沖縄県民総支持!元祖タコライスの店「キングタコス」の起源とは

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【特集・第5回】地元人が推薦! グルメ甲子園 〜 ローカルフード編 〜

2019/07/03

沖縄県民総支持!元祖タコライスの店「キングタコス」の起源とは

沖縄名物として忘れてならないジャンクフード。今や全国で名を馳せるタコライスの元祖に迫った。(「おきなわ倶楽部」)

Yahoo!ライフマガジン編集部

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「ピンチ」から「沖縄代表フード」への歴史

パーラー千里と1号店があった場所から、徒歩数分の場所にある現在の本店。ここだけで販売しているチキンもあり、ドライブついでの県民や観光客の間で名所になっている

今や専門店だけでなくカフェ、居酒屋、家庭でも定番となったタコライス。ご飯の上に盛られたミートと濃厚ソースの組合せは、なぜか「深夜飯」の印象を持つ人も多い。それにはキングタコス創業者の「愛と努力」が詰まった、沖縄の歴史ならではの物語があった。「キングタコス 金武(きん)本店」オーナーの島袋さんにお話を伺った。

オーナーの島袋さん。キングタコスは全店で同じ味を提供できるように、金武町の調理場で一括して作り毎日配達される

基地へ帰る前のシメご飯に、タコライス誕生

オーナー 島袋さん
オーナー 島袋さん
「元々は名護市辺野古でレストランをしていて、時代の流れで金武町に移る際、バーをはじめ、さまざまなことにチャレンジするんだけど。時代は円高になってきてお酒が嗜好品として、米兵さんたちも今までみたいに贅沢できなくなってきたのをおじいちゃん(創業者)は見ていたの。みんなが辛い時代、少しでも手軽におなかいっぱいになって帰って貰えるように、お酒じゃなくてご飯で何かできないか考えた末、ゲート前にある元中華料理店を借りて安価でも色々楽しめるパーラーを始めたのが最初ね」
「ポテトフライ」(300円)や県産鶏を贅沢に使った「チキンバラバラ」(800円)も他にないボリュームとアメリカンな味で、テイクアウトしてビールと一緒に楽しむ人も多い

キングタコスは創業時から家族経営、少人数で中心を支えてきた。そのため、店舗が増えるごとに忙しく、オーナーの島袋さんは幼い頃から仕事に付きっきりの両親の思い出を「風邪をひかないと一緒に眠れなかった記憶がある」と語るほど。最初のパーラーを始める時は予算がなく、元中華料理店の看板がきれいだったのでそのまま利用し、中華料理店の名を引き継いで「千里」という店名だったそう。

タコスの具材をバーガーにした「タコバーガー」(350円)も、両手におさまりきらないほどの大きさ。普通のバーガーの3倍ほどありそうだ
島袋さん
島袋さん
「家族みんなで頑張ってきた。辛い時代の中で、米兵さんたちも辛いのが分かっていたからこそ、体の大きな米兵さんが贅沢できない中でも満腹になるように、大盛りで遅い時間でも気軽に食べて貰えるように他店よりも深夜まで営業したの。移りゆく時代の中で知恵を絞って生まれたアイデアメニューが『タコライス』だった。商品名もタコスの『タコ』に『ライス』を付けただけだけど、分かりやすくなじみやすく。そうやって奮闘する中で少しずつ『変なもの売ってたよね』と周りの店でも話題になっていき、『タコライス』が地元の人たちに認知されて売れ始めると、話題にしていた周りの店でもタコライスを作りだしたのよ」
レストラン時代から人気の「タコス(4ピース)」(600円)は、1ピースが大きくこれもボリューム満点

ゲート前の街は時代の移り変わりを色濃く語る「沖縄」にとって重要な場所だ。そこで生まれた「タコライス」の起源には、米軍とともに歩んできた沖縄ならではの歴史が垣間見える。そのゲート前パーラーは、開店から2年ほどすると契約が更新できないかもしれないという問題に直面した。考えた末、少し奥に移転先を見つけ「キングタコス1号店」がスタートした。ここで付けた「キング」という名には、常に王様でいるには手抜きせず良いものを提供し続ける気持ちを忘れないという思いが込められている。結局はパーラーも契約更新ができて、千里とキングタコスを並行営業することになり、同時期に長田店もオープンさせ多忙を極めた。

工夫を凝らしたメニューの数々。好みで注文ができるように細かく分けられた「タコライス」は、昔から変わらない
島袋さん
島袋さん
「長田店にチャレンジするにも苦労の連続。大学生が多く住む宜野湾で定着しなければ他でもダメだと、とにかくチャレンジを続けたの。丸焼きチキンやビーフシチューを出したり、ポイント制チケットを配ったり。コメ不足の時期にはタイ米も一緒に買わないと米を仕入れられず、『タコライス』にはコシヒカリ100%を守りたくて。そこで少しでも学生さんを助けられたらと、余ったタイ米をくじ引きで配るサービスを始めたの。お金のない若者には凄く喜んで貰い客入りも増え、『タコライス』が徐々に定着したきっかけね」
本店1階のカウンター内は常に大忙し。急な大量注文や電話注文にも、順番にテキパキと対応する様子が見られる

当時、外国人の中にはタコライスを注文してもレタスを取り除く人もいたそう。そこでメニューは「ご飯+ミート」「ご飯+ミート+チーズ」「ご飯+ミート+レタスとトマト」「ご飯+ミート+レタスとトマト+チーズ」の4種類が用意され、今でもその手法が受け継がれている。外国人も満足するボリュームも変わらず、テイクアウトではパックが閉まらないくらい大盛りで提供。この見た目が地元でファンを増やしたきっかけにもなった。

「ちょっとキンタコに」というのが地元の定番。昼夜問わず食べくなる「タコライス」はもちろん、飲み会にはテイクアウトで「チキンバラバラ」も人気だ
本店2階は広いイートインスペースが設けられ、日本とアメリカがミックスした沖縄独特の空気が残る金武町を眺めながら、できたてを食べられる

取材メモ/元祖と名乗られる上で気になったのが、他店のタコライスをどう思っているかだった。率直に伺うと「多くの人に愛されてありがたい。周囲の店とも情報交換しながら一緒に盛り上げたい。皆さんがタコライスを広めて定番に育ててくれたと思う。色んな形に成長したタコライスを私も食べ歩いてみたいんですよ」と、ソウルフードに成長した我が子への愛を感じるコメントをいただいた。メキシコ発祥のタコスは沖縄で進化し海外進出も果たした。沖縄へ来た際にはぜひ、よーくおなかをすかせて完食を目指しに訪れてほしい。

取材・文・撮影=サガワ千英(おきなわ倶楽部)

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