくれる人との繋がりをこれからも大切にしていきたいです」
小上がりを上がると座敷、座卓席が広がる

取材メモ/「商品はもちろん私たちスタッフからもお客様に笑顔を届けていきたい」と話していた竹原さん。50年以上受け継がれてきた「たかせの瓦そば」は、創業者・高瀬氏や竹原さんのようなスタッフの想いによって守られ、「またあの味が食べたい」と県民を唸らせるソウルフードなのだと思いました。

取材・文・撮影=新本菜月(株式会社チカラ)

この記事を書いたライター情報

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

グルメ、おでかけ、イベントなど、ライフスタイルを豊かにする情報を編集部が厳選して紹介します。

SPECIAL

SERIES