広めたいのは古材を当たり前のように再利用する新しい文化。

2019/07/20

広めたいのは古材を当たり前のように再利用する新しい文化。

空間デザイナーとして活躍してきた東野氏は、空き家が増え資源が無駄になっている問題を解決するため、世界的に知られる建築建材リサイクルショップ『ReBuilding Center』の日本版『ReBuilding Center JAPAN』を長野県諏訪市にオープン。お話を聞きました。

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広めたいのは古材を当たり前のように再利用する新しい文化。

木枠の窓を組み合わせてつくった壁の前に立つ東野唯史氏

東京・新宿から特急を利用すれば2時間30分ほどで到着する長野県諏訪市。昨年秋、JR上諏訪駅から徒歩約10分の場所に、古材の販売などを行う『ReBuilding Center JAPAN』がオープンしました。仕掛けたのは、空間デザイナーとして活躍してきた東野唯史(あずの ただふみ)氏。ここでは『ReBuilding Center JAPAN』に関することを中心に話を聞きました。

大きさごとに整理されている1階の古材売り場

広大な売り場にレスキューした古材や古道具などがぎっしり並ぶ。

レスキューした古材でオリジナルのプロダクトを制作

建設会社が使っていた3階建ての古いビルをリノベーションして誕生した『ReBuilding Center JAPAN』(以下、リビセン)。1階のオープンスペースには、家屋や店舗に使われていた梁や柱、板材といった古材が整然と並んでいます。小さな板なら価格は300円以下といった具合に、気軽に購入できるのが特徴です。
「古い建物が解体され、本来なら処分される予定だった古材や古道具を引き取りに行くことを私たちはレスキューと呼んでいます。引き取りに行ったものは、売れる状態にして店頭で販売。“ReBuild New Culture”という理念を掲げ、古いものがごく当たり前に再利用されて、次世代につながっていく文化をつくっていきたいと思っています」と、東野氏がオープンした意義を説明してくれました。

リビセンには3つの部署があり、レスキューした古材などを販売するビルダーズセンター、カフェやイベントなどを担当するカルチャーセンター、店舗などの空間デザインを手掛けるデザインセンターがあります。1階のカフェでは、床や壁、テーブル、カウンターなど、様々なところに古材が使われています。その狙いは「カフェは古材屋に来てもらうきっかけづくりのため。店内には古材で作ったものをたくさん置いて、その魅力に触れてもらおうと思って」とのこと。

2階と3階にはレスキューした家具や建具、古道具などがぎっしりと並びます。全ての売り場面積を合わせると約1000平方メートルもの広さがあり、様々な品々が並ぶ様は圧巻。もちろん、すべて普通に使えるものがほとんどで、ユーズドショップで掘り出し物を探すような感覚で楽しむことができます。

カフェのカウンターには様々な古材を使用し、面白さをアピール
古材の魅力に触れてもらうためにつくったカフェ

古材の再利用の原点は、世の中をよくするためのデザイン。

様々なデザインのユーズドの椅子も多数販売しています

リビセンを立ち上げる前、唯史氏と奥さんの華南子(かなこ)氏は『medicala(メヂカラ)』という空間デザインユニットを結成し、ゲストハウスや飲食店などの空間づくりを仕事にしていました。全国各地をまわっているうちに気が付いたのは、空き家になって解体処分される建物の多さ。「僕たちにできることは何だろうって考えついたのが、解体される建物から出る古材などを再利用する仕組みをつくって資源を循環させていくこと」と、リビセンの理念について語ってもらいました。

東野氏が社会的意義のある活動に目覚めたのは、学生時代までさかのぼります。「プロダクトデザイナーの川崎和男先生から、“デザインで世界をよくしろ”という話をよく聞かされていたので、世の中のためになるデザインをしたいとずっと思っていました。でも、卒業後は広告業界で働いていたので、社会のために必要なデザインに触れる機会は少なかった」と当時のことを思い出します。

そして、出会ったのが『Design for the other 90%』。全世界の人口の90%を占める発展途上国の人たちに向けたプロダクトデザインを紹介した本で、中でも東野氏が最も感銘を受けたのが『Qドラム』。転がすことで水を運ぶ労働を軽減させるというプロダクトで、発展途上国における貧困問題をデザインが解決するという格好の事例として大きな話題となりました。この後、東野氏は勤めていた会社を辞めて世界一周の旅に出ます。その理由は「『Qドラム』は、発展途上国の人たちを取り巻く状況を知っていないと思いつかないデザイン。社会の問題を自分で体験しなければ始まらない」というものでした。

「古材の循環で資源が守られる」と説く東野氏
東野氏が大きな感銘を受けたという『Qドラム』
発展途上国の人たちに向けた『Design for the other 90%』
奥さんの華南子氏は、カフェでの接客や調理を担当

ポートランドの『ReBuilding Center』で見た、古材を取り巻く理想の形。

釘抜きハンマーを描いた『ReBuilding Center JAPAN』のロゴ

実はリビセンの本家は、アメリカ・オレゴン州ポートランドにある『ReBuilding Center』(以下、本国リビセン)です。多数のボランティアの手を借りながら運営されているNPOで、アメリカはDIYが盛んなため、一般の人たちが普通に古材を購入してDIYに利用しています。

新婚旅行の際に訪れた東野夫妻は、大量の古材に圧倒されながらも、古材を持ってくる人や古材を買いに来る人で賑わっている様子を見て、自分たちが理想とする形がそこにあったといいます。「帰国してから、メールを通じてリビセンを日本でもやりたいってメッセージを送ったらすぐに快諾してくれました」と、日本のリビセンが誕生する話はとんとん拍子で進んでいきました。

東野氏が本国リビセンにこだわったのはなぜなのでしょうか。その答えは、「空き家がどんどん増えて資源が無駄になっている。この問題に向き合うには世界的にも知名度のあるアメリカのリビセンが、日本にも誕生したという話題性があった方が多くの人に問題を認識してもらえたから」とのこと。古材の価値に早く気付いてもらうためにも、本国リビセンのネームバリューが必要だったのです。

また、東野氏と本国リビセンの価値観は、あらゆる面で一致。「この先、僕たちが考え方などの軸を見失いそうになっても、ポートランドに行けば答えがあるというのは心強い。アメリカは日本の20年くらい先を行っているので、僕たちの目指す未来はアメリカのリビセンにあります」と、話してくれました。

一般の人にも使いやすいサイズを揃えているのが特徴

みんなが真似できることを提示しないと、文化として広まらない。

梁や柱は木の種類やサイズ別に並べ、選びやすくなっています

リビセンでは、古材の再利用を広めるために様々なことを行っています。そのひとつがDIYをテーマにしたワークショップの開催です。木箱やベンチ、キャンプテーブルなど、古材を使ったものづくりを体験することで、古材の魅力に触れてもらおうという狙いです。材料や工具などはすべて用意されていて、スタッフが丁寧に教えてくれるので、全くの未経験でも問題ありません。

DIYに挑戦してもらうための工夫として、東野氏はこんな例をあげてくれました。「1階には古材を利用してつくった椅子などを置いていて、例えばこの製品をオーダーすると4万8000円ですが、自分でつくったら材料費の1万8000円で済みますということを明記。これまで、お金の有無がいいものを手に入れられるかどうかの基準でした。

しかし、自分で手を動かせば安くていいものが手に入るといった価値観も広めていきたい」と、DIYの普及にも力を入れます。また、販売している古材は、最も大きなものでもふたりで持つことのできるサイズまでという基準を設けています。これも一般の人たちが使いやすいものでないと、古材の再利用は広まらないという考えによるもの。

「一般の人たちが真似してみたいと思うことが大事」と力説するように、古材が当たり前のように再利用されて、次世代につながっていく文化こそが“ReBuild New Culture”というわけです。

3階建ての建物を丸ごとリノベーションして使用
カフェの席は古材売り場を見渡せるように工夫されています
カフェにある大テーブルは古材を組み合わせてつくった大作

リビセンが全国へ広がり、古材の需要が高まる将来を目指して。

この日のワークショップは、ダイニングテーブルづくり

リビセンがオープンして1年と少し経ちましたが、手ごたえはどうでしょうか。「今はもともと古いものが好きな人が来店している状況。でも、レスキューって言葉を知らなかった人がフェイスブックで使っているのも見るようになったし、僕らの取り組みは徐々に広がっているのを実感しています」と、東野氏は予想よりも早く成果が出ていることを感じているようです。

今後の取り組みとしては、「空き家が増えていく時代に対処するにはレスキューする母数を増やすことが求められます。レスキューできる人や古材を使いたいという人を増やすことが大事で、古材を使いたい人が増えれば、そこに需要が生まれて、需要が供給を上回ると供給する業者も増えるはず」と語ってくれました。

その先にあるのは、日本中にリビセンができて、多くの人たちで賑わっている姿。そこまでいけば、古材を再利用することの価値自体も大きく高まっていることでしょう。

女性ひとりでも気軽に参加できるワークショップ

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