蕎麦の実、建物、つゆ、水……。妥協できない男の蕎麦処/山梨

蕎麦の実、建物、つゆ、水……。妥協できない男の蕎麦処/山梨

2019/08/17

遠くからこの店を目的に山梨を訪れる人も多い「そば丸」。味はさることながら、店主の想いが縁と成す人気店を紹介。(フリーマガジン チュスマ)

Yahoo!ライフマガジン編集部

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蕎麦嫌いの少年が究めた、老若男女が「旨い!」と喜ぶ蕎麦

植木と敷石の美しさを味わいながら店内へ

山梨県甲州市、塩山。市街地から少し離れた山里にでんと構える「そば丸」。週末に訪れれば車が駐車場を埋め、店の前には人の列。家族や友人が山梨を訪れた時には、「ここに連れて行きたい」と思える蕎麦店だ。

蕎麦一筋30年の店主・藤巻一夫さん

古材と新品が賑わしく同居する、雪国生まれの建築

「縁があって譲りうけた」という、新潟生まれの空間へ
年季の入ったケヤキの柱が凛と立つ
山梨ではめずらしい曲がり梁

まずは土地と建物の話を。ここは、店主にとって3つ目の店。紆余曲折ある中、祈りながらたどり着いた場所。敷地のとなりにお稲荷さんがあり、店主は「ここで店を開店できたら、毎月お蕎麦をお供えにきます」と手を合わせていたそうだ。

店主 藤巻さん
店主 藤巻さん
「ここは標高が高く、水も凄く美味しい」
ライター 小栗
ライター 小栗
「水ですか?」
藤巻さん
藤巻さん
蕎麦は、蕎麦の実だけ良くてもダメ。それに見合った水が必要なんですよ。僕、井戸を掘りました」
ライター 小栗
ライター 小栗
「ええっ! そんなことまで!」
藤巻さん
藤巻さん
“自己満足”です(笑)。業者さんに『水が出るまで掘ってくれ』とお願いしました。相当掘ったと思いますよ。ブラジルまで突き抜けちゃうとこだったかもね(笑)」
ライター 小栗
ライター 小栗
「建物も他にはない雰囲気ですね」
藤巻さん
藤巻さん
「わざわざここにきて、何を求めて、何をしたかったのか。それを誰かに伝えるんだったら、まずは妥協なしに作り上げなければいけないと思って。自分が納得して大切にできるようにと求めたら、このような雰囲気になりました
熱い話を聞かせてくれる藤巻さん
今も毎月蕎麦を供えるお稲荷さん

蕎麦嫌いだった少年のもとに集まった、いくつもの「心」

打ちたての蕎麦
藤巻さん
藤巻さん
「蕎麦の実は、『蟻巣(ありす)石』で作った臼で挽きます。希少な石ですが、山梨県で多く採掘されるそうです」
ライター 小栗
ライター 小栗
「何か違うんですか?」
藤巻さん
藤巻さん
ジューシーな蕎麦になるんです。石に蟻の巣穴のような小さな穴が空いていて、その穴が摩擦熱を逃がしてくれるので、製粉時の乾燥を防げるのです」
茹でる前の蕎麦にもしっとり感がある
ライター 小栗
ライター 小栗
「ところで、藤巻さんはどうして蕎麦職人に?」
藤巻さん
藤巻さん
「お蕎麦がね、一番嫌いな食べ物だったから」
ライター 小栗
ライター 小栗
「ええっ!!」
藤巻さん
藤巻さん
「自分が一番嫌いな食べ物を、一番美味しく仕上げようと思って。誰もが『旨い!』という蕎麦を究めたいと思いました」
「一番好きな食べ物は寿司。その次は焼肉。その次は中華」
藤巻さん
藤巻さん
「でもね、ただ旨い蕎麦があるだけではダメ。それでは食材のための料理になってしまう。この料理を作ることで、どんな世界を作っていきたいのか。そこが大切なんです」
ライター 小栗
ライター 小栗
「なるほど」
藤巻さん
藤巻さん
「蕎麦を盛る竹ザルに富士山の竹を使ってみたり、うつわにはこの地の土を練りこんでみたり」
ライター 小栗
ライター 小栗
「素敵ですね」
藤巻さん
藤巻さん
「お金はありませんでした。でも、みんな『藤巻の頼みなら』と無理をきいてくれた。この店は、そういう『想い』の結晶です」
「そば丸」のためのうつわ

瑞々しく、香りの良い蕎麦を、地元の野菜素揚げと一緒に

「まずは蕎麦に何もつけずにそのまま食べて」と藤巻さん。水の美味しさと蕎麦の甘み。麺だけで凄く旨いことがわかる。つゆは、枕崎で獲れた鰹節と北海道産の昆布を使用し、すっきりとした味わいに仕上げられている。

藤巻さん
藤巻さん
定番は『旬菜の素揚げもり』(1350円税抜)です」
地元の野菜を用いた大人気メニュー
思わず写真を撮りたくなる鮮やかな膳
藤巻さん
藤巻さん
「僕はこの店を作っている時、お金がなくてナスばかり食べていて、ナスが大好き(笑)。だから素揚げナスたっぷりの『なすもり』(1350円税抜)も食べてほしい」
「なすもり」が味わえるのはナスが美味しい時期だけ
「なすもり」を実食! 素揚げナスが美味。続いてお蕎麦をずるずるっと
ライター 小栗
ライター 小栗
「こんなに瑞々しいお蕎麦は初めて! めちゃくちゃ美味しくて感動です。ナスもとろとろ」
藤巻さん
藤巻さん
「ありがとうございます。食べた人が感動してくれるのが一番嬉しい
『そば丸』のロゴはね、蕎麦を中心に様々な縁が結ばれることをイメージして、『そば』を『円』で囲んでいるんですよ。蕎麦を軸に僕たちが大切にしている店の全てを訪れる人が一緒に大切にしたくなるような、そんな店であり続けたいと思います」
蕎麦を中心に囲む人の輪をイメージしたロゴ

取材メモ/この店に関わる人みんな、自分の人生を生きて、感じて、行動しているという、「人の想い」の豊かさがありました。この「想い」を継承し経営することの困難と楽しさ、まだ変わっていくという覚悟を店主から感じました。

取材・文=小栗詩織 撮影=加藤広仁

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