群馬 地域の人々に愛され続ける桐生市とみどり市の銘菓・花ぱん

群馬 地域の人々に愛され続ける桐生市とみどり市の銘菓・花ぱん

2019/07/06

桐生市で生まれ、みどり市を含めた地域の郷土菓子として、長きにわたり親しまれている花ぱん。創業からの味を守り続ける、老舗和菓子店・小松屋の宮川麻里さんと、銘菓のおいしさを広める活動を続ける人たちに、花ぱんの歴史と魅力を聞いた。

中広

中広

神社の土産菓子として江戸時代後期に誕生

さくさく、ふわふわした不思議な生地の食感と、口中に広がる甘み。小ぶりな見た目とは裏腹に、食べ応えのある焼き菓子、花ぱんは、桐生市とみどり市の銘菓だ。

見た目は円形でクッキーや煎餅に近いが、噛み応えはしっとりとしていて甘食のよう。全体にまぶした砂糖の蜜が、食感を変えるアクセントになる。その味に、夢中になる人も多い。

花ぱんが生まれたのは、江戸時代後期の嘉永元年(1848年)。桐生市で創業した和菓子店・小松屋本店によって考案された。地域の総鎮守・桐生天満宮の神紋である、梅の花をかたどっているのが特徴。製造方法や味が多様化した現在でも、この形は多くの和菓子店で受け継がれている。

「もともとは、健康を祈って作られた、神社の土産菓子だったと聞いています」と話すのは、小松屋の代表・宮川麻里さん。同店は、小松屋本店からのれん分けされて、明治29年に開店して以降、現在まで120年以上にわたり、花ぱんの味を守り続けている老舗和菓子店だ。

宮川麻里さん

宮川麻里さん

小松屋代表

桐生天満宮は、菅原道真公を祭神としており、学業成就に利益があるとされる神社。花ぱんが糖分を重視しながらも食べやすく、満腹感を得られる作りなのは、同社にあやかり、勉学に勤しむ人でも夜食にできるように考案されたからだという説もある。

しかし、当時の市民にとって、砂糖は高級品。花ぱんは上流階級の人々だけが食べられるものだった。変わり始めたのは、昭和に入ってから。日本有数の機織りのまちである桐生市に、地方から多くの人々が訪れていた頃だ。帰郷の土産品として重宝されると共に、そのおいしさが少しずつ大衆に広まっていった。

やがて、材料も手に入りやすくなり、徐々にいろいろな和菓子店で売られるようになる。作り方や材料の違いから、硬さや味に店ごとの違いが出るようにもなった。後にみどり市となる大間々町にも、小松屋本店から独立した、こまつ屋が開店して元祖の味を継承。花ぱんは現在でも2つの市で親しまれ続け、桐生市とみどり市で合計16の和菓子店が、それぞれの味を連綿と守っている。

銘菓を愛する人々の協力で歴史と味を次代に伝える

花ぱんの作り方は、至ってシンプルだ。基本材料は卵と砂糖、小麦粉のみ。混ぜて生地を作り、オーブンで焼き上げる。その上から砂糖を溶いた蜜をかけ、乾燥させる。材料の配分や焼き時間、隠し味などのわずかな違いが、店舗ごとの個性を生み出す。

昔ながらの素朴なお菓子、花ぱん

宮川さんは、毎朝5時に起きて、約1200個の花ぱんを作っている。休みなく続けられるのは、「花ぱんへの愛情ですね」と一言。しかしかつては、それほど思い入れがなかったのだと振り返る。考えが変わったのは、高校卒業後。家業を手伝うようになり、和菓子職人の道へ進んでからだ。

実家の小松屋で働きながら、調理師学校に通って免許を取得し、やがて店舗を切り盛りするようになった宮川さん。製造と販売を繰り返す日々、接客中に出会う人々が、花ぱんへの思いを深めるきっかけになった。

学校帰りに毎日買いに来る高校生、園児の初めてのお使いと、それを見守る若い夫婦など、さまざまな人が花ぱんを求めて来店する。「100歳を迎えた方から、子どもの頃に食べた味を探しているという問い合わせもありました」。老若男女の心に残る味。それを作るやりがいを感じ、同時に後世へ伝えていかなければ、という気持ちも強く抱いた。

近年は若者向けに、花ぱんの周りにチョコレートをコーティングしたものも登場
キャラメル味、桑茶味など、バリエーションを増やして販売する店舗も増えてきた

現在、和菓子業界全体が後継者不足に悩まされており、小松屋も例外ではない。それでも、1人でも多くの人に花ぱんの魅力を伝えるために、今後も作り続けたいと前を向く。

一方で、市内の和菓子店と協力し、花ぱんを使ったまちおこしイベントを仕掛ける人も出てきた。お笑い芸人・ワンクッションとして活躍する傍ら、桐生市の活性化活動を行う、佐藤涼平さんと田部井大さんだ。多種多様な花ぱんを1つの会場に集めて、それぞれの味を楽しめる、花ぱんまつりを自主的に定期開催している。

お笑い芸人のワンクッション(右・佐藤涼平さん、左:田部井大さん)が主催する花ぱんまつりは、毎月第1土曜日、machiyaマルシェ(桐生市本町1-1-4)で開催。多いときは、600人以上が訪れるという

佐藤さんは桐生市出身で、幼い頃から花ぱんが大好物。「花ぱんを好きな人、作りたいと思ってくれる人が少しでも増えてくれたら嬉しいです」。いつか都内でもイベントを起こし、おいしさを広めていきたいと笑う。

みどり市では平成28年、市制施行10周年を記念した花ぱんの催しを実施。3万個を列にして並べ、世界一長いケーキとしてギネス世界記録Ⓡに挑戦したのだ。見事認定され、参加者は大いに盛り上がった。花ぱんは、まちの活気づくりにも一役買っている。

多くの人に愛され、支えられて続いていく、花ぱんの歴史。今後はどんな未来を紡いでいくのか、これからも楽しみにしたい。

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中広

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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