「蕎麦の神様」直伝の丹念な仕事の結晶! 自家製粉の二八/愛媛

「蕎麦の神様」直伝の丹念な仕事の結晶! 自家製粉の二八/愛媛

2019/08/17

遠く山並みを望むのどかな場所にある「いよ翁」は、全国から蕎麦通が訪れる店。「達磨」や「翁」の屋号で蕎麦屋を営み、「蕎麦の神様」として知られる高橋邦弘さん直伝の二八は、喉越しが良く、すっきりしたつゆとの相性抜群。店主の人柄を感じさせる逸品を紹介します。(タウン情報まつやま)

Yahoo!ライフマガジン編集部

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愛媛・松前町で、全国の蕎麦好きから支持される日本蕎麦

県都・松山市中心部から車で約30分、周囲を田畑で囲まれた田舎にポツンと佇む「いよ翁」。目立つ看板はなく、風に揺れる暖簾だけが、ここが店であることを教えてくれます。まさに隠れ家と呼ぶにふさわしいこの店が、全国の蕎麦好きから支持される理由に迫りたいと思います。

師匠の店であった「達磨 雪花山房」をモデルにしたという外観はいたってシンプル
ライター 阿部
ライター 阿部
「四国のグルメライターとして、四国を駆け巡っているライター阿部です。仕事柄、おいしいものには目がなく、特に蕎麦やうどんなどの麺類は1日3食+おやつでも食べるほどの麺好き。そんな私が、プライベートでしばしば足を運ぶ1軒がここ『いよ翁』。店主の打つ蕎麦の大ファンなのです」

やっぱり蕎麦は喉越しの良い二八

ざるに盛り付けられる蕎麦は、薄くグリーン色をまとっています

「いよ翁」の蕎麦は、江戸前蕎麦の定番とも言える細打ちの二八。艶があり、香りが良く、二枚、三枚とざるを重ねるお客さまも少なくありません。

店主 笘居さん
店主 笘居さん
「こんにちは。口下手なので緊張しています」
ライター 阿部
ライター 阿部
「よろしくお願いします! 今日はいろいろ突っ込ませてください(笑)」

この店の実力を知るなら、まずは「お昼のおきまり」

前菜をつまみに蕎麦前を楽しむこともできる「お昼のおきまり」

メニューはいたってシンプル。蕎麦の香りや味わいを強く感じられる「ざる蕎麦」を基本に、蕎麦が二枚に一品が付く「通のおきまり(1580円)」、揚げたてプリプリの海老天が付く「天ざる蕎麦(1600円)」など。季節により温かい蕎麦もあります。おすすめは通年提供している「お昼のおきまり(1280円)」。季節感のある前菜も楽しみなのです。

大きな窓から望むグリーンが眩しい店内。小上がりの座敷もあります
地元の野菜や蕎麦の実などを中心に、季節の素材の滋味が楽しめる前菜。一品一品に手がかけられています
前菜をいただいている頃、厨房では細打ちの二八が湯がかれ……
冷水でキュッと締められて……
ざるに盛り付けられています

定石どおりのやや青みがかった細打ちの麺

「はい、お待たせしました」と頃合いよく運ばれてくるざる

運ばれてきたざるに顔を近づけると、蕎麦の良い香りが鼻孔をくすぐります。この風味を存分に味わうため、まずは薬味無しで軽くつゆに浸して手繰ります。口に入れた瞬間、ふわりと蕎麦の香りが広がり、程よくコシを残した蕎麦がつるりと喉を通ってまさに至福のとき! つゆはすっきりとした辛口。このつゆをまとうことで、蕎麦本来の甘みがいっそう強く感じられるのです。

ライター 阿部
ライター 阿部
「なんでしょう、このおいしさ! ペロリと平らげてしまいました」
笘居さん
笘居さん
「特別なことはしてないんです。旦那さんの教えを守っているだけですから」
清潔な白衣をスッキリと着こなし、笑顔を浮かべる笘居さん

笘居さんの師匠は、「蕎麦の神様」と呼ばれる日本を代表する蕎麦職人である高橋邦弘さん。笘居さんは敬愛を込めて、師匠を「旦那さん」と呼びます。「初めて旦那さんの蕎麦をいただいたとき、衝撃で言葉も出ませんでした」という笘居さんは、平日は別の仕事をしながら、当時の高橋さんの店があった八ヶ岳に休日だけ通う…という生活を10年間も続けました。そして平成22年、高橋さんから「いよ翁」の名を贈られて開業しました。

丁寧に下仕事をし、選別した蕎麦の実を自家製粉

ライター 阿部
ライター 阿部
「ここ数年は師匠から製粉の仕事も引き継いでいるとか」
笘居さん
笘居さん
「それまで一門の蕎麦屋の多くは、旦那さんが製粉した蕎麦の実(丸抜き)を使っていました。4年前に旦那さんが広島から大分に移住されたときに、その仕事を託されたんです」
ライター 阿部
ライター 阿部
「それだけ高橋さんからの信頼が厚いということですね!」
笘居さん
笘居さん
「いえいえ、うちは田舎なので敷地が広く、製粉所を置けたからだと思いますよ」
薄くグリーン色をまとった蕎麦の実

笘居さんは師匠の製粉の仕事を受け継ぎ、北海道や茨城、長野など全国9地域から「玄蕎麦(殻付きの蕎麦の実)」を仕入れ、石抜きして磨き、大きさを0.2mm単位で選別して石臼で挽いています。硬軟が異なる玄蕎麦の大きさを揃えることで味わいを安定させ、石臼の回転数や石臼に実を落とし込む量なども日々調整しているそう。

笘居さんが愛用している蕎麦打ちの道具。麺棒は黒檀でつくられたもの
店で使用する器や道具も丁寧にお手入れ。こんなところにも人柄が現れています
ライター 阿部
ライター 阿部
「実は私……蕎麦も好きですが、デザートの杏仁豆富も好きで……」
笘居さん
笘居さん
「ありがとうございます。あれは僕のオリジナルレシピです」
つるりと滑らか、程よい甘さの杏仁豆富は、蕎麦のしめにぴったり

「主人はプライベートではお菓子づくりもとても上手なんです」と話してくれたのは、修業時代から笘居さんを支えている妻のさおりさん。その言葉に照れながらも「僕は蕎麦のこと以外は、何もできない。妻やともに頑張ってくれているスタッフさんのおかげでここまでやってこられました」と笘居さん。「蕎麦の神様」に変則的な弟子入りが認められ、屋号をいただき、製粉を任されたのは、そんな実直で謙虚な人柄があってこそ……と痛感しました。

チームワーク抜群のスタッフたち。笘居さんの右側が妻のさおりさん

本来、高橋邦弘さんのお弟子さんは住み込みで技術を学ぶそうですが、当時、家庭を持っていた笘居さんは、「なんとか休日だけで」と頼み込んだそうです。ほとんど寝ずに運転して八ヶ岳まで行き、必死で技術を学んで愛媛へと帰ってくるという生活を10年も続けたとか。一筋に蕎麦道を歩む笘居さんの理想は「旦那さんの蕎麦」。そんな一途な人柄が、多くのファンを惹きつけている蕎麦を生み出す源泉なのでしょう。

取材メモ/営業は昼のみ。休日などは県外から来る人で行列ができることもしばしば。開店間も無くか、14時過ぎなら比較的待ち時間は少ないので狙い目です。アルコールメニューもあるので、蕎麦前からじっくりと味わうのもオススメですよ。

取材・文=阿部 美岐子 撮影=国貞 誠

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