今、京都で立ち飲みが面白いワケ。京都の人気店の店主が教えます

今、京都で立ち飲みが面白いワケ。京都の人気店の店主が教えます

2019/06/20

京都といえば京料理。もちろん割烹もいいが、今度の京都来訪に「立ち飲み屋」はどうだろう。一見さんや女性でも入りやすい店が増え、とにかく値段も手頃。京都の酒場の雰囲気を気軽に体感できるのもグッドだ。今回は立ち飲み屋の店主と酒場好きの料理人に、京都の立ち飲みの面白さを語ってもらった。

Yahoo!ライフマガジン編集部

Yahoo!ライフマガジン編集部

\この2人にお話を伺いました!/

西谷将嗣さん

西谷将嗣さん

「レボリューションブックス」店主

松本宏之さん

松本宏之さん

「そば 酒 まつもと」店主

\立ち飲み談義、本日の品書き!/
1.京都で増える個性豊かな立ち飲み屋
2.立ち飲み屋が少なかった京都の街
3.京都市郊外に立ち飲みの新星出現
4.時代を超え、良い酒場がもつ空気感

四条木屋町南側の細路地の建物2階に「レボリューションブックス」はある

京都の食の代表格といえば、京料理。しかし街中にはイタリアンにフレンチ、居酒屋にカフェなどさまざまなお店があり、もちろんそこは、日本の他の都市と変わらない。「京都人のハレの日の食事は、中華料理」なんていう、ローカルの意見も。また一年を通じて、さまざまな国から観光客が訪れることもあり、とにかく食の選択肢が多い、それが京都なのだ。

建物1階にある「レボリューションブックス」の立て看板。木屋町通りから高瀬川を西に渡ったこのエリアの細路地にも、割烹、おばんざい、串揚げ屋にビストロカフェなど、さまざまなお店が点在する

日本人の京都観光ブーム、またインバウンド需要の拡大もあって、飲食店の開店ラッシュに沸く今日の京都。そのなかで目を引く業態のひとつが「立ち飲み」だ。以前は地元の中高年男性、おじさん向けの店がほとんどだったが、今では若い女性、海外からの観光客が昼から一杯やっていることも。一見の客でも入りやすい店が増えている。また提供される料理やお酒、空間も、よりバラエティに富んでいる。

\本日の対談場所はこちら/

「レボリューションブックス」の店内。定休日の月曜以外は、13時オープン(不定休あり)、昼から飲める場所だ。「最近は外国人観光客の来店も増えましたね」と西谷さん

一杯からでも、手頃な値段で気軽に楽しめるのが、立ち飲みの魅力。加えて観光客にすれば、京都に住む人の素顔が垣間見える場所でもある。ぜひ立ち寄ってほしいが、常連さんがカウンターを囲んでいる場合は、入店しづらいこともあるだろう。

「レボリューションブックス」店主の西谷将嗣さん。元々バンドでドラム担当だったこともあり、店内にはよくロックがかかっている。「一見のお客さんに、音楽について聞かれることもありますよ」という

そこで京都の立ち飲み屋の変遷や、楽しみ方を知っておけば、きっと臆することなくカウンターで酔えるはず。京都・木屋町で酒場と本屋が共存するユニークな立ち飲み屋「レボリューションブックス」を営む西谷将嗣さんと、立ち飲みに限らず、酒場をこよなく愛する「そば 酒 まつもと」店主の松本宏之さん。多くの立ち飲み屋に通ってきた2人に、京都の立ち飲み事情と、足を運ぶべき店を聞いた。

「そば 酒 まつもと」店主の松本宏之さん。本職はそば打ちだが、無類の酒好きで酒場全般に詳しい。立ち飲み屋にもよく訪れ、「レボシューリョンブックス」にも足繁く通う

1.京都で増える個性豊かな立ち飲み屋

今回、2人の対談は「レボシューリョンブックス」で行われた。白い階段と木枠のガラス戸が、入りやすさを醸し出している
松本さん
松本さん
「僕は20代の頃から、京都の立ち飲み屋に通っています。けれど、最近はきれいなお店が増えましたね。昔は大衆酒場的なムードの立ち飲み屋ばかりだった。西谷さんの『レボシューリョンブックス』も、初めてのお客さんから入りやすい雰囲気って言われませんか?」
「レボシューリョンブックス」は、その店名が示すように書店だ。食関連の本を購入することが可能。そこに立ち飲み屋も共存している
西谷さん
西谷さん
「それはどうだろう。『入りやすい』って思ってもらえたら、嬉しいけれど。うちはここで本屋と飲食店を始めようと思って、今の設計になったんです。2つの商売を並存させるのに、最適なレイアウトを目指しました。棚に本を並べているので、たばこも外の喫煙スペースで吸ってもらっています」
カウンターの横にも、本が陳列されている。本を購入するだけでも訪問できるので、立ち飲み初心者や女性でも入りやすい
松本さん
松本さん
「六角富小路にある『すいば』さんなんかも、全面禁煙ですよね。あそこも明るい雰囲気で清潔感があり、一見のお客さんも入りやすい。おまけに価格も安いから、いつも女性客で賑わっていますよね」
六角富小路にある『すいば』。他にも支店があり、京都市内で5店舗を構える
西谷さん
西谷さん
スタッフも女性が多いし、京都では新しいタイプの立ち飲み屋さんですね。それと今まで京都になかったスタイルの立ち飲み屋なら『柳小路 TAKA』さんもあります」
『柳小路 TAKA』も女性に人気。訪日外国人の来店も多い
松本さん
松本さん
「うちの店と同じ、柳小路通りにあるお店です。『NOBU』出身のシェフが切り盛りされているので、焼き鳥ひとつ取っても、非常に手が込んでいます。そのぶん、いわゆる“立ち飲み価格”ではないけれど、値段にふさわしい満足感があると評判です。な〜んて、謙遜していますけど、西谷さんのお店も、今まで京都になかった立ち飲みスタイルって騒がれているじゃないですか(笑)」
本屋のなかで飲むというのは、なんとも斬新だ。ちなみに立ち飲みしながらの本の閲覧は禁止
店の奥には、本の陳列専用の部屋もある。お酒を飲む手を止めて、ここで本を選ぶお客さんも多い
西谷さん
西谷さん
「いや、繰り返しになるけれど、うちはここで本屋と飲食店をやりたいと思ったら、スペース的な問題で立ち飲みがベストな選択だったわけで。ただ立ち飲み屋は好きで、20年以上、今でも飲み歩いています。あとこの店をオープンする前に、実際に立ち飲み屋でも働いていた、修行をしていたから、もちろん立ち飲みに対する思いは強いですよ」

2.立ち飲み屋が少なかった京都の街

立ち飲み屋の店主と、立ち飲みの好きな料理人の対談だけに、話題は昔の京都の立ち飲み文化にも及ぶ
松本さん
松本さん
「他にもここ数ヶ月で、新しい立ち飲み屋が数軒オープンしましたが。昔の京都には立ち飲み屋、ほとんどありませんでしたよね? それこそ2013年、四条大宮に『庶民』さんができてから、一気に数が増えましたけど。僕が大学生の頃は、四条河原町の『たつみ』さんか、新京極通りの『京極スタンド』さんくらいでした。角打ちは、たくさんありましたけれど
松本さんが「この店がオープンしてから、京都に立ち飲み屋が増え始めた」と話す、四条大宮の「庶民」の様子。今でも朝11時のオープンから混雑する人気店
西谷さん
西谷さん
「僕の立ち飲みの原風景は、七条御前にある『橋本酒店』の角打ち。高校の同級生の実家で、遊びにいったときは衝撃を受けましたよ。近所のおじさんが、冷蔵ケースからビールを取って晩酌するのはわかるけれど、茹でていないうどんに醤油をかけて、つまみにしていて(笑)。ここの角打ち、売っている惣菜や食材をアテにして飲めるから」
「庶民」の「牛すじ煮込み」は200円という安さ。「味噌仕立てで、赤味噌と白味噌を独自に調合しています」と代表の辻戸さん。味の工夫も凝らされている
松本さん
松本さん
「とはいえ、茹でていないうどんを、つまみにできるもんですか?(笑)。僕も初めての立ち飲みは角打ちでした。高倉錦小路の『松川酒店』です。学生の時、バイトしていた寿司屋の職人さんが連れていってくれました」
「庶民」の「あらと小芋の煮付け」(150円)と「今月の純米酒」(400円・1合)。取材日は滋賀県産の純米酒「湖弧艪(こころ)」。魚のあらは、その日に舞鶴港で揚がったものだ
西谷さん
西谷さん
「やっぱり以前は京都で立ち飲みっていったら、角打ちが圧倒的で、今みたいな立ち飲み屋は少なかった。それこそ大阪になら、格安の立ち飲み屋はたくさんあったけど、食材の仕入れ価格や家賃の問題で、京都の繁華街では難しかった可能性があります。あと立ち飲みって、基本は地元の人が集まる場所だから、そこは角打ちで事足りてしまう。わざわざ街中で、一見のお客さん向けに商売する必要がなかったのかもしれないですね」
「庶民」の「ミンチカツ」(100円)。関西ではメンチカツを、ミンチカツという
松本さん
松本さん
「だから数年前までは、京都の繁華街でそれほど立ち飲み屋を見かけなかったんですね。それと角打ちは地元の常連さんが多いし、おまけに店ごとにルールやシステムがあるから、一見さんは入りにくい。こうやって振り返ると、やっぱり『庶民』のオープンが、京都の立ち飲み業界に与えたインパクトは凄かったですね」
「庶民」の「造り3種盛り」(500円)。取材日は〆さば、サーモン、まぐろで、皿からはみ出そうな量。京都中央卸売市場や舞鶴港直行の魚を使う
西谷さん
西谷さん
「やっぱり、松本さんもそう思いますよね。僕は大阪の立ち飲み屋にも通い続けて、かれこれ20年になりますが、『庶民』さんがオープンしたとき、京都にも大阪の立ち飲みスタイルが上陸したと感じました。格安なのに、食材調達も手を抜かず、あの価格帯で可能な限りの皿を提供する。大阪の立ち飲み屋は安いけれど、実は料理にも手間をかけている店が多いから」
「庶民」のカウンターには、手作りのお惣菜も並ぶ
松本さん
松本さん
「角打ちだと、つまみは乾き物や缶詰のことが多いし、『庶民』さんのように、100円代で料理を出しているとなると、飲んべえは大歓喜ですよね。瞬く間に人気店になって、行列までできるように。ただ京都の角打ちには常連が築いた暗黙のルールがあったけど、新規の立ち飲み屋には存在しなかった。泥酔するお客さんがいたせいか、いつしか『庶民』さんの壁に『男性から女性に話しかける行為、禁止します』の張り紙が登場しました(笑)」
舞鶴港直行の鮮魚を250円から提供できるのも「庶民」の強みだ
西谷さん
西谷さん
「大阪は立ち飲み文化が根付いてから長いので、飲んべえのおじさんたちも“上品な下品”を心得ているというか(笑)。たしかに新規の女性に声をかける人もいるけど、基本、店や他人に迷惑をかけない土壌があると思います。プライドをもって下品、というか(笑)」
夕方5時を過ぎると、「庶民」の前には行列ができる。サクッと飲んで帰る人も多いので、回転は比較的早い
松本さん
松本さん
『庶民』さんも今ではしっかり、お客さんがルールを守って楽しんでおられるようです。なんせ安く楽しめるので、今でも大人気。気軽に入れるので、最近は外国人のお客さんも多いそう。観光地では見られない、京都人の暮らしの一端に触れられるから(ただし、飲んべえ限定)、立ち飲みにあまりなじみのない人も、ふらっと立ち寄ってみるといいかもしれません」
「庶民」代表の辻戸康宏さん。鮮魚店や大手寿司チェーンでの勤務経験があるため、独自の仕入れルートが。それが手頃な価格設定に繋がっている

「大阪で社会人生活を送っていたとき、京都には大阪のような立ち飲み屋がないと気づいたんです」と「庶民」代表の辻戸康宏さん。そこを商機ととらえ、2013年12月「庶民」をオープン。今も連日の盛況ぶりだ。自慢の一品は、京都中央卸売市場や舞鶴港直行で仕入れる、お造り。またドリンクもレモンサワー200円、生ビール中250円など破格値だ。2019年4月には、大阪・京橋に2号店を開業。その快進撃に今後も注目だ。

3.京都市郊外に、立ち飲みの新星出現

なおも西谷さん、松本さんの立ち飲み対談は続く
松本さん
松本さん
「あと『庶民』さんのほかに、京都の立ち飲みの概念を変えた店を挙げるとしたら、京都府庁近くの『井倉木材』さんも。昼は材木店、夜は立ち飲み屋という独特の営業スタイルです。ガレージに設えられた即席のテーブルを囲んで、資材置き場を眺めながら飲むのは、なかなかのエンターテインメント性。こういったユニークな店の出現で、昔から京都にある立ち飲み屋にもスポットが当たるように。業界全体が注目を集めている気がします」
井倉木材の外観。暖簾の向こう、館の中にはカウンター、奥の材木屋のガレージには即席のテーブル。2種類の立ち席がある
西谷さん
西谷さん
「そうですね。『たつみ』さんも、観光客や一見さんのお客さんが増えていると聞きます。一方で、新しくオープンする立ち飲み屋は、やっぱり四条河原町界隈が多いですよね。そういえば、いま思い出しましたが、最近、伏見区にいい立ち飲み屋を見つけたんです。京阪電車・深草駅を降りてすぐにある、その名も『FUKAKUSA』。5、6人が入店したら、いっぱいになるような店ですけど」
「思い出した!」と言って、西谷さんが挙げたおすすめの立ち飲み屋は、意外な立地だった
松本さん
松本さん
「えっ、繁華街でもない場所に立ち飲み屋が? どんなお店ですか?」

\こちらが「FUKAKUSA」/

店主の細川さんは、立ち飲み屋をしながら、熱帯魚や小動物のお店も営んでいる。ゆえに店にも水槽が。ちなみに細川さん、休日は専門学校で熱帯魚講座の講師も担当している
西谷さん
西谷さん
「まずカウンターの上に、熱帯魚の水槽が置いてあります。ブルーライトも煌々と灯っています(笑)。そして料理も酒も驚くほど安い。刺身の盛り合わせなんて、7種類が2枚ずつのって、400円です。料理は100円〜200円台が中心だけど、必ずひと手間かけることを忘れない。僕は『手頃な価格で、気の利いた料理を出すのが立ち飲み屋の仕事』と肝に命じていますが、こちらの店主、細川さんからも同じ気概を感じます。さすがに価格だけ比べられると、勝てないけれど(笑)。それくらい営業努力をされています」
「さしみブツ盛 大」(400円)。取材日はカンパチ、タイ、スズキ、甘エビ、サーモン、マグロ、シマアジ
松本さん
松本さん
「しかし、その内容の刺身の盛り合わせが400円って、安すぎませんか?」
西谷さん
西谷さん
破格だけど、きちんと質のいい魚を使っておられますよ。ちなみに50円のつまみもあります。『マカロニなんとか』っていう、面白い品書きです」
「マカロニなんとか」(50円)。マカロニの味付けは日替わり。取材日はボロネーゼ風味で、表面をカリッと焦がして提供していた。安いのに、ひと手間を加えることを忘れない。「赤星(中瓶)」(400円)
松本さん
松本さん
「50円ですか? その『なんとか』がどんな味なのか、すごく気になりますね」
「とりムネトマトナス浸し」(200円)。ムネ肉の煮付けに、夏野菜を添えて季節感も演出する

日替わりフレーバーの「マカロニなんとか」のみならず、煮玉子や高菜炒めも50円。100円メニューも豊富に揃うなど、ここ「FUKAKUSA」はまさしく飲んべえの天国だ。刺身が破格なのは、店主の細川さんが昔から週に数回、近くの鮮魚会社へ魚をさばきに通っているから。独自のルートを持ち、質のいいものを仕入れられる。また魚をさばく細川さんの腕も確かなものだ。

「写真撮られるの恥ずかしいんで、手だけでもいいですか?」と細川さん。ちらっと、お顔も写して。シャイだけど、とても気さくで優しい方です

生ビールは300円だが、日本酒とグラスワインは250円とさらに安い。ハイボールも250円からで、およそ10種から好きな銘柄が選べる。スコッチウィスキーの「タリスカー10年」を選んでも、なんと400円。「そんなに安いですか? 僕が飲む分も一緒に仕入れれば、結果、自分の酒代も安くなるから、その価格設定にしてるんですよ」と細川さんは言う。ちなみに一見さんは大歓迎とのことだ。

入口は家の玄関のようなので、注意しないと見落としてしまうことも。お客さんは地元の人が多い

時代を超え、良い酒場がもつ空気感

ここまで京都の立ち飲み事情を考察してきたが、最後は対談の核心の部分「立ち飲み屋を、いかに楽しむべきか」という話題に
松本さん
松本さん
「京都の立ち飲みの話をいろいろしてきましたけれど。ちょっと話を戻して、一見さんの話。まずどうやって初めの一歩を踏み出すかで悩む人も、きっといますよね。『柳小路 TAKA』さんや『すいば』さんのような入りやすい店はさておき、常連さんが多い店に関してはとくに」
「レボリューションブックス」の本の陳列。手前のボックスは、上部を蓋で閉じると、立ち飲みテーブルに変わる
西谷さん
西谷さん
「でも木屋町の『きゃさ』さんなんかは、スタッフとの距離が近く、きちんと気も遣ってくれるので、常連さんと一見さんが盛り上がっている光景をよく見かけますよ。そういう店を探して飛び込めば、観光で京都に来る人も、きっと良い思い出ができるはず」
「レボリューションブックス」のネタケースも、西谷さんこだわりの特注品。その日の魚介の小鉢が並べられる
松本さん
松本さん
「さっきから謙遜して、西谷さん、全然自分の店の話をしませんね(笑)。もう一回言いますけれど、『レボリューションブックス』も、一見さんが来て、十分に楽しめる店じゃないですか。店内は明るくてきれいだし、飲食関係の本も買える。料理も手が込んでいて、気軽な価格帯で。ほら、このタタキきゅうりにも花椒(ホワジャオ)を合わせるのが、なんとも技アリです」
「レボリューションブックス」の「山椒きゅうり」(300円)。夏野菜に花椒を利かせ、より爽やかで華やかな一品に
西谷さん
西谷さん
「そんな。京都に『そば前』、そば屋で飲む文化を確立したといわれる、松本さんに褒めていただけるなんて、光栄です(笑)」
「レボリューションブックス」の「スズキの造り」(350円)。紅葉おろしとポン酢で。「刺身は日替わり。ちなみに『今日のおすすめ』を見ることを習慣づけると、立ち飲みはさらに楽しくなるはずです」と西谷さん
松本さん
松本さん
「僕が文化を確立? そんな大層な話じゃありませんよ(笑)」
「レボリューションブックス」の「豚皿」(480円)。チャーシューのように柔らかく火通しされ、またニンニクの風味が食欲をそそる。夏に精をつけるのにも適したつまみ
西谷さん
西谷さん
「まぁ、お互いを褒め殺すのは、これにて終了ということで(笑)。修行させてもらった大阪・京橋の立ち飲み屋『岡室酒店直売所』では、酒も料理も値段は500円が上限でした。『その価格設定なら、お客さんが安心して酔えるから』というのが理由で、僕もこれを習っています。あと料理は『焼いて』『切って』『揚げて』だけで終わる品書きではなく、もう一手間くわえた皿を増やすように。これも修行先で学びました」
西谷さんがこの夏に推していきたいと話す「塩レモンサワー」(450円)。1ヶ月以上寝かせたレモンの塩漬けを使用する。その酸味と甘塩っぱさで、クセになる一杯だ
松本さん
松本さん
「それと『レボリューションブックス』の居心地のよさは、店主の西谷さんとお客さんの間に(たとえそれが常連さんでも)、ほどよい緊張感があるからだと思います。西谷さんが適切な距離感で接しているというか。ゆえに場の空気があまり乱れず、来訪者も心地いい。一見さんも来やすい。その接客の仕方も、修業先で学んだのですか?」
壁の品書き。揚げ物、煮物、焼き物なども、ひと手間くわえた料理が多い。昼営業と夜営業(平日は17:00〜)で注文できるメニューが異なる。日曜・祝日は終日、夜営業のスタイルだ
西谷さん
西谷さん
「えっ、別に僕は緊張感なんて漲(みなぎ)らせていませんよ(笑)。それを言うなら、松本さんじゃないですか?
松本さん
松本さん
「えっ、うちの店には緊張感なんて漂っていませんよ!」
対談の終盤、松本さんに、とある嫌疑をかけた西谷さん
西谷さん
西谷さん
「この間、店に行ったとき『二日酔いなので、サワーの焼酎は薄めでお願い』って頼んだら、それは邪道だって表情をして、無言で通常の配合にしたじゃないですか!(笑)」
突然、突っ込まれ、怪訝な表情の松本さん
松本さん
松本さん
「えーっと、そんなことありましたっけ?(笑)。ただ僕たちが緊張感を醸し出しているかどうかはさておき、酒場に行くなら、店主や他のお客さんと適度な距離感で接することをおすすめします。その方が、気持ちよく酔えるから。僕は(噂によると)、京都で『そば屋で飲む文化』を確立した御仁らしいので、それなら第一人者らしく、断言しておきます(苦笑)」
最後は笑顔で対談終了。お忙しいところ、西谷さん、松本さん、ありがとうございました
西谷さん
西谷さん
「よっ、第一人者!(笑)。はい、その通り。僕もそう思いますよ」
対談終了は16時。ここから「レボリューションブックス」は掻き入れどきを迎える

\「レボリューションブックス」の情報はこちら!/

\「そば 酒 まつもと」の情報はこちら!/

取材メモ/昔、京都に住んでいたとき、通い続けた立ち飲み屋。たしかに最初は二の足を踏んだが、飛び込んでみれば、どの人も優しかった。しかし親しき仲にも礼儀あり、飲みすぎない、また相手に深入りしすぎなかったからこそ、立ち飲み屋が心地いい場所に変わったのだろう。人と適切な距離感を保つこと。西谷さんと松本さんの話を聞いて、酒場は人生で大切なことを学ぶ場所だと改めて痛感した次第です。


取材・文/岡野孝次
撮影/ナリタナオシゲ(「レボリューションブックス」「庶民」)、三國賢一(「FUKAKUSA」)

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Yahoo!ライフマガジン編集部

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