鳥取・東伯郡 湯梨浜町の特産品「湯梨浜ひらめ」で泊を元気に‼

2019/07/07

鳥取・東伯郡 湯梨浜町の特産品「湯梨浜ひらめ」で泊を元気に‼

泊漁港にある「海の駅とまり」の水槽には、背中に美しく白い星のあるヒラメが元気に泳いでいる。湯梨浜生まれの湯梨浜育ち、清廉な井戸海水で育った質の高い「湯梨浜ひらめ」。その飼育の苦労や、養殖に託す地域への思いを聞いた。

中広

中広

県魚ヒラメの陸上養殖に参入 「海の駅とまり」を観光拠点に

浅い海の砂地に生息するヒラメ。大きなものは体長1m、重さ10㎏に及ぶ時もある白身魚だ。全国から高級魚として需要が高く、鳥取県では昭和60年代に養殖が始まり、平成2年、県魚に選定された。

鳥取県の県魚、ヒラメ

旧泊村に生まれ育った戸羽正廣さんは、有限会社戸羽建設の社長として土木・建設工事を営んできた。しかし平成の半ばに県内の公共工事が縮小され、異業種へ参入する建設事業者が相次いだ。

戸羽さんも多角経営を模索する。そんな時栽培漁業センターにヒラメの陸上養殖を勧められた。「農業にも魅力を感じていましたが、もうすぐ町村合併が行われる時期だったため、地域活性化の一助になればと決意しました」

戸羽さんは社内に水産部を設立し、湯梨浜町小浜に設備を整えた。中部地域の経営者や個人に出資を募り、参加者らでクラブ「湯梨浜振興」を結成。養殖場は地域振興の一環として会員のレジャー施設を兼ね、海水浴にキャンプにとにぎわった。

小浜を拠点にして8年が経つころ、現在地である泊港背後地への移転を提案された。小浜との大きな違いは、井戸海水を使えることだ。地下から汲み上げる井戸海水は、外海の水よりきれいで温度が安定しやすい。掘ればどこでも出るものではなく、小浜で叶わなかった念願の設備だ。

この機に水産部門は湯梨浜振興合同会社となって戸羽建設から独立する。新しい養殖場は、観光拠点への期待をこめて「海の駅とまり」と名付けた。そして2018年7月、食堂「元気海」を開店。昼時には地元はもとより、遠方の客も訪れてヒラメや海の幸に舌鼓を打つ。

泊港内にある「海の駅とまり」(左)と「元気海」(右)
戸羽正廣さん

戸羽正廣さん

湯梨浜振興合同会社代表

安全・安心な井戸海水飼育 細やかな世話でおいしく成長

7棟の養殖棟には20を超える水槽が並び、常時大小1万枚以上のヒラメが泳ぐ。

ヒラメが育つ水槽は、20槽以上ある

春、体長8㎝ほどの稚魚約1万2000枚が栽培漁業センターからやってくる。最初は1つの水槽に3000枚ずつ入れ、大きくなると別の水槽に移して密度を下げる。毎日成長具合を確認しては移し、水槽の中には常に同じ大きさがそろうようにする。選別・分槽と餌やり、掃除が職員の主な日課だ。餌はオキアミなどを主原料とした、タンパク質の多い高品質な飼料を使用している。

春に養殖場へ来たばかりのヒラメの稚魚たち

「湯梨浜ひらめ」の一番の特徴は、安全・安心であること。清涼な井戸海水を用いるため外洋汚染の影響を受けず、寄生虫がつかない。天然のヒラメは稀に寄生虫による食中毒が報告されるが、その心配なく安心して食べられるのは、井戸海水飼育ならではだ。戸羽さんは「ぜひ刺身で食べてほしい」と胸を張る。

赤潮などの被害を受けにくく、飼育の上でも生産計画を立てやすい。いいことづくめのようだが、井戸海水にも悩みはある。水源によっては、潮の満ち引きや時間帯に左右され、水量が変わりやすいのだ。養殖責任者の徳丸健太郎さんは「流量を絞ったり増やしたりしながら、井戸の水を絶やさずに水槽へ流し続けられるように調整します」と苦労を語る。元気でおいしいヒラメは、地道な世話のたまものだ。

2018年の夏は例年より水温が上昇し、気を揉んだ。幸いヒラメの生命の危険に及ぶほどではなかったが、戸羽さんは「毎年1年生みたいなもんです」と、はにかんだ笑顔を見せた。栽培漁業センターに指導を受け、密に情報交換しながら、陸上養殖の技術向上にも寄与している。現在、カワハギを県と共同開発で養殖試験中。今後はニジマスを検討している。

徳丸健太郎さん

徳丸健太郎さん

湯梨浜振興合同会社 養殖責任者

カワハギの試験養殖も進んでいる

利益よりも地域振興 新名物が続々登場

ヒラメは1年足らずで販売可能な400g程度に育つ。2017年は約6500枚を出荷した。

主な出荷先は県内の旅館や料亭だ。いつでも必要なだけ仕入れられるため、旅館などは先を見通して献立を宣伝できる。刺身でも安心して提供でき、小ぶりでもしっかりと脂が乗って旨い。鍋や姿造りも、大きさがそろっているので客に不公平感が生じない。

県外PRでは、販売促進と同時に湯梨浜町の食の魅力発信を目指し、観光客誘致も期待する。「いいものをなるべく安く地元で提供し、観光発展の力になりたい」と戸羽さんは目を細める。

県外や海外からも陸上養殖の視察に訪れる

地元では、養殖場内の食堂「元気海」で「ひらめ元気丼」や、出汁とトッピングにヒラメをもちいた「ひらめラーメン」などを提供。泊港から車で10分ほどの道の駅はわいでも、味を少し変えた「うまか丼」が食べられる。切り身を取り扱うスーパーマーケットもあるので、身近に「湯梨浜ひらめ」を味わえそうだ。自社ウェブサイトでは生のヒラメや刺身の菊花造りなどを販売しており、贈答にもよろこばれている。

「湯梨浜ひらめ」と野菜、とろろが乗った「ひらめ元気丼」
出汁と具材に「湯梨浜ひらめ」を使った「ひらめラーメン」
刺身は、菊花造りの状態で購入できる

「養殖を始めるとき、利益よりも地域振興をしたかった。憩いの場所を作りたかった。泊は自然が美しく人も温かい。ぜひ来て、ヒラメを食べて、見て、楽しんでください」と、戸羽さんは呼びかける。港を眺めながらヒラメのランチ、泊の空気と一緒に味わおう。

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中広

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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