純喫茶発祥の地・上野で見つけたアート&カルチャーに似合う3店

特集

上野でアート&カルチャーな気分を高める過ごし方。

2019/07/15

純喫茶発祥の地・上野で見つけたアート&カルチャーに似合う3店

喫茶店発祥の地であり、いまも数多くの純喫茶が建ち並ぶ上野界隈。上野の山の美術館や博物館を鑑賞した後に立ち寄りたい、アートとカルチャーを感じさせてくれる名店を、東京喫茶店研究所二代目所長の難波里奈さんに紹介してもらった。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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アート&カルチャーには純喫茶がよく似合う

上野にはアートな気分をより豊かにしてくれる逸品を提供する店も(写真はウエスタン北山珈琲店)

1888年に日本初の喫茶店「可否茶館(かひさかん)」が開業し、今なお多くの老舗喫茶店が人気を集めている上野。「上野は、昔なじみはもちろん、純喫茶の魅力を知った若い人たちからも、同じ熱量で愛される名店が軒を連ねる“純喫茶の聖地”です」と話す難波里奈さんに、上野の美術館や博物館帰りに寄りたい3軒を紹介してもらった。

\今回訪れたのはこの3軒/
1:「古城」(日比谷線上野駅から徒歩約2分)
2:「ウエスタン北山珈琲店」(JR上野駅入谷口から徒歩約5分)
3:「フルーフ・デゥ・セゾン」(銀座線末広町駅から徒歩約2分)

難波里奈さん 

難波里奈さん 

東京喫茶店研究所二代目所長

難波里奈さん
難波里奈さん
「上野は大好きな純喫茶だけでなく、美術館や博物館、上野動物園など、自分を元気にしてくれる特別な場所ばかり。『王城』『丘』『ギャラン』『マドンナー』などなど、数えきれないほどの愛すべき純喫茶がありますが、今回は“アートな気持ちに寄り添うお店”を選びました。上野でのアート&カルチャー体験をより充実させる手助けになれば幸いです」

地下に現れる幻想宮殿

1:「古城」(日比谷線上野駅から徒歩約2分)

東京メトロ日比谷線の上野駅1番出口から徒歩約2分、賑やかな浅草通りの近くにある「古城」
難波里奈さん
難波里奈さん
「最初にご紹介するのは、1963年創業の『古城』さんです。15年位前に初めて来ましたが、上野の喧騒から地下に降りた時、内装もステンドグラスが放つ光も全てが輝いていて、『こんな異空間があるんだ』と、心底驚きました」

\ドアノブまでアート/

ドアノブの意匠など細部まで美しい造形が楽しめる
地下に降りる階段からすでに、純喫茶とは思えない豪華な雰囲気
難波里奈さん
難波里奈さん
「お店の調度をデザインしたのは創業者の松井省三氏。ステンドグラスやシャンデリアなどは特注品で、職人さんは『一万円札を壁に敷き詰めるほど高価』だと驚いたのだとか。現在は娘さんが引き継がれていますが、当時が一番美しいと信じているため、手を加えず大切に維持しているのだそうです」
6人の職人で設置したというシャンデリア。「初めて来た時から雰囲気が全く変わらないのが嬉しいです」(難波さん)
難波里奈さん
難波里奈さん
「コーヒーもおいしいですが、アート鑑賞や散歩で疲れた体をリフレッシュしてくれる『レモンスカッシュ』(650円)がお気に入りです。生レモンをまるごと1個絞っているのでとても爽やかなんですが、添えられたガムシロップで好みの甘さにできるのもいいですね」
心地いい酸味のレモンスカッシュ(650円)と、優しい味のミックスサンド(単品870円、コーヒーか紅茶つき1300円)
難波里奈さん
難波里奈さん
「この店が大好きな理由の1つが、食事がおいしいこと。今回オーダーした『ミックスサンド(単品870円)』は、自家製マヨネーズを使ってカラシが控えめなのが嬉しいんです」
サンドイッチは自家製マヨネーズを使い丁寧に手作りされる
難波里奈さん
難波里奈さん
「美術館や博物館は、お昼時になると空くことがありますよね。そんな時、鑑賞を優先してランチタイムを外しても、ここなら観終わった後でもおいしい食事が楽しめます。軽食ならサンドイッチ、しっかり食べたいときは昔ながらの『ナポリタン(コーヒーか紅茶つき1180円)』もおいしいですよ」
ヨーロッパだけでなく、エジプトを意識したコーナーも
ホットコーヒーは、ニッコー製の名作カップ「山水」で提供される。かつてビートルズが来日公演を行った際、武道館の楽屋で使ったのもこの「山水」
難波里奈さん
難波里奈さん
「何度来ても賑やかな上野とは思えない、静かで清らかな気持ちになれる場所だと感じます。座席の数に余裕があるので、友達と一緒でもあまり待たずに座れるのもいいですね。ここを覚えておくだけで心に余裕をもってアート鑑賞ができると思います」

マスターの淹れるコーヒーと待ち合わせする日

2:「ウエスタン北山珈琲店」(JR上野駅入谷口から徒歩約5分)

北山富之さん(写真左)と、雅一さん親子で営む「ウエスタン北山珈琲店」。「『コーヒーに打ち込みたいので取材はご遠慮したい』ということでしたが、特別に少しだけお話をさせていただきました」(難波さん)
難波里奈さん
難波里奈さん
「2軒目は、東京国立博物館前の通りを入谷方面に降りると見えてくる『ウエスタン北山珈琲店』さんです。店内に入ると、『入り口の張り紙はお読みいただけましたか?』と優しく出迎えてくれます。独自のお作法があることで知られるお店ですが、その説明はコーヒーを飲んでからさせてください。『はい』と応えると、にこやかに迎えてくれます」
「ーーおことわりーー おしゃべり、携帯電話、読書、事務処理、待ち合せ、30分以上の長居」といった注意書きがされた張り紙を必ず読んでから入店したい
難波里奈さん
難波里奈さん
「今回は、上野のアートを体験した後ということで、このお店の最高峰、『雅セット(3700円)』をいただきたいと思います」
飾り気のない静かな店の雰囲気がコーヒーへの思いを高めてくれる
難波里奈さん
難波里奈さん
「携帯電話をしまい、目を閉じて静かな音楽に耳を傾けます。琥珀色をした店内から眺める外の景色は映画のようで、少しだけ感じていた緊張が和らぐにつれコーヒーへの恋しさが募っていきます」
「雅セット」(3700円)の最初に出される温かいコーヒーの「雅」。長期熟成した豆をネルドリップしたもの
難波里奈さん
難波里奈さん
「待ちに待ったコーヒー『雅』が運ばれてきました。普通のお砂糖と粒の荒いクリスタルシュガーのほか、氷で冷やされたミルクピッチャーが添えられますが、メニューの飲み方にある通り、最初はブラックでいただきます。砂糖が2種類あるのは、ゆっくり溶けるクリスタルシュガーを好む方もいるからなのだそう。カップが半分ほどになったら、砂糖を加えて楽しみます」

\2杯目はアイス/

2杯目に提供されるアイスコーヒーの「雫」は、「雅」よりさらに濃厚
難波里奈さん
難波里奈さん
「2杯目は、霜がつくほど冷やされたショットグラスに注がれた『雫』。濃厚なコーヒーに浮かべられた上質なミルクを唇で押さえるように口に運ぶと、濃厚なコーヒーと豊かな甘みが立ち上ります。『雅』も『雫』も、感動的なおいしさです。では、あの注意書きのことを教えてもらえますか?」
マスター・北山富之さん
マスター・北山富之さん
「コーヒー豆は農園で育まれ、大勢の人の手を経てこの店にやってきます。もしコーヒーを淹れる私が最後の最後にいい加減な仕事をしたら、全てが台無しになってしまいます。ですから、誠心誠意これまでに積み重ねてきた全ての力をカップ1杯に注ぎ込みたいんです」
自家焙煎したコーヒー豆の販売も行う。(100グラム900円〜)
北山さん
北山さん
「入り口の張り紙は、お客さんにうちを選んでもらうための自己紹介。店に入った後に不快な思いをしないよう、無粋は承知で書き出したんです」
難波里奈さん
難波里奈さん
「その理由、コーヒー好きとして理解できます。芸術の域にあるこちらのコーヒーを全身全霊で味わうと誰かに教えたくなりますが、1人で訪問して最後の一滴まで自分のためだけに過ごしたい貴重なお店。マスターの淹れるコーヒーとの対話をじっくりと楽しんでくださいね」

甘く爽やかな果物の芸術を味わう

3:「フルーフ・デゥ・セゾン」(銀座線末広町駅から徒歩約2分)

蔵前橋通りから路地に入った静かな場所にある「フルーフ・デゥ・セゾン」。2017年には2階も客席に改装。カウンター席もあるので1人でも気軽にパフェを楽しめる
難波里奈さん
難波里奈さん
「最後はデザートを楽しめる『フルーフ・デゥ・セゾン』さんをご紹介します。お店の名前の通り、季節のフルーツをふんだんに使ったパフェが名物で、アーティスティックな見た目でも楽しませてくれる『フルーツパフェ(2300円)』が大人気です」
16〜17種類の果物が楽しめる「フルーツパフェ」(2300円)。リニューアル前は一段だった果物を、種類が増えたために螺旋状に盛りつけるようになったのだとか
難波里奈さん
難波里奈さん
「『フルーツパフェ』は2019年の6月にリニューアルしたばかりで、これまで約12種類だった果物が、16〜17種類も盛りつけられています」
「果物は大きさや形に個性があるため、食べるお客様を想いながら一つひとつ妥協せず盛りつけています」と話す店長の星野利江子さん(写真)をはじめ、スタッフは女性中心で店内は明るい雰囲気
難波里奈さん
難波里奈さん
「季節や旬によって果物は変わりますが、大きくカットされた果物は3種のシャーベットの上に盛られ、その下はダイスカットの果物で満たされます。最後まで味も見た目も飽きさせない気配りはまさにアートと言えます」
マンゴーやメロンなど“食べごろ”の果物を使ったパフェメニューも用意される
難波里奈さん
難波里奈さん
「作り置きせず注文が入ってから果物をカットするので、混んでいるときは提供まで45分ほどかかるのも頷けます。美術展で出会った作品を思い出したり、図録を眺めたりしながら待つ価値があるパフェをぜひお楽しみください」

三者三様の芸術性と文化の香りを感じさせてくれる純喫茶。美術館や博物館帰りの休憩はもちろん、純喫茶のハシゴをしたくなる名店だと言えるだろう。


取材メモ/飲み物や食べ物だけでなく、建物やお店の方も魅力的な三軒。アート帰りでなくても立ち寄りたくなる店ばかりでした。

撮影(古城)=伊原正浩
構成・取材・文・撮影=杉山元洋

\上野で過ごすアート&カルチャーなひととき/

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