愛知・みよし市 市民が集う、地域の文化財「石川家住宅」

愛知・みよし市 市民が集う、地域の文化財「石川家住宅」

2019/06/08

日本の伝統的な農家の造りが残る、石川家住宅。蔵や井戸に代表される建築様式には、明治時代の名残が見えます。地域の有力者のかつての暮らしぶりがうかがい知れる石川家住宅。現在までどのように活用されてきたのでしょうか。

中広

中広

100年以上まちを見守る市指定有形文化財

石川家住宅は、明治43年、三好村初代村長であった石川愛治郎氏が次男の正雄氏のために建てた分家住宅です。「建物は明治時代の一般的な農家の造りで、2階は養蚕用の部屋でした。もっとも、石川家に農具はなく、養蚕もしていなかったようです」と話すのは、石川家住宅を管理する、みよし市立歴史民俗資料館のスタッフ。石川家の農地は小作人が耕作していたとされ、それだけ地位のある農家だったといわれています。

正雄氏は仕事の都合で名古屋を拠点にしていたため、住宅は愛治郎氏が昭和44年に亡くなるまで隠居屋として使っていました。

正雄氏の長男、恒夫氏は慶応義塾大学を卒業。東海銀行の取締役、千代田火災海上保険株式会社副社長を経て、昭和53年、愛知県に戻りました。その際、台所などを改修しましたが、外観は可能な限り建築時のまま手を加えませんでした。恒夫氏は昭和54年に中京テレビ放送株式会社の副社長に就任。後に社長、会長に就き、活躍します。晩年は『三好町誌』編さん委員会の会長を務めるなど、平成23年に他界するまで地域に貢献しました。

恒夫氏の強い希望で住宅は保存。平成23年8月19日にみよし市指定有形文化財(建造物)となり、同年11月、市へ寄贈されます。これ以降みよし市が管理運営し、市内唯一の常時公開する文化財住宅となりました。

石川家住宅。1階は3~8畳の部屋が6間。座敷は10畳2間もの広さがあります

明治の農家の暮らしを体感 現代との違いを知る

石川家住宅でまず目に入るのは、大きな長屋門。「東側には居室があり、明治時代には使用人が住んでいたようです。私が子どもの頃は若い教員の宿舎として使われていました」とスタッフ。長屋門の西側にある井戸場では、洗濯はもちろん、台所から近い位置にあるため、食事の支度もしていたと考えられます。現在も水はくめますが、昭和の改装で水道が引かれました。

長屋門を抜けて左手の東蔵では年貢米を保管していました。多い時は500俵も積まれていたようです。戦後の農地改革後は、恒夫氏の書庫として5万冊以上を所蔵。現在は、みよし市立中央図書館に寄贈され、『石川文庫』と呼ばれています。

東蔵は、現在講座の教室として活用されています
現在は非公開の机場。本の束や雑貨は、寄贈された当時のまま残っています

主屋は勝手や居間、台所などからなり、土間を上がって奥に見える仏間には阿弥陀如来立像が安置されています。絵ではなく仏像が置かれている点から、石川家は阿弥陀寺にとって重要な檀家であったとわかります。
 

仏間横の廊下を進んだ先には、10畳2間の座敷が広がります。「客人をもてなしたり、冠婚葬祭に使われいたのでしょう」と話すように、四季折々の庭園の景色を堪能できる贅沢な空間です。

庭園が見えるよう、座敷はガラス戸にしたり戸を外したり開放的にしています

他にも、簡単に空気の入れ替えや調光ができる無双窓や、階段下の収納用箱階段などは、現代では見る機会が少ない造りです。住宅の見どころは、依頼をすればスタッフの説明を受けられます。スタッフは「高齢の方は懐かしそうに見学なさいます。小学生には畳や障子すら珍しいようで、興味深く見てくれます」とほほ笑みます。

スライドさせて空気や光を調節できる無双窓
石川家住宅のさまざまなところに設置されています
主屋の台所に残る箱階段。階段だんすとも呼ばれます

体験やイベントを開催し市民が集う場に

昔からみよし市に住むスタッフは「石川家住宅は昔から地域に開放されており、子どもの遊び場でした。家主の方によくお菓子をいただいたものです」と目を細めます。今も雰囲気は変わらず、市民に開かれた住宅を目指しています。

建物を利用した体験講座を毎月開催。機織り機や糸車を使ったり、工作をしたり、誰でも参加できるイベントが充実しています。機織り体験では、綿の実を摘んで打つところから始まり、糸を紡いで機織り機でコースターを制作。講座は3回にわたり、特別講師が指導しています。その他、琴の演奏や布草履づくりなども歴史を感じられると人気です。

蓮の花托とちりめん玉で、和室に合う飾りをつくる講座もあります

東蔵で開く「お蔵の中で唱歌を歌おう」は、当日参加が可能。レコードやCDで童謡、唱歌を流し、みんなで歌います。地域の交流の場として活用されています。

「折り紙の講座は、市民が折り方を教えあう場です。石川家住宅は体験内容と場所の提供に留まり、市民主体で利用していただければと考えています」。座敷は、演奏会や発表会、撮影会などにも利用されています。夏休みには子どもたちが庭園の池でザリガニ釣りを楽しんでいる様子も見られます。

「明治後期の三好村の名残がある、歴史を感じる家です。体験をきっかけに、気軽に足を運んでいただけるとうれしいです」。100年以上みよしで親しまれてきた石川家住宅。今も地域に愛される場として、歴史を重ねています。

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中広

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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