群馬・みどり市 伝統を守りながら進化を続ける銘酒の味

群馬・みどり市 伝統を守りながら進化を続ける銘酒の味

2019/05/07

明治8年の創業以来、辛口かつ淡麗の味を守り、主力銘柄・赤城山を造り続ける、近藤酒造株式会社。取締役社長の近藤さんと杜氏の成子さんに、同社の歴史と酒造りへの思いを聞いた。

中広

中広

手作業で守り続ける 辛口かつ淡麗の味わい

日増しに寒さが強まる年末、酒造りは繁忙期を迎える。みどり市大間々町の蔵元、近藤酒造株式会社も同様だ。

同社の主力銘柄は赤城山。すっきりとした味わいながら、辛口で飲み応えもあるため飽きがこない。敷地内の井戸からくみ上げる弱硬水が、のどごしの良い酒造りには欠かせない。創業時から辛口、淡麗にこだわり、味を追求してきた。

近藤雄一郎さん

近藤雄一郎さん

近藤酒造株式会社 取締役社長

日本酒は、一般的に辛口甘口に分けられる。判別するのは、日本酒度と酸度だ。赤城山は、日本酒度が高く辛口に分類されるものの、酸度は低いため、ほのかな甘みも感じられる。「飲みやすく、食事との相性が良い酒を目指しています」。

辛口ですっきりとした味わいの純米酒・赤城山

日本酒は酒米と麹、水によって造られる。それらを酵母菌と共にタンク内で混ぜながら約1カ月寝かせ、発酵させると、元となるもろみになる。もろみを絞ったものが日本酒だ。

酒米と水、麹をタンクで寝かせて発酵させる。約1カ月の間、櫂入れによって発酵を促したり、徹底した温度管理が必要となる。そのため、スタッフは寝ずの番が続く

昔から酒造りは、「一麹、二酛(にもと)、三造り」と言われるように、同社でも麹造りを最も大切にしている。蒸した酒米を35度程度まで冷やした後に麹菌を加えるが、等しく菌を付けるように、職人の手で米をほぐす。「実際に触れると、酒米や麹の状態が良くわかるんです」。昨今、酒造りでも機械化は進んでいるが、同社ではほとんどの工程を手作業で行っている。

蒸し終わった酒米を冷やした後、種麹を混ぜ、麹菌を繁殖させる
麹造りは、すべて手作業で、繁殖が活発になるよう温室で行われる

創業時から変わらない味。それを実現するには、日本酒度と酸度のバランスの見極めが重要だ。麹造りをおろそかにしたり、発酵の工程が1日ずれるだけで、味は崩れてしまう。杜氏の経験を頼りに、もろみを絞る最適なタイミングを探る。徹底した温度管理が求められ、夜中でも2時間おきに確認しなければならない。

成子嘉一さん

成子嘉一さん

近藤酒造株式会社 杜氏

成子さんが同社で酒を仕込むのは、10月から5月。新米が収穫される秋から春頃まで集中的に造り、1年分の在庫を確保する。

「発酵具合を見極めるのは難しく、苦悩の連続です」。それでも、おいしいと言ってもらえたときの嬉しさは格別だと笑う。

杜氏変更の転機が酒造りへの意識を高める

近藤酒造の創業は1875年。新潟県の酒造からのれん分けされ、気候の適したこの地で開業した。手作業を重んじる丁寧な酒造りは、当時から連綿と受け継がれてきた誇りであり、同社の酒が地域で愛されてきた理由でもある。

しかし約30年前、それまで順調に推移してきた売り上げに陰りが見え始める。「ちょうど先代が事業を継承したばかりの頃です。消費者の日本酒離れから、業界全体が右肩下がりの時期でした」。経営の岐路に立たされた同社は、抜本的に酒造りの方向性を変える決断をした。

まずは杜氏を越後杜氏から、南部杜氏に変更。赤字覚悟でより高品質な酒米を仕入れ、麹菌も見直した。変えなかったのは、銘柄の由来となった水と、辛口、淡麗への思い。創業以来の味を守りつつ、さらなるおいしさを求め、再出発を図ったのだ。

主原料である酒米を変えたうえで、従来の味の方向性を再現し、向上させるのは簡単ではない。米の蒸し具合から水、麹菌の量を調整し、試行錯誤を繰り返した。

「当時の業界は、薄利多売の風潮で、高品質化はひとつの賭けでした」。信念と熱意で造りあげた酒は市場で評価を受け、売り上げは回復。さらに1992年、赤城山が全国新酒鑑評会で金賞を受賞する快挙を成し遂げた。

近藤さんへ事業継承された今も、品質向上に余念はない。毎年のように新たな酒米を取り入れ、新製品開発に勤しむ。2011年にはスパークリング、翌年にはすべて群馬県内の素材を使った、赤城山舞風の販売を開始した。

純米スパークリング・Shalala
みどり市産の適合米「舞風」を使用した純米吟醸

特に、赤城山特別大吟醸は自慢の逸品だ。酒造好適米の代表と言われる山田錦のなかでも、さらに良質とされる兵庫県北西部で生産した特A山田錦を使用。全国新酒鑑評会で2003年から4年連続金賞を受賞するなど、数々の賞を獲得している。

数々の賞を獲得している赤城山特別大吟醸

2017年、赤城山特別大吟醸は3年振りに全国新酒鑑評会の金賞をまたも受賞。成子さんは喜びつつも、既に前を見据える。「今年も、その先も、ずっと賞を取り続けたい」と、力を込めて頷いた。

我がまちの蔵元・近藤酒造が、困難に直面しても守り抜いた辛口、淡麗の味わい。家族や親しい人々が集まる季節に、味わってみてはどうだろうか。

現在、近藤酒造で働く製造スタッフは7人。杜氏を中心とした、抜群のチームワークが自慢だと笑う

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中広

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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