北陸の“リトルパキスタン”で食べる本場カレーがうまい!

特集

おいしくてディープな富山へ行こう!

2016/08/20

北陸の“リトルパキスタン”で食べる本場カレーがうまい!

富山県の西部に位置する人口10万人に満たない射水市。この北陸の小さな町には、多くのパキスタン移民が生活し、さながら“リトルパキスタン”とも呼ぶべきコミュニティが形成されている。そこでは美味しい本場のカレーが食せるとか。これはもう行くしかあるまい。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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現地で暮らすパキスタン人にいろいろと話をきいてみよう

富山県射水市を通る国道8号線沿いには、無数の中古車販売店が軒を連ねる。業者の多くはパキスタン出身者で、一帯は全国でも有数のムスリムコミュニティを形成している。

パキスタンといえばカレーだ。

パキスタンは暑い国なので、“のどごし”のよいスープタイプのさらさらカレーがメイン。また国民の約97%がイスラム教徒のため、具材の肉は鶏と羊がほとんどだとか

そこで今回、カレーライターの小山田滝音が、北陸の“リトルパキスタン”で暮らす人々を取材、本場のカレーを食べながら交流を深めてみた。

こちらが取材を担当するライター小山田。基本、一日一食と少食ながらも、「カレーだけは別腹」と語るほどカレーを愛してやまないアラサー男子だ

地域一老舗のパキスタンカレー屋のオーナーがパキスタン人じゃない?

まずは地元でうまいと評判のお店にやってきた。なお、この地域では、十数軒のカレー店が営業しており、ランチの値段は1,000円前後で、ディナーだと1,000円〜1,500円が相場

最初に訪れたのは、富山の“リトルパキスタン”で最初にできたというカレー店「カシミール」。パキスタンの有名レストラン出身のシェフが手掛けており、豚肉と酒を使わない本格ハラール料理を味わえるという。

こちらがオーナーのデワプリカ・グナラタナさん(55歳)。

哲学的な顔立ちでお店の黎明期を語るグナラタナさん。オープン当時は、本店からネパール人のコックを呼んでカレーを提供していたという。って、呼び寄せたのネパール人なのかい!

グナラタナさんは、1996年に初来日。中古車販売店で働いた後に知人の紹介から同店のオーナーに就任したという。

小山田
小山田
こちら、この地域で最初にできたカレー屋さんって伺ってきたんですが、その当時の様子について教えてください。
グナラタナさん
グナラタナさん
ここはもともとカレー屋ではなく中古車販売店だったんだよ。当時、すでにこのあたりには多くのパキスタン労働者がいたんだけど、ハラールフード(イスラム教の戒律に沿った食べ物)しか食べられない彼らはいつも食べ物に困っていたんだよね。一生懸命働いてるのに食べるものがめちゃくちゃ少ない……もう、同胞を助けないとって思って、本店から何人かシェフを呼び出して、本格カレーの配達サービスを始めたんだ。
この地でパキスタン人が増えれば増えるほど食べ物の問題がより深刻になっていったため、配達サービスを初めたと語るグナラタナさん(右)
グナラタナさん
グナラタナさん
もともとウチのカレーはパキスタン人向けの、辛いものだったんだけど、今では日本人のお客さんも増えて、少しマイルドにしているんだよ。さあ食べてごらん。
チキンとホウレンソウがおすすめメニューだとか。ちなみにいずれもパキスタンのカレーというより「日本のカレー」に近い
小山田
小山田
あ、ホントだ! ほどよい甘さでとても美味しいです。これはマトンですね。うーん、どれも優しい辛さで、何杯でも食べてしまいそうです。
こちらのお店では、「辛いものを」「本場のやつを」などと言えば、“本物のパキスタンカレー”が出てくる。このルール、この地域の他のお店でも通用するとか
グナラタナさん
グナラタナさん
そうそう、うちはパキスタンから取り寄せた食材の販売もやっているんだよ。
ハラールフードを家でも食べたいというパキスタン人が食材を求めて購入していくそう
現地から取り寄せた香辛料も豊富に取り揃えている。「北陸土産に香辛料」というのも悪くない
小山田
小山田
ちょっとしたスーパーですね。こういう場所があるとパキスタンの方もきっと嬉しいだろうなぁ。グナラタナさんは、仕事のない日はどんなことをして過ごされてますか?
グナラタナさん
グナラタナさん
週末は、仲間と海でBBQをやったり、クリケットをやったりと、まぁいろいろと。
小山田
小山田
クリケットってまたマニアックな……って思いましたけど、クリケットはパキスタンの国民的スポーツなんですよね。さすがパキスタン人!
グナラタナさん
グナラタナさん
まぁ、私はパキスタンではなく、スリランカ出身ですけどね。
小山田
小山田
えっ
最後の最後でネタをブッ込んできた、オーナーのグナラタナさん。スリランカ人が富山でパキスタン料理店のオーナーをしているということのようだ……ややこしい

パキスタン人が経営する中古車販売店にも行ってみた

射水市内にある中古車販売店の数はなんと120軒以上。1980年代後半にこの地に移り住んだパキスタン人がロシア人向けに中古車販売を開始したのがすべての始まりという。

その中のひとつ、中古車販売店「エスケートレーディング」を訪ねてみた。

ちなみに、リトルパキスタン周辺にある中古車販売店のほとんどがプレハブか、閉店したコンビニ跡を改装したものだった

同店を経営するのは16年前に来日し、4年前に日本国籍を取得した山田イジャズさん(40歳)。

アポ無し突撃取材だったにもかかわらず、快く応じてくれた山田さん
小山田
小山田
富山に“リトルパキスタン”があるなんて知りませんでした。見知らぬ土地にきていろいろ大変なことはあったと思うのですが、山田さんの場合はいかがでしたか?
山田さん
山田さん
うーん、今はもう慣れたけど、やっぱり日本に来たてのころは大変だったね。
一番は食べ物のこと。日本食の中には食べられないものもあったりするから。
小山田
小山田
イスラム教は戒律が厳しいですもんね。
日本に帰化する際、“書きやすくてメジャー”という理由から今の名字を選んだと語る山田さん
山田さん
山田さん
でも、今では日本の料理はなんでも食べられるようになったよ。特に好きなのはお寿司。食事に限らず日本のものは大好き! 相撲もAKBも最高だよね!
小山田
小山田
すっごい順応しまくってますね。
山田さん
山田さん
今は日本人の妻と子ども2人の4人で幸せに暮らしていて、まったく不自由はしてないね。日本、特に富山は静かで安全な場所。子どもたちも日本の小学校に普通に通っているし、彼らがこの地で今後も暮らしていけたら僕は幸せだよ。
小山田
小山田
日本は平和ですからね……。礼拝とかは行かないんですか?
山田さん
山田さん
行くよ。この街にはモスクもあるんだ。このあたりのパキスタン人は毎日決まった時間にそこでお祈りをするんだよね。
こちらがその「富山モスク」。なんとコンビニ跡地に建てられている

山田さんによると、「仕事が忙しくてモスクに行かなくなる人もいる」とのこと。日本で生活していると、信仰心より仕事を優先する(社畜化する)人が出てくるってこと? ……大変興味深い話ではある。

いずれにせよ、この地に住むパキスタン出身者は、山田さんのように日本の生活に馴染んでいる方が多いと聞いて安心した小山田であった。

リオ五輪では女子バレーを応援したいと語っていた山田さん(右)。最後は小山田と肩を組んで「一期一会」を噛み締めあった。山田さん、取材のご協力ありがとうございました!

北陸・富山の“リトルパキスタン”で美味しいカレーも食べて、さらに現地で暮らす人々と交流し、大満足の小山田。富山でパキスタン体験をしたい方は是非、車で国道8号線を走ってみてはどうだろうか。

取材・文=小山田滝音、撮影=山下裕司

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Yahoo!ライフマガジン編集部

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