上野は夜の景色も美しい!夜景のプロが案内するアートな上野夜景

上野は夜の景色も美しい!夜景のプロが案内するアートな上野夜景

2019/07/09

“上野のお山”こと上野恩賜公園には壮麗な美術館や博物館が建ち並び、夕暮れを過ぎると美しい夜景で人々の心を満たしてくれる。そんな上野の夜の魅力を、夜景評論家の丸々もとお氏に聞いた。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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「上野のお山には本物しかない」(夜景評論家・丸々もとおさん)

小高い台地と不忍池にまたがる、“上野のお山”こと上野恩賜公園(うえのおんしこうえん)。この地は江戸初期より徳川将軍家ゆかりの寛永寺の敷地として栄え、維新後は病院になる予定だったものの、視察に訪れたオランダの医師ボードワン博士が「自然を残した公園にすべき」と明治政府に進言。1873(明治6)年に日本で初めての都市公園として整備された。

世界遺産に登録された名建築や、彫刻・彫像の夜の姿も楽しみたい(写真は国立西洋美術館の前庭にあるブールデル作「弓をひくヘラクレス」)

現在では“アートとカルチャーの集積地”として賑わっている上野恩賜公園を、「脇役が夕闇に沈み、主役の存在が立ち上がるのが夜景の魅力」と話す夜景評論家の丸々もとお氏に、美術館や博物館の帰りに楽しみたい上野の夜景スポットを案内してもらった。

\案内人はこの方/
丸々もとお(まるまる・もとお)さん

「小学生時代に大菩薩峠から見下ろす山梨の夜景に魅せられたことが、世界で初めての夜景評論家になろうとしたきっかけでした」(丸々氏)
丸々もとお(まるまる・もとお)さん

丸々もとお(まるまる・もとお)さん

夜景評論家・夜景コンベンションビューロー代表

丸々もとおさん
丸々もとおさん
「幼いころから画家の両親に連れられ、毎週のように上野の美術館や博物館を訪れていました。世界の至宝である絵画や国宝・重要文化財はもちろん、それらを展示する建築も最高峰と、上野の山には“本物”が数多く存在します。そんな上野らしい魅力を持つ夜景をご紹介します」

\注目の上野夜景はこの3つ/
1:威風堂々とした名建築
2:歴史を感じさせる神社仏閣
3:現代的な都市の光と闇
(*東京国立博物館では特別な許可を得て撮影しました)


1:威風堂々とした名建築

「東京国立博物館・本館」

毎週金曜と土曜は「夜間開館日」として、21時まで開館する東京国立博物館。2001年に重要文化財に指定された本館(写真)では、日本の美術や工芸、歴史資料を展示している
丸々もとおさん
丸々もとおさん
「上野の夜景を代表するのが、ここ東京国立博物館の本館です。ジョサイア・コンドル設計による旧本館は関東大震災で残念ながら被災。現在の建物は銀座にある和光(旧服部時計店)を設計した渡辺仁が手がけ、1938年に開館したものです」

ーー夜空の背景にとても映えます。

丸々もとおさん
丸々もとおさん
小高い台地にあるので空が広く、樹木の緑との陰影が美しいですよね。夜景では東洋風を強く打ち出した、帝冠(ていかん)様式と呼ばれる建築の力強さがより際立っています」
展示される収蔵品を浮かび上がらせる照明の技術も一級品。写真中央の作品は東洋館の重要文化財「十一面観音龕(じゅういちめんかんのんがん)」(中国陝西省西安宝慶寺 唐時代・8世紀 細川護立氏寄贈)
丸々もとおさん
丸々もとおさん
「私にとって夜景は、受け身で“観賞”するのではなく、芸術作品のように本質を深く“鑑賞”するもの。両親が見せてくれた上野の名品たちは、どれも美しく照らされていました。そういった作品から得た美術的な価値観は、夜景鑑賞にも役立っています」

「東京国立博物館・表慶館(ひょうけいかん)」

ジョサイア・コンドルの弟子で、迎賓館を設計した片山東熊(かたやま・とうくま)が手がけた表慶館。1978年には明治末期の洋風建築を代表する建物として重要文化財に指定された

ーー青緑色のドーム屋根の表慶館は、本館とはまた違った印象です。

丸々もとおさん
丸々もとおさん
「本館は力強い構造が際立つよう、赤味がかった光でダイナミックに照らされています。一方、エレガントな表慶館では照明のコントラストを抑えているようです」
「優しく照らし出された表慶館は、黒々としたユリノキの大木を背景に鑑賞するのもオススメです」(丸々さん)

ーーたしかに、一部分を強調するような印象がありません。

丸々もとおさん
丸々もとおさん
「建物全体に柔らかな白い光を当てることで、博物館のシンボルツリーであるユリノキの影と調和しています。建築の様式や個性を見極めた、照明技術の高さを感じずにはいられません」

\ル・コルビュジエ設計の世界遺産も必見/
「国立西洋美術館」

ロダン作「カレーの市民」など、数々の彫刻・彫像を前庭に飾る国立西洋美術館
丸々もとおさん
丸々もとおさん
「ル・コルビュジエ設計の建築と、大型の彫刻作品が一体となった夜景が楽しめるのが国立西洋美術館です」
樹木を背景にそびえ立つ、ロダン作の「地獄の門」
丸々もとおさん
丸々もとおさん
「見逃せないのが、ダンテの叙事詩『神曲』から着想を得た、ロダンによるブロンズ像の傑作『地獄の門』です」

ーーこれはレプリカですか?

丸々もとお
丸々もとお
「パリのロダン美術館にある原型から鋳造したフランス政府よりロダンの作品と認められているもので、世界で現存するのはこれを含め8体だけだそうです」
像上部の群像の中には「考える人」の姿が

ーー屋外で鑑賞すると不思議な気持ちになります。

丸々もとおさん
丸々もとおさん
「夜の闇には美しさだけでなく、得体の知れない妖しさがあり、暗闇で像と対峙することで深く涼やかな気分になる。前庭は無料で入場できるので、この空気感を体験しないのはもったいないです」

2:歴史を感じさせる神社仏閣

「清水観音堂(きよみずかんのんどう)」

朱色の美しい姿を夜空に浮かべる清水観音堂は、公園の遊歩道から眺めることができる
丸々もとおさん
丸々もとおさん
「夜景は風景だけでなく、土地に刻まれた歴史にも目を向けさせてくれます。そういった意味で見逃せないのが上野のお山にある神社仏閣の夜の姿です」

ーー上野には寛永寺や清水観音堂があります。

丸々もとおさん
丸々もとおさん
「寛永寺一帯は、江戸を京都に、上野の山を比叡山に置き換えた“見立て”という思想で1625(寛永2)年に造営されたもの。清水観音堂は清水寺(きよみずでら)に見立てたもので、21時ごろまでライトアップされ、鮮やかな朱色の姿を鑑賞できます」
不忍池にある辯天堂は22時ごろまで照らし出される

ーー「不忍池辯天堂(べんてんどう)」の“見立て”は?

丸々もとおさん
丸々もとおさん
「琵琶湖の北部に浮かぶ竹生島(ちくぶしま)にある、『宝厳寺(ほうごんじ)』のお堂に見立てたもの。江戸時代の浮世絵師の歌川広重が名所江戸百景で描いた『上野清水堂不忍ノ池』には、観音堂から辯天堂のある不忍池を眺める人々姿を見ることができます」
広重の「名所江戸百景」に収録されている「上野清水堂不忍ノ池」。清水観音堂境内にある弧を描いた松の枝の中から辯天堂を眺めるのが江戸庶民の楽しみだったのだそう(国立国会図書館蔵)

ーー浮世絵の中に入り込んでしまったような気分になります。

丸々もとおさん
丸々もとおさん
「夜空に青みを残す黄昏時を過ぎると、昼には見えていた現代的なノイズが闇にぼかされるため、場所だけでなく、時間さえも超えてしまいます。そんなタイムトリップのような体験も夜景の魅力のひとつです」
清水観音堂から見下ろす辯天堂の美しい姿に、通りかかる人の多くが足を止めて見入る

ーー見えないからこそさまざまなことを考えてしまいます。

丸々もとおさん
丸々もとおさん
「そのとおりです。昼の景色がありのままを描いた具象絵画だとすると、夜景は抽象絵画のようなもの。目で見る情報が制限されると、心で感じ取ろうとするためイマジネーションが豊かになります」

\東京スカイツリーと辯天堂のコラボ/

天気がいい夜には、不忍池の先に東京スカイツリーと辯天堂のツーショットが現れる
丸々もとおさん
丸々もとおさん
「不忍池の西側に周ると、池の岸に設置された遊歩道があります。そこからは、東京スカイツリーと並んで池に映る辯天堂の姿を眺めることができるので、ぜひ立ち寄ってほしい夜景スポットの穴場です」

3:現代的な都市の光と闇

「JR上野駅周辺」

上野恩賜公園から遊歩道で線路を渡ると、上野駅の浅草側に出ることができる
丸々もとおさん
丸々もとおさん
「上野でのアート&カルチャー体験の締めくくりには、上野駅周辺の夜景も振り返ってみてほしいです。JR上野駅の公園側と入谷側をつなぐパンダ橋を渡ると、広々とした空中遊歩道のペデストリアンデッキが見えてきます」
西郷会館をリニューアルしたUENO3153の近くからは、JRの列車やアメ横の光芒を眺めることができる

ーー樹木に囲まれた公園とは違ったシャープな雰囲気ですが、どこか懐かしさも。

丸々もとおさん
丸々もとおさん
「かつて上野駅は“東京の玄関口”と呼ばれていましたが、夜の闇に浮かぶ駅舎が“東京の夜景の原体験”という方も多いはず。近年リニューアルを行いましたが、適度にレトロな意匠を残すことで、さまざまな世代にも親しまれています」

上野の夜景の多くは遊歩道から眺めることができ、無料なのも嬉しいポイント。明るく庶民的な昼の顔とはひと味違う趣で楽しませてくれる夜の上野恩賜公園。建物や歴史が造形する夜の美しさも目に焼き付けてはいかがだろうか。(開園時間/5:00〜23:00)


「東京国立博物館」
所在地/東京都台東区上野公園13-9
開館時間/9:30~17:00(入館は16:30まで)、毎週金・土および11月3日(日)、11月4日(月)は21:00まで開館。2019年9月20日(金)、21日(土)は、22:00まで開館。※入館は閉館の30分前まで。時期により変動あり
休館日/月曜日(祝・休日の場合は翌平日に)、年末年始
ゴールデンウィーク期間とお盆期間中は、原則として無休


「国立西洋美術館」
所在地/東京都台東区上野公園7-7
開館時間/9:30~17:30 金・土曜日9:30~20:00 ※入館は閉館の30分前まで ※その他、時間延長期間があります。詳細はHP参照
休館日/月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始 ※その他、臨時休館日あり。詳細はHP参照


取材メモ/上野の夜のお楽しみといえば、東京国立博物館(通称:トーハク)で行われるビアガーデンイベントの「トーハク BEER NIGHT! 2019」。2019年は7月26・27日(金・土)の2日間。営業時間は15:00~21:00(オーダーストップ 20:30)となっています!

撮影(東京国立博物館・屋外)=伊原正浩
構成・取材・文・撮影=杉山元洋

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