国際大会の日本代表に選ばれた群馬のパン職人・大澤秀一さん

2019/07/21

国際大会の日本代表に選ばれた群馬のパン職人・大澤秀一さん

2年に1度フランスで開催されるパンの国際大会、モンディアル・デュ・パンの日本代表に、我がまちのパン職人が選ばれた。世界一の栄冠を目指すComme’N(コム・ン)のオーナー、大澤秀一さんの店を訪ねた。

中広

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自分の店を閉めて憧れのパン職人に弟子入り

国道17号線の緑町交差点近くに佇むカフェ、珈琲哲學の駐車場内に、小さなベーカリーがある。店の厨房でパンづくりに励んでいるのは、パン焼き場Comme ’N(コム・ン)のオーナー、大澤秀一さん。昨年10月に行われたパン職人のコンテスト、第7回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会で優勝し、国際大会の出場権を手にした。

モンディアル・デュ・パンとは、2年に1度フランスで行われる、パン職人が技術と品質を競う国際大会だ。挑戦者は、22歳以下の若手アシスタントとコンビを組み、大会に出場。ヨーロッパやアメリカ、中国など18カ国の代表が、2日間で100個以上のパンを作り、世界一を目指す。

現在、33歳の大澤さんは、高校卒業と同時にパン職人の道へ進む。父親からではなく、奈良県のパン店で、いちから技術を学んだ。

大澤秀一さん

大澤秀一さん

Comme’N オーナーシェフ

20歳の頃、実家である高崎市吉井町のベーカリー、パリジャンに戻った大澤さんは、父親のもとで技を磨く。その後、前橋市の農産物直売所から声がかかり、25歳で独立した。

ところがわずか1年後、直売所の撤退を機に、大澤さんの店も閉店に追い込まれる。他所への移転話もあったが、大澤さんは職人としての道を極めるため、もう一度パンづくりの基礎から学び直したいと考えた。

18歳の頃、著名なパン職人、西川功晃(たかあき)さんの著作、『パンの教科書』を読み、その技に憧れていたという大澤さん。面識は全くなかったが、西川さんのもとで学びたいと心に決めていた。電話をしても断られる可能性が高いと考えた大澤さんは、直談判しようと決意する。2012年6月、店をたたんだその足で夜行バスに乗り込み、兵庫県神戸市へと出発。西川さんが経営するベーカリー、サ・マーシュを目指した。

幸運にも西川さんと対面でき、採用テストを受けた大澤さんは、無事同店に採用される。しかし、腕前に多少の自信を持っていた大澤さんが思い知ったのは、辛い現実だった。「パンの丸め方やガス抜きなど、自分では出来ていたつもりでいましたが、全く身についていなかったのです」。

ゼロから再スタートした大澤さんは、赤ん坊を扱うようにやさしくパンに触れる西川さんの姿を見て、パンづくりの奥深さに気付く。パン職人の道を極めたい。大澤さんはその一心で、ひたすら修業に打ち込んだ。

カッターナイフでパンに切れ目を入れ、模様付けする大澤さん。繊細な技で、美しいパンが生まれる

半年後の国際大会へ向け技術向上に全力を注ぐ

西川さんの店で2年間勤めた後退職し、再度自身の店を持とうと準備に入った大澤さん。しかし、思うような場所は、なかなか見つからなかった。しばらくは、食品メーカーなどから依頼された新商品の開発や、アルバイトで生計を立てていたという。

そんな時、西川さんに誘われて出かけたのが、2015年にフランスで行われたパンの国際大会、第5回モンディアル・デュ・パンの応援ツアーだ。

パンの見た目や味はもちろん、栄養バランスや工程、職人同士のチームワークなど、多数の審査項目がある同大会。世界一厳しい基準といわれる国際大会を目にした大澤さんは、自分も挑戦したいと強く感じたという。

その後は腕を磨くため、日本有数のパティシエ・鎧塚俊彦さんがオーナーを務める神奈川県小田原市のレストラン、一夜城ヨロイヅカファームで、ベーカリー部門を担当。一流パティシエの繊細な技を間近で見ながら、自身のパンづくりに生かした。

やがて、大会準備に専念したいと考えるようになった大澤さんは、心おきなく新作づくりに励むため、店舗探しを再開。高崎市に帰省して物件を探していた頃、声をかけてくれたのが、かねてから応援してくれていた、珈琲哲學の斎藤浩社長だ。

昨年2月、大澤さんは同店の駐車場内で、パン焼き場Comme’Nをオープン。小田原の店で知り合った、若手パティシエの久保田遥さんを助手に迎え、二人三脚で世界一を目指す日々が始まった。

パン焼き場Comme’N

オープンから1カ月ほどは、売り上げが3000円ほどしかない日々も続いたという同店。しかし、地元メディアなどで世界大会に挑戦するという話題が報じられると、少しずつ客足も伸びる。「栄養ドリンクを差し入れしてくれるお客様もいて、大いに励まされました」。

昨年行われた日本代表選考会では、国際大会に同行する22歳以下の助手を選出する最優秀若手ブーランジェコンクールも同時開催。同店の久保田さんが優勝し、ダブル優勝という快挙を成し遂げた。「2人そろって世界大会への挑戦権を獲得し、気持ちが引き締まりました」と大澤さんは前を向く。

昨年10月に大阪で行われた第7回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会
大会では、助手の久保田さん( 写真右)と2人で、1 0 0 個以上のパンを焼き上げた

今年10月に行われる国際大会まで約半年となった今、店頭には大会出品を意識した商品が並ぶ。大会に向けて試行錯誤を繰り返し、日々進化しているパンを味わえるのも、地元ならではの楽しみだ。

製法や原料の配合を調整しながら、日々進化を続けるC omme’Nのパン。自家製天然酵母がパンの味わいに奥深さを加える

世界一のパン職人を目指し、全力で挑む大澤さん。若きパン職人の挑戦を心から応援したい。

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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