群馬・桐生市 市内で唯一のスケートセンターが歩んだ55年

群馬・桐生市 市内で唯一のスケートセンターが歩んだ55年

2019/12/02

昭和39(1964)年のオープンから、冬の遊び場として地域の人々に愛され続けている、桐生スケートセンター。来場者に楽しんでもらうための創意工夫について、施設担当者の大川昇さんに話を聞いた。

中広

中広

子どもが楽しめる講習でにぎわいを創出

例年10月、冬の足音が近づく季節に、桐生スケートセンターは営業を開始する。1964年のオープン以来、東毛地区で唯一のスケート場として、市民をはじめ多くの人に親しまれてきた。毎年の平均来場者数は2万人ほど。近年は全国的なフィギュアスケートの流行も手伝い、さらに増加傾向だという。

「当初は、いろいろなスポーツを楽しめるレジャー施設でした」と話すのは、施設担当者の大川昇さん。かつては民間企業が運営する、広大な屋外を利用した多目的運動施設だったという。プールも併設し、季節を問わず多くの人でにぎわっていた。しかし、ほどなくして利用者は減少し、ほとんどのスポーツ施設の営業を停止。1972年からは桐生市の管理に変わった。夏期限定で開業していたプールも、2004年を最後に閉鎖。現在はスケート場だけが営業を続けている。

桐生スケートセンターの開業時期は、10月下旬から3月まで。シーズン中は、家族連れや子どもたちが次々と訪れ、活気にあふれている。

大川昇さん

大川昇さん

桐生スケートセンター 係長

スケート靴のサイズは15〜30センチメートルまでを常備。けが防止のため、リンク内は手袋の着用が必須

たくさんの人に利用してもらえるよう、オープン当初から毎年開催しているのが、初心者子どもスケート教室だ。競技経験のない小学生を対象に、20人前後を募集。桐生市内で活動するスケートクラブから講師を招き、週1回4度の講習を行う。格安で受講できるのも魅力だ。

「スケートに興味を持つきっかけとなり、滑れるようになれば、講習後もまた来てもらえます」と、大川さんは笑う。

常駐するスタッフは5人。シーズン以外は、市のスポーツ課の一員として、別施設を管理している。初心者子どもスケート教室が開かれる際は、指導者としても参加する

2008年からは、初心者こどもアイスホッケー教室も開催。同センターの職員で、国民体育大会にも参加する地元選手が講師を務め、基本の滑り方から本格的な技術までを学べると好評だ。異なる角度からもスケートの魅力を知ってほしかったと、大川さんは狙いを話す。10回目となる今シーズンは、上限としていた20人を超える24人が参加。基本を学んだ後に行われるゲーム形式の講習は、特に人気が高いそうだ。

約10年前から実施している初心者こどもアイスホッケー教室。まずは氷上の動きに慣れるため、3チームに分かれて速さを競い合うリレーや、キャッチボールなど、基礎メニューを中心に行う

同センターの取り組みは、毎年たくさんの子どもの笑顔を生み出し、氷上ににぎわいを作り出している。

来場者の安全を確保する徹底した氷の管理

より多くの人に楽しんでもらいたいからこそ、事故の防止や、リンクのコンディション維持には特に気を配っている。

室温や湿度の高い日は、天井にできた結露が滴となってリンクに落ち、氷上に小さな穴やこぶを作ってしまう。いずれも、放置すると転倒を引き起こす事故のもとだ。同センターでは、1時間ごとに細かく温度・湿度をチェックし、少しでも異変を感じたら、営業時間内であってもすぐに製氷車を稼働させて、表面を平らに整えている。

繁忙期の1〜2月の間、週末の平均利用者数は、1日300人を超える。嬉しい悲鳴ではあるものの、人が集まるほど、室内温度は上がっていく。そのため、氷の管理が大変になるのだと、大川さんは苦笑する。

室温が上昇したときは、すぐに製氷車を稼働させ、リンクの氷を整備する。車両後部に設置された大きな刃で、表面を平らに削っていく

氷を作るのもひと苦労だ。リンクの製氷は、10月中旬から開始。底にあるパイプにマイナス15度まで冷やした塩水を流し込み、その上からさらに水をまいて凍らせ、薄い氷の膜を作る。これを繰り返して層のようにしていき、5日間をかけて、少しずつ厚くしていくのだ。厚さが20センチメートルを超える頃には、大勢の人を乗せてもびくともしない氷となる。この期間中は、散水と氷結が絶えず行われるため、スタッフは泊まり込みで作業しなければならない。「すべては、お客様の笑顔のためだと思えば頑張れます」。従業員の尽力によって、施設の安全性が保たれているのだ。

リンク上で行うスポーツのために引かれたラインは、製氷と共に毎年張り替えられる。少しのずれも許されない、繊細な作業だ

過去には製氷がうまくいかない年もあった。2017年、冷凍設備が故障し、営業開始の10月下旬に間に合わなかった。修繕に追われ、ずれ込んだ開業日は12月中旬。2カ月近くの遅れは、大幅な売り上げ減少を意味する。集客が減り、消えていった他のスポーツ施設も頭をよぎった。しかし、安全性が第一だと、ぎりぎりまで整備に費やした。

開業後、例年と変わらないリンク上の活気を見て、大川さんは安心したという。「地元の方々に愛されていると、改めて実感できました」。これからも、老若男女が集まる施設であり続けたいと、決意を込めて頷いた。

オープンから55年。これからも、桐生スケートセンターは人々を迎えながら歴史を重ねていく。この冬もたくさんの笑顔が、リンクの上で弾けるだろう。 

面積1,128平方メートル、一周100メートルという大きなリンク。一般利用客がいなくなる平日18時以降は、地域のスケートチームも練習に訪れる

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中広

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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