全国茶審査技術競技大会で全国3位の齋藤淸さんが営む埼玉の茶店

2019/07/17

全国茶審査技術競技大会で全国3位の齋藤淸さんが営む埼玉の茶店

埼玉県久喜市で日本茶の販売店を経営しながら、セミナー講師としても活躍する人がいる。日本茶の奥深さや良さを知ってもらおうと、活動する齋藤淸さんに話を聞いた。

中広

中広

17歳から茶の大会へ出場し30歳で全国3位に入賞

久喜市栗橋の住宅街の一角にある斎藤茶店。同店を営む齋藤淸さんは、全国茶業連合青年団が主催する全国茶審査技術競技大会の6段と、日本茶インストラクターの資格を持つ茶のプロフェッショナルだ。

齋藤さんが自宅で育てている茶の木の新芽

齋藤さんと茶の縁は大正時代初頭、齋藤さんの祖父が春日部市内で茶畑を作ったのに始まる。第2次世界大戦後の1948(昭和23)年、生活必需物資統制令の解除で茶の売買が可能になった。それを機に、齋藤さんの父が祖父の茶を売り始めて店を構え、やがて齋藤さんは取引先だった東京都の茶問屋に就職した。

齋藤淸さん

齋藤淸さん

斎藤茶店店主・全国茶審査技術競技大会3位・茶審査技術6段位

勧められるまま、茶の種類を見分ける技能を競う、全国茶審査技術競技大会の東京大会へ出場したのは17歳のとき。競技の一つである茶歌舞伎では、25点満点中6点と散々な出来だったと、齋藤さんは笑う。

茶歌舞伎とは、5種類の茶葉1種類ずつを熱湯約20㏄で1分半煎出したものの味をみて、産地名を当てるもの。闘茶、または服用による生産地鑑別競技ともいう。一つ確かめるたびに回答し、撤回はできない。これを5回繰り返して正解の数を競う。

東京大会に何度も出場するうちに上位入賞するようになり、競技が面白くなってきたという齋藤さん。「お茶は、あまり味わうと次の味に差し障ります。時には、飲んだふりをしたり、小さな声でうんと言ったりもしますよ」と、周囲の人を相手に駆け引きもすると教えてくれた。

大会では他に、茶葉から産地を当てる産地別鑑定、生産時期を当てる茶期別鑑定、香りや味から茶の木を当てる品種別鑑定などの種目で競い合う。「特別な練習はしませんでした。仕事が練習の延長でしたから」と齋藤さんは話すが、めきめき力をつけ、何度も東京大会で優勝して全国大会へ出場するまでになった。

全国茶審査技術競技大会で行われる茶期別鑑定の様子を再現する齋藤さん

大会の順位は競技の総合計で決められる。齋藤さんは30歳のときに、自己最高記録の全国大会3位入賞を果たす。また、大会では出題の8割以上を正解すると昇段でき、最高10段のうち6段にまで上がった。

茶は嗜好品だからこそおいしく味わってほしい

齋藤さんが会社を退職し、当時実母と妻で切り盛りしていた茶店を継いだのは7年前。いまでは店を経営する傍ら、日本茶インストラクターとして、あちこちのセミナーから招かれる日々を送っている。

インストラクターの資格は、日本茶の概要を学びたくて取得した。最近は一般女性で資格に挑戦する人も増えているといい、「日本茶は身近なものです。それが一つの資格として認められ、人気もあるのは嬉しいですね」と、ほほ笑む。

齋藤さんが講師を務めるセミナーでは、手作りの資料を使って説明をしながら、持参した数種類の茶の飲み比べをする。日本茶をおいしく味わってもらい、もっと好きになってもらいたいため、一番こだわるのが茶の種類に合わせた入れ方だ。説明をしながら実践していくので、セミナー参加者も興味津々だという。

「沸騰したての熱い湯を茶葉に注ぐと、苦味の元になるカテキンが出ます。お茶の香りや甘みを出すには、ぬるめのお湯のほうがいいんですよ」

煎茶のおいしさを引き出すには70〜80度くらいの湯で、玉露は香りよりも旨みを出したいので50度ほどのぬるい湯を用いて、じっくり入れる。

深蒸し煎茶の色は濃い緑、普通煎茶は薄い山吹色になる。これは茶葉を作るときに、蒸(ふ)かす時間が違うから。深蒸し煎茶は長く蒸かすので、葉がくずれて葉肉(ようにく)が溶け出し緑色になる。茶の成分に含まれるカテキンなどを多めに取りたいなら、深蒸し煎茶を選ぶとよい。

【深蒸し煎茶】茶葉が短く、細かい葉も混じっている。茶の色は濃い緑でまろやかなコクがある
【普通煎茶】代表的な煎茶の一つ。茶葉は、濃い緑で長く、細かい葉はない。茶の色は澄んだ山吹色をしている。良いものほど色は薄い
【全国品評会入賞手揉み茶】機械揉みの煎茶とは異なり、茶の一本いっぽんが針状になっており、茶の色は薄いが極上の手揉み茶独特の味を持つ

また、5~6月は新茶が出回る時期。「新茶とは、冬を越すための養分を蓄えて芽吹いた、味も香りも濃い一番茶を指します」と齋藤さん。「新茶と呼べるのは6月いっぱいまで。瑞々しい香りが、その時期を過ぎると消えてしまうのです」。

齋藤さんの話は、茶の味から作られ方、合う料理にまで及ぶ。知識は幅広く、話術によどみがない。さまざまに多くを学び、行き着いたのは、日本茶は嗜好品というシンプルな答えだったそうだ。

「嗜好品だから、お茶をベストの状態で入れて、おいしく飲みたい。皆さんが自分でおいしく入れて飲め、もっと日本茶が普及するといいなと思っています」

【手揉み茶の入れ方】手で茶器が持てるほどぬるくした湯を、葉が浸るくらい注ぐ。ふたをして葉が開くまで2分ほど待つ。平たい器は、齋藤さん特注の手揉み茶専用の絞り出しという急須
湯飲みに数滴ずつ落とすように注ぎ分ける。茶はとろみがあり、味はアミノ酸独特の甘みと強い旨みがある

しかし自身は休憩時の茶も、一息入れる前に状態や味を確かめてしまうと笑った。茶問屋に勤めてから今日まで、50年余りも茶に携わってきた齋藤さん。身につけた知識を生かしてこれからも、日本茶の良さを伝え続ける。

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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