沖縄の伝統的な娯楽!「闘牛観戦」を徹底解説

2019/07/22

沖縄の伝統的な娯楽!「闘牛観戦」を徹底解説

新聞の1面に世界的なニュースと並び、目を見開いてにらみ合う牛の写真。いかにも闘牛が盛んな沖縄らしい。その起源は定かではないが、琉球王朝時代にまでさかのぼるという。そんな闘牛「未体験」のウチナーンチュも多いはず。8月に開催される「夏の全島闘牛大会」に向けて観戦の面白さを紹介する。

琉球新報Style

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ぶつかる巨体

今回観戦した記者たち みんな闘牛観戦は初めて

開会1時間前の正午頃、会場のうるま市石川多目的ドームに到着した。選ばれた牛のみが出場する「全島大会」だけあって会場は既に多くの人でにぎわい、熱気むんむんだ。

「ンモォー」「ヴオーッ」野太い声に引き寄せられ、待機小屋をのぞいた。試合の約1時間前、牛たちは気合十分といった顔でのっそのっそと各自の小屋へ入っていく。ちょっとこわもての“通(つう)”たちが入れ替わり立ち替わりやって来ては牛主を激励したり「調子良さそうだな」とつぶやいたりしている。牛主たちはヤスリで角を研いだり、ホースで水をかけたり、ブラッシングしてやったりと忙しそうだ。

戦いの前。角を研ぎ、最後の仕上げ

午後1時、取り組みが始まった。10試合あり、実力下位から対戦が進む。角を突き合わせる音が響き、筋肉むきむきの巨体がぶつかり合うたびにどよめく観客。「さぁ、互いにゆっくりギアを上げていこうかという段階でしょうか」。闘牛アナウンサー伊波大志さんの実況のおかげで試合の流れは分かりやすい。負けそうだった牛が反撃して逆転勝ちすると、観客のボルテージも一気に上がる。

牛をあおる勢子(せこ)(闘牛士)たちも見ていて飽きない。

ヤグイと言われる掛け声は「ヒーヤイ」が一般的らしいが、どんなに耳を凝らしても聞き取れない。「アァーイィヤイッ」。自分の右足を地面に打ち付けながら声を張り上げる。

両脚を交互に動かすリズミカル派や、じっと牛に手を添えていたと思ったら急にヒートアップする勢子もいて、フリースタイルだ。

牛を鼓舞する勢子(闘牛士)

パフォーマンス重視

旗と、牛の動きに合わせてタイミングよく鳴り響くドラと大太鼓の効果音に気付く。振り向くと花笠と角付きヘルメットの2人組。なぜか無表情なのも気になる。

2人は山城靖さん(59)と伊波優太さん(34)で年3回の全島大会に必ず現れる有名人らしい。応援の心得を尋ねると、勢子の経験もある山城さんは「鳴らすタイミングは熟練の感覚。中立を保つのも大変」とクールに教えてくれた。

名物応援団

「貴花グループ」は牛の入場前に眞榮里優翔君(11)の四股踏みで盛り上げた。このチーム、昨年はラグビーの五郎丸歩選手の物まねを5分も披露したが、試合はたったの20秒で負けたという。関係者の1人は「お客さんを楽しませるために、試合そっちのけだよ。うちはパフォーマンス重視」とまで言った。ちなみに今大会は無事勝利を収めていた。

シーの一番

開会から約2時間、ついに大トリ「シーの一番」がやってきた。「シー」は方言で「後ろ」とか「末」の意味だ。

春の全島大会で無敵の王者を破って中量級王座に就いた「辺土名牛志(うしまる)」に「古堅モータース☆黄龍(おうりゅう)」が挑む構図。一進一退の攻防に、観客もせわしなく顔を右に左に行ったり来たり。

6分過ぎ、黄龍が腹部に突進する技「腹取り」で一気に相手を壁際へ押し込んで決着。60キロの体格差をはねのけた新王者誕生に指笛が飛び交い、「戦国時代の予感です」と伊波アナも名調子だ。

シーの一番を制し、歓喜に沸く人たち

牛たちが巻き上げる土を最前列でかぶったマリリン記者は「闘牛、やっぱり面白いっすね」と興奮している。のりちゃん記者は「次は牛を観察して予想を立てつつ観戦してみるか」とすっかり“通”の気分で会場を後にした。

闘牛観戦のHow to

闘牛のルールは単純。片方が闘志を失って逃げる、または技が決まって動けなくなると試合終了となる。すぐに人が割って入るので、勝った牛も深追いはしない。制限時間がないのでスタミナ勝負になることも。息が荒くなって腹が上下する、よだれ、脱ぷんや放尿、舌を出す、などが疲れてきたサインとなる。

沖縄闘牛の始まりは分かっていないが、戦前は農村で盛んに行われていたという。沖縄こどもの国の高田勝園長は家畜としての牛の「力比べ」が闘牛を広めた理由の一つではないかとみる。「(牛の)過酷な労働に必要な精神力や持久力、骨格などをみる手段だったのでは」。人に角を向けることはないのか、という疑問には「牛は根に持つ動物で調教が難しい。闘牛は愛情を持って育て、信頼関係を築いたからこそできること」と答えてくれた。

主な闘牛の技

普段の牛を突撃取材!

闘牛たちは普段どんな生活をし、試合に備えているのか。夏の全島大会で優勝旗を争った2頭の牛主を、大会直前にマリリン記者が突撃取材してみた。

「辺土名牛志(うしまる)」の牛主、辺土名朝也さん(38)の沖縄市の牛舎では、肥育牛約20頭と共に闘牛4頭を飼っていた。

牛志は生後8カ月の頃、辺土名さんが与那国から買い付けた。「闘牛には生まれつき持ったセンスも必要」と辺土名さん。理想の牛を求め、牛主たちは徳之島や岩手などに出向くこともあるという。辺土名さんがヘチマのたわしで横腹をブラッシングしていると「ここ、かいて」というように後ろ足を上げる牛志。辺土名さんが「ここが好きなんだよね」とかいてやると、尻尾をぶんぶん振ってご機嫌だ。

9月の大会に出場する古堅モータース☆蟹は1個100キロはありそうなタイヤに突進して首を鍛えていた

続いて訪ねたのは読谷村で「古堅モータース☆黄龍(おうりゅう)」を飼う野原朝太さん(31)の牛舎。

4頭いる闘牛の中でも、黄龍は扇風機3台を従え“VIP待遇”を受けていた。牛も夏場は熱中症や食欲不振を起こすことがあり、体温調節のため頻繁に水をかけ、扇風機で体を冷やしてやるという。

トレーニングは「砂浜を散歩したり、練習試合を組んだりしている」とのこと。柱にくくり付けたタイヤに突進する稽古もある。「夏場は早朝や夕暮れ時の涼しい時間帯にする。試合前はバテないよう体調を整えるのが一番重要かな」

丹精込めて愛牛を育てる牛主たちに感化されたマリリン記者。「かわゆす」(=かわいい)。牛の写真を先輩記者にラインで送りつけるのであった。

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