「全ては女性のために」歌舞伎町の現役ホストが握る寿司店とは

「全ては女性のために」歌舞伎町の現役ホストが握る寿司店とは

2019/06/21

ホストもセカンドキャリアの時代へ。現役ホストが寿司を握るという新宿・歌舞伎町の新店で、開店の背景とその味を確かめてきた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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現役ホストが二刀流で寿司職人に挑戦!

新宿・歌舞伎町。
その中心、新宿東宝ビルのそばに、今年5月、新スタイルの寿司店がオープンしたそう。

イケメンの板前を囲むゴリゴリのホストたち…?

お店の入り口には噂の寿司店の大きな看板が。いや、看板からするにホストクラブかもしれない。

恐る恐る入店してみた。

いろんな店が集合! 賑やかなバーの中央には、シンプルな寿司カウンターが

広々とした「麦ノ音」のフロア

歌舞伎町にホストクラブを6店舗展開するSmappa!Groupの運営する、横丁スタイルのダイニングエリア

国内外のクラフトビールを楽しめる「麦ノ音」の他、ゴールデン街から移転した正統派バー「BRIAN BAR G」など、ワンフロアに様々な業態の飲食店が併設している。

フロアの中央に位置する「へいらっしゃい」カウンター

そんな横丁の一店舗として「寿司屋をやりたい」と志願したのが、ホストクラブ「Smappa! Hans Axel von Fersen」代表、この道14年のベテランホストSHUNさん

ホスト姿のSHUNさん。かっこいい…!

ホストとしても絶大な人気を誇る彼が歩み始めたのは、ホストと板前、二刀流の道。彼の握る寿司とは、一体どんなものなのだろうか。

寿司店なのにタワー!? ハイブリットホストならではのサービスに震える

板前姿のSHUNさん

SHUNさんが板前をつとめる「へいらっしゃい」の営業時間はフレキシブル。基本的には19時〜21時に板場に立ち、その後ホストクラブへ出勤。0時にはホストクラブの1部営業が終了するため、その後再び板場に舞い戻り朝4時まで営業する流れだ。

しかしこれも、”ホストSHUN”を指名するお客様次第で、状況は変わるという。

無垢の木に書かれたお品書き

さて、まずお品書きで目に飛び込んできたのは、「寿司タワー」なるメニュー。

「寿司タワー」(5万円〜※写真はオープニングイベントの時のもの)

シャンパンタワーのように積み上げられたグラスの中には寿司が。ホストSHUNならではの、パーティーナイトに最適のメニューである。

合わせたいのは、やはりシャンパン、もとい「SHUNパン(シュンパン)」。

「SHUNパン」(2万円)

お店オリジナルエチケットのシャンパン。
寿司とシャンパン、これこそ歌舞伎町を象徴するメニュー2トップであろう。

職人&ホストの二刀流は伊達じゃなかった

のれんの文字はSHUNさんの直筆

歌舞伎町らしい豪華なメニューに相反して、その他の寿司ネタのラインナップに驚いた。

SHUNさん
SHUNさん
「ネタ数が少ないでしょう。まだまだ修業中の身なんです。今は自分がお客様に提供できる味だと確信の持てるものだけを提供しています。

ホストクラブにいらっしゃるお客様に好きな食べ物を聞くと、多くの方が『寿司』と言うんです。元々親戚が寿司店をやっていたこともあり、ならば僕も寿司屋をやろうと思いました。もっとお客様に喜んでもらいたかったんです。

開店に向けて、下町にある親戚の江戸前寿司店で修業をはじめました。その修業は現在も続いていて、朝、魚が店に配達される時間から修業が始まります」
朝修業して夜板前とホストをするSHUNさん。いつ寝ているんだろう
SHUNさん
SHUNさん
「正直なところを言うと、もっと簡単だと思っていたんです。

しかし今まで包丁を握ったことがなかった僕は、初めはネギすらまともに切れなかったんですよ。

今も包丁は一番難しい。白身ひとつとっても、刺身と同じ厚さで寿司ネタを切れば、弾力で食べづらかったり、ネタによっては順目や逆目など切りつけも変わります。だから一つ一つきちんと握れるようになったら種類を増やしていきたいんです」

そう語るSHUNさんは、ホストのイメージからは想像できない程、謙虚な一面をのぞかせた。

ホストと寿司職人の共通点とは

SHUNさん
SHUNさん
「ホストも寿司職人も、お客様をもてなすという職業だと思います。ホストの経験が生きたなと思うのは、『話すこと・メモすること・観察すること』の3つです。

親戚の寿司店には地域のお年寄りや家族連れが多く来ますが、例えばあるおばあさんが甘エビを残したりすると『どうして”甘エビ”を残したんだろう』と、ひたすら健康や嗜好にいたるまで想像し、悩みますね(笑)。

とにかくお客様第一。勉強になったのは、職人はきれい好きということ。プライベートでもとても几帳面です。食べる相手のことを意識した生き方そのものが職人なんだと思います」

寿司に込められた「全ては女性のために」の想い

SHUNさん
SHUNさん
「オープンして1ヶ月ですが、お客様からヒアリングを重ねメニューは常にブラッシュアップしています。まず女性が食べやすいようにシャリのサイズは当初よりかなり小さくなりましたね」
「鰈」(600円)。炙ったえんがわが上に添えられ、鰈(カレイ)のいいとこどりができる一品
SHUNさん
SHUNさん
「上海の寿司店でえんがわと一緒に食べるアイデアを得ました。身とえんがわ二つ食べたらすぐにお腹いっぱいになってしまうけど、これなら一貫で贅沢な食べ方が出来ますよね」
「鯵」(500円)。皮と脂の輝きが美しい鯵(あじ)。添えられた緑の薬味はというと…
SHUNさん
SHUNさん
「いい脂が乗ってますね。仕入れはご縁を繋げていただいて、親戚の寿司店と同じ魚屋さんを利用させていただいてますので、質のいいネタが入ります。

添えた薬味は万能ねぎと生姜をペーストにしたものです。薬味のネギってポロポロ落ちるでしょう。この方が女性が食べやすいかなと思って」
「いか」(400円) 。小ぶりで一口で食べやすいいかには丁寧な飾り包丁が。優しく硬めの甘シャリととろけるような身がベストバランス
SHUNさん
SHUNさん
「シャリには、江戸前寿司でよく使われる赤酢は使用していません。シャリのレシピは都内の親戚の寿司店とも違いまして、関西のレシピを参考にしています。酸味がそれほどきつくないですよね」
「帆立」(600円)。シャリが見えなくなるほどの大きな貝柱は至極濃厚。みずみずしいので後味はさわやか
SHUNさん
SHUNさん
「帆立はサイズがいろいろあるんですが、一番大きいサイズを仕入れています。京都のてまり寿司って美しいですよね。味やサイズだけでなく、見た目や彩りも含めて女性のためのお寿司を作りたいんです。今後はエビのメニューを増やしたいですね! 女性はエビが好きな方が多いイメージなんです」

と楽しそうに笑うSHUNさん。だがその実、朝修業して夜から明け方まで働き続ける激務の日々。ダブルワークという選択に、迷いはないのだろうか。

SHUNさん
SHUNさん
ホストとしても職人としても一流でありたいです。そのためには、人の倍頑張るしかない。安易な言動はお客様に見抜かれてしまいますし、板前SHUNとして露出する責任もあります。でもそのプレッシャーが原動力になっています」
SHUNさんの生き方が、ホストの未来を変えていく
SHUNさん
SHUNさん
「ホストと職人の兼業をする中で、新しいホストの生き方も提示したいです。僕のような30代のホストは一番仕事に張り合いのある時期でもありますが、一生続けられるかとなった時に、セカンドキャリアが必要だなと考えています。

僕は寿司屋を選択しましたが、思えば今までの寿司屋は、価格・食べやすさ・お酒の選択肢など、女性にとって抑圧があったと思います。14年のホスト経験の中で培った能力を活かしながら、女性の過ごしやすい寿司屋を模索し、これからも『全ては女性のために』をテーマに働き続けたいのです」

ホストと職人。華やかさと直向きさ。
真反対のようでぴったりと一致した信念が、ここ歌舞伎町で世界に誇る新たな日本文化を形成することだろう。

取材メモ/個人的に一番ドキッとしたのは、お寿司にSHUNさんがお醤油を塗ってくれるところ。食べやすくなるよう細やかな心遣いがうれしいのはもちろん、醤油を塗る指が美しいので見惚れてしまった。

取材・文=蛯原天(リベルタ) 撮影=前田彩夏

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