犬養裕美子のお墨付き! 新宿・老舗水たき料亭の隠れ食堂

犬養裕美子のお墨付き! 新宿・老舗水たき料亭の隠れ食堂

2016/08/31

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第10回は新宿「げんかい食堂」

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

新宿に住む人、働く人のための食堂

元祖水たき(煮こごり、雑炊つき)2360円。新宿の名物と言えば“玄海の水たき”と言われるほど、この地で愛されてきた。博多生まれの初代が郷土の味を東京に広めたいという思いで、昭和3年に品川の地で創業

新宿の中心地には飲食店の数こそ多いけれど、どこの街でも見かけるチェーン店ばかり。おいしい、個性的、ここにしかないというアナログな店をみつけるのは難しい。

ところが、思わぬ場所に、私好みの店があったのだ。場所は靖国通り沿いに立つ3階建てのビル「水たき 玄海」の1階玄関を抜け、奥にあるガラスの扉、ここが目指す「げんかい食堂」だ。

全国各地の鶏を調べ、もっとも玄海の水たきに合うということで伊達鶏を使用。養鶏場より直送し、店で解体し調理することで新鮮な鶏肉を提供することが可能となっている

本店の「玄海」は昭和3年創業、2階と3階合わせて14もの個室、最大200名を収容できる大広間まであり、接待や記念日に欠かせない、コース主体の料理屋だ。「げんかい食堂」は、水たきだけでなく、焼鳥や鶏を使った鶏料理をアラカルトで楽しめる店。

「“玄海”は改まった日の料理屋、“げんかい食堂”は新宿に住む人、働く人のための店です」と3代目の矢野賀也さん。その証拠に、ここではランチメニューが16時まで設けられている。親子丼、焼きとり重、あつあつ鶏飯が各1000円(税込)、生米から炊く釜めし御膳各2000円(税込)など、巷のランチ戦争に関係なく、ゆったりと時間をかけて楽しめる。その料理がまたひと工夫凝らされている。「基本は水たきのスープを活用してうちならではの味を創ること」という。

水たきのスープで作る卵雑炊。鶏の胸肉を粉末にした鶏粉が味のアクセントに

水たきスープをさりげなく取り入れた鶏料理

親子丼はふんわりととじられた卵の下に鶏肉が隠れている

例えば親子丼。蓋を開けると様子が違う。普通は玉ネギ、鶏肉、を溶き卵でとじたものがご飯の上にのっている。ところがここでは鶏肉は別に味付けして炒める。そして水炊たきスープとすりおろした玉ネギ、溶き卵で炒めた鶏肉をサンドしてご飯にのせてある。

昼の親子丼セット1000円

ちなみに、本館の水たきはコース昼5400円~、夜8640円~(税込)。ここでは水たき単品が1人前2360円で食べられる。使用しているのはどちらも福島の伊達鶏だが、本館は鶏を丸ごと味わえるように、さまざまな部位を使いきる(そのため細かい作業が増えるが味はより深味を増す)。一方食堂は同じ生産者組合の伊達鶏だが、大きさや部位が違うので、厳密にいえば味は違うが、その旨味はやはり「接待でなく、思う存分味わいたい」という気持ちになる濃厚さ。

焼鳥はつくね、肝、砂肝、ハツが200円、もも、セセリ、手羽先が250円
豊富なとり料理の中でも人気が高いのがから揚げ720円。衣はサクッと、肉はジューシーに
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「ご要望があれば何でもおっしゃってください」(對馬光店長)

最後にこの店で注目すべきはスタッフの接客。笑顔、あいさつ、料理の説明など、すべて楽しんで仕事にしている。そのリーダーがなんと24歳という若さの對馬光店長。彼の作り出す“げんき”もまたリピートしたくなる大きな理由のひとつだ。

本店「玄海」の入り口はまるで旅館のように日折。「げんかい食堂」はその奥。ダイニングは25名。個々のほかに半個室がある

げんかい食堂

住所:東京都新宿区新宿5-5-1玄海ビル1F
電話:03-3356-0036 
定休日:第2月曜(祝日の場合は第1月曜)、年末年始
営業時間:11時~21時20分LO

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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