福井県特別栽培農産物の認定を受けた川島ごぼうを使ったスイーツ

福井県特別栽培農産物の認定を受けた川島ごぼうを使ったスイーツ

2019/12/01

昭和初期から、地元農家が栽培してきた川島ごぼう。他産地のゴボウより水分を多く含み、やわらかいのが特徴で、3年前から「川島ごぼう研究会」による商業化が進んでいる。無農薬、有機肥料にこだわり、福井県特別栽培農産物の認定を受けた川島ごぼうから、地元の名を広める新たなスイーツが誕生した。

中広

中広

公民館での実習をきっかけに川島ごぼうを特産化

鯖江市川島町で、昭和初期から作られてきた川島ごぼう。4月に種をまいて秋ごろに収穫した後、地中に埋めて、春まで保存する。

使う種は「滝の川」という一般的な品種だが、川島ごぼうは水分豊富で食物繊維が少ない太くてやわらかく、歯切れが良い特徴を持つ。そうした性質は、鞍谷川流域である川島町の土壌に由来する。砂と粘土が適度に混ざった保水性の高い土は、ゴボウをみずみずしく育てるという。

しかし、これまでは自家用の栽培が多く、そのおいしさはあまり知られていなかった。収穫では、重く粘りのある土を約1メートル掘り起こすため、生産者が減少傾向にあったのも理由だ。

転機となったのは、2015年。北中山小学校の6年生を対象に、北中山公民館で毎年開かれている「和食テーブルマナー実習」がきっかけだった。地元でとれた野菜を使った「報恩講料理」を食べる実習で、川島ごぼうも提供された。

実習で好評を得ると、特産化の機運が高まった。翌年2月に地元生産者13人が集まって「川島ごぼう研究会」を結成。出荷のために品質を安定させようと、無農薬と有機肥料にこだわって川島ごぼうの栽培に注力した。そのかいあって、川島ごぼうは2016年に福井県特別栽培農産物の認定を受けた。

こうして生まれた新たな特産物をもっと知ってもらいたいと、開発されたスイーツがある。鯖江市柳町に店を構える「ベルジェ・ダルカディ弁慶堂」の「川島ごぼうショコラ」だ。

ゴボウ特有の風味を残した新たなスイーツを開発

「ベルジェ・ダルカディ弁慶堂」の洋菓子事業部責任者である牛若光三(こうぞう)さんは、2017年に北中山小学校で実施された食育の授業で講師を務めた。甘く煮た川島ごぼうを混ぜ込んだアイスクリームを製作。繊維が少ない川島ごぼうは、一般のゴボウよりも加工しやすいと気づいた。

牛若光三さん

牛若光三さん

ベルジェ・ダルカディ弁慶堂 洋菓子事業部責任者

川島ごぼう。一般的なものよりも太く、やわらかいので加工がしやすい

努力を続ける生産者の力になりたいと、本格的に川島ごぼうを使ったスイーツの開発に取り組んだ。課題となったのは、ゴボウの渋み。舌に残る後味がスイーツには合わなかった。「ただ食材を使うだけでは、地産地消の意味がない。農産物の特色を出さないと、『地元スイーツ』とはいえないんです」と牛若さん。川島ごぼうの風味や苦みを残しつつ、後味を改善するために試作を重ねた。

栄養を失わないように、アク抜きは最低限に抑えた。8センチほどに切って下茹でした川島ごぼうを、カラメルと砂糖、オレンジの皮、バニラビーンズを加えた湯で煮る。一晩寝かせてから糖度を上げてまた煮る、という作業を1週間繰り返した。

甘くなった川島ごぼうと合わせたのは、少し苦めのチョコレート。ゴボウ独特の歯ごたえと風味を残した「川島ごぼうショコラ」が、2018年に完成した。甘く煮た川島ごぼうを刻んで入れたパウンドケーキとチョコレートケーキも製作している。

「川島ごぼうショコラ」。チョコレートのほどよい苦みと、ゴボウの風味が合う一品だ
時間のかかる作業は閉店後にまとめて行う。大量のゴボウにチョコレートをまとわせる
川島ごぼうを使ったパウンドケーキとチョコレートケーキ。甘く煮た川島ごぼうを粗めに切り、食感と風味を出している

商品のブランド化で川島ごぼうの名を世界に広める

牛若さんのスイーツは、世界に認められている。個性的なカステラや、酸味が際立ったレモンケーキは海外のシェフにも絶賛された。今後は地元素材を使ったスイーツで、鯖江市の知名度を高めたいと話す。

「『川島ごぼうショコラ』では、地元野菜の個性を表現できた」と笑顔で語る牛若さんは、さらに先を見据えている。「一つの商品を、本当に良いものにするには5年以上かかる。さらに精度を上げてブランド化したい」。「川島ごぼうショコラ」の認知度を高め、材料である川島ごぼうへの注目を集めたいという考えだ。

現在の課題は、生産量の少なさにある。「川島ごぼう研究会」は、機械の導入や栽培方法の改善などで、大量生産を目指している。しかし。いまだ需要に対して生産量が追いついていない。無理な生産で品質が落ちるのを避けるためだ。

「川島ごぼうショコラ」も、なかなか販売数が確保できないため、予約は受け付けない予定だ。「まずはたくさんの人に味わってもらい、地元野菜の魅力を知ってもらいたい」と話す牛若さんは、今後の生産量向上に期待を寄せている。

生産者とパティシエの努力が集結したスイーツを、一度味わってみては。

川島ごぼう研究会

たゆまぬ努力で川島ごぼうの品質を上げる

毎年、ブランド化を目指したアンケートを実施している「川島ごぼう研究会」。すべてを手作業で行った1年目は、メンバーの負担が大きくなってしまったため、2年目からは重機を導入した。堀り出し作業を簡単にするため、底を抜いた肥料の袋に土を詰めたものや、積み上げた土に壁をつける高床の栽培も試験的に実施。袋や壁を外すだけで楽に収穫できる。3年目は種まき前に畑を1メートルほど重機で掘り返し、ゴボウの収穫率を上げた。そのかいあって、平成30年度たんなん農産物共進会で、鯖江市長賞を受賞した。

川島ごぼう収穫の様子。深く掘り起こすため、人力ではかなりの労力がかかる
高床栽培の一つ。雨が少ないと、水分調節に苦労する

連作障害を避けるため、同じ畑を使えるのは5年に1度程度。少しでも良い環境で栽培するため、安定して栽培用の畑を確保する方法も検討中だ。2019年は、肥料の袋やプランターを利用した畑での連作を試し、収穫物にどのような影響が出るかを検証する予定だという。

川島ごぼうの味を知ってもらうため、6~7品を提供する「食味会」も実施。毎年約70人が舌鼓を打つ。より良い品質の川島ごぼうを多く出荷し、特産品として知名度を高めるため、「川島ごぼう研究会」は試行錯誤を続ける。

右から川島ごぼう研究会会長の山内進さん、北中山公民館館長の堀正朗さん、川島ごぼう研究会副会長の齊藤久嘉さん。これまで川島ごぼうを使ったたくさんの料理を食べてきたが、スイーツは初だという

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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