「ただ塩を売るのではなく作り手の物語も売る」ある塩屋さんの話

2019/06/13

「ただ塩を売るのではなく作り手の物語も売る」ある塩屋さんの話

一番身近な調味料「塩」。どれを使ってもそんなに変わらないと思っていませんか。いえいえ、塩の数だけ個性があるんです。味見をしてから塩を購入できる、いま注目の戸越銀座の塩専門店にお邪魔しました。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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塩を専門に販売するちょっと変わったお店のお話です

「塩」の看板が目印。戸越銀座商店街の西端にある「ソルコ」は塩の専門店です

戸越銀座にある塩専門店「solco(ソルコ)」は、都内でも珍しい塩の専門店です。こちらでは日本はもちろん、世界中の色とりどりの塩が40種類近く販売されています。

特製の試験管型容器に入って陳列されるお塩たち。これらはすべて違う塩なんです。どんな味がするのかしら

塩とはなんでしょう。海水を煮出したり、あるいは岩塩から作られ、私たちの食生活に欠かせない調味料の一つであることは誰もが知っています。しかし、「塩」によって含まれるミネラルの量は違いますし、見た目も、食感も、味わいも、まったく異なり、同じように見える「海の塩」でもまったく個性が違うことはあまり知られていません。

塩の前には説明書が用意され、それぞれの塩の持つ特徴が記されています

はるか昔、人類は海から生まれました。それゆえ、私たちの体は常に様々なミネラルを必要としていますし、人間は自分の体に足りていないものをおいしいと感じるようにできているのだとか。つまり、塩の好みも人それぞれ。ソルコでは塩を実際に味見した上で、選ぶことができるのです。

お客さんは説明書きを真剣に読みながら、五感をフルに働かせ「マイ・ベスト・ソルト」を探します

店内にはおにぎり(白米・玄米)、ジェラートなどのイート・インが可能です。実際に料理に塩をかけて試食をすることで、米に合う塩、料理に合う塩を食べ比べすることができるのです。他の食材と出会うことで、塩の個性がさらに如実になるため、試食した人からは驚きの声が上がるとか。塩によって味わいが全然違うんです。

福島県産の米を使った「塩結び(えんむすび)」(白米・玄米ともに250円)

塩の試食の際は、カウンターに並んだ塩を左端から使うことを推奨されます。塩はナンバリングされ、左端から日本の塩が並びます。001番から並んでいるので気になったものから食べ比べていきましょう。「日本のお米にはやはり日本のお塩が合う」と感じる人が多いようですが、「いや、私は外国産の岩塩の方が」という方もいるそうで、味の好みはそれぞれ違うということがよくわかります。

最初にいただいた「ローソク島の藻塩(001)」は焦げた風味が特徴。カルシウムとマグネシウムを豊富に含んでいて食材の旨みを上手に引き出します

店を開いたきっかけと、塩に対する熱い想い

オーナーの田中園子さんは理系出身で大学院卒業後は製薬開発職に就いていましたが、2014年に一念発起してソルコをオープンしました

もともと一般企業に製薬開発職として勤めていた田中さんが都内でも珍しい塩の専門店をオープンしたのは2014年のこと。塩に対する熱い想いを持つようになったのは、2013年に訪れた東北地方で出会った「あるお塩」がきっかけでした。

オーナー・田中園子さん
オーナー・田中園子さん
「旅行で訪れた宮城県石巻市で出会ったのが『伊達の旨塩』でした。旨味がたっぷり含まれていて、あまりのおいしさにビックリしたんです。それまで醤油の方に興味があったんですが、それ以来、塩のことばかり考えるようになってしまって。塩の勉強を続けて、1年半後にはソルコをオープンしました」
田中さんがお塩に開眼するきっかけとなった「伊達の旨塩(008)」も置いてあります

知れば知るほど、塩の奥深さに惹かれていったという田中さん。肉に合う塩、魚に合う塩と、塩の持つ豊かな個性に夢中になりました。さらに、作り手と顔を合わせることで、「この人たちの想いも一緒に届けたい」と思うようになりました。

オーナー・田中園子さん
オーナー・田中園子さん
「塩づくりはいわゆる<3K仕事>。夏場は釜で煮る作業はとにかく過酷ですし、大量生産もできません。だからこそ、塩を作った人たちの思いを感じながら食べてほしいんです。産地や作り手によって味はぜんぜん違うことを知ってほしいんです」
「近年は減塩が叫ばれていますが、大切なのは身体にあった塩をきちんと選んで、適量を摂ることです」

利用客の平均滞在時間は5分〜15分。説明書きにある作り手のプロフィールを読みながら、いくつもの塩を味見していると、だんだんと味覚が鋭敏になっていくのがわかります。このように、自分の体に入れるものと真剣に向き合うことで、食に対しての意識も高まり、食生活がもっと豊かになると田中さんは考えています。

オーナー・田中園子さん
オーナー・田中園子さん
「たとえば食卓にお塩を2〜3本揃えて、肉やサラダにかける塩をその日の気分で選ぶ。それだけでいつもの食事が彩り豊かになり会話も弾みます。塩の選択肢が増えるだけでこんなにも食が豊かになるのかと驚きます」

「おすすめはのお塩はありますかと聞かれても、できるだけ推薦しないようにしています」と笑う田中さん。実際に自分の舌で試して、マイ・ベスト・ソルトを探してほしいからです。

自分の感性に合った塩を探す時間はとても楽しいものです

人間は塩がなくては生きていけません。どうせなら、身体に合ったおいしいお塩をいただきたいですよね。今度のお休みはあなたの舌を頼りに、マイ・ベスト・ソルトを探しに戸越銀座まで出かけてはいかがでしょう。週末は混雑しますが、平日は比較的空いているので狙い目ですよ。

取材・文/キンマサタカ(パンダ舎)

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