【山口グルメ】長門ラガーマンのソウルフード「桃屋の肉飯」
2019/08/06
学生の頃の記憶と共にある“青春の味”。今回は山口県長門市のスポーツマンたちに愛され続ける、桃屋食堂の「肉飯(にくめし)」のお話をお届けします!
ながとと
中華丼?……あんかけ丼?……いいえ「肉飯」です!
「肉飯」は白菜と豚バラ肉によるシンプルな餡かけがたっぷりと乗った丼料理で、地元の学生スポーツマンに約40年の間愛され続けるソウルフードです。そんな「肉飯」のルーツや学生とのエピソードを、桃屋食堂のマスターである竹原さんに伺いました。
「肉飯」のルーツ
―肉飯が生まれたきっかけは何かあるんでしょうか?
- 竹原さん
- 竹原さん
- きっかけというかね、ルーツがあるんですよ。僕は神戸で料理の勉強をしていたことがあったんだけど、神戸のお店に肉飯というものがあって。
―桃屋さんのスタイルの肉飯が神戸にも?
- 竹原さん
- 竹原さん
- ウチのとはまた違うんです。神戸の肉飯はライスの上に餡がチョロっと乗っていて、それを崩しながら食べるんですよ。
―餡が全体にかかってるわけではないんですね
- 竹原さん
- 竹原さん
- そう。ちょうどカレーみたいにご飯と混ぜながら食べる感じで。それを僕は丼にしたんですが、まあこれが難しいんです。
―というと?
- 竹原さん
- 竹原さん
- まず丼にすること自体が難しくて。元の神戸スタイルは餡が塩辛く作ってあったから、ご飯全体にかかっていてもしょっぱくないように味を調整するのが大変でした。
―なるほど
- 竹原さん
- 竹原さん
- (神戸スタイルのように)辛く作るほうが楽なんですけどね、それをあえて丼にするっちゅうのが難しかったんですよ。
ラガーマンと肉飯
―肉飯と地元の学生ラガーマンたちとのエピソードも聞かせていただけますか? ラグビー部の子たちはみんな肉飯を食べていたとか
- 竹原さん
- 竹原さん
- 大体そうでしたね。だから、ラグビーの子が店に入ってきたらすぐに肉飯を作り始めるんですよ。
―えっ! オーダーも聞かずに?
- 竹原さん
- 竹原さん
- どんどん作らんと間に合いませんから。顔を見た瞬間にもう作り始めちゃう(笑)
―それはすごい!(笑)
- 竹原さん
- 竹原さん
- 肉の準備だけでも時間がかかるんですよ。開店前に肉の油抜きをしてるんですけど、そこに常連さんがフライングして来ると大変なんです。「もう入っちゃってもいいでしょ? ラーメンでいいから作ってくれない?」って言われて、そしたら後がもう詰まっちゃって(笑)
―そんなこともあるんですか
- 竹原さん
- 竹原さん
- 大変なんですよ?(笑) でもラグビー部の子はよく食べてましたね。肉飯の大盛を2杯食べる子もいたりして。
―普通サイズでもけっこう量があるのに、大盛を2つも?
- 竹原さん
- 竹原さん
- 今の器と比べたらちょっと小さいから、一つの量は違うんですけど、それでも2杯ですからね。ラグビーやバレー部とか、市内のいろんな学校の子がよく来てましたよ。
―そうだったんですね
- 竹原さん
- 竹原さん
- あの子らもよく食べてましたね。よくお店で鉢合わせて、バレー部の背の高い子が「お前、のけよ!」とかね。そんな感じでよく “ガッチン” してましたけど(笑)
―お店でそんなマンガみたいなことが起こってたんですね(笑)
- 竹原さん
- 竹原さん
- いい時代ですよね。スポーツ系の部活で強かったところはかなり通ってくれてました。僕の持論なんですけど、いっぱい食べる子が強かったように思います。
―やっぱりそうですか
- 竹原さん
- 竹原さん
- うん。それに、「食べる」っていうこと自体も大事なことなんですが、「食べて強くなる!」っていう気持ちがある子が強くなるんだろうと思います。
―なるほど
- 竹原さん
- 竹原さん
- 店で食べても、家で食べても同じだとは思うんですが、そういう子は目的意識というか、精神的な面が強いと感じます。
―やっぱり、たくさん食べてくれる子は嬉しいものでしょうか?
- 竹原さん
- 竹原さん
- 嬉しいですね。家庭でもそうかも知れないけど、「嫌いやから」って残されていると、まるで自分が疎外されているような、寂しい気持ちになりますね。作ったものを食べてくれるっていうことは自分を受け入れてくれるっていうことだから。それに対して「嬉しい」って気持ちはありますね。
お店と、街への思い
―お店は今、どんな思いでやられていますか?
- 竹原さん
- 竹原さん
- いやあそんな……どんなとか聞かれたら特にないんですけどね(笑) だけど、一つ。「共生」っていう思いがあります。
―「共生」ですか?
- 竹原さん
- 竹原さん
- はい、街とお客さんと私との関係で。誰かが犠牲になって成り立つのではなく、僕は僕で自分の仕事、つまり料理を一生懸命やって、それがお客さんに喜ばれて。そうして喜んで食べてもらうことで僕は生きていけるし、巡り巡って街のためになると信じています。
―それが竹原さんの信念なんですね。これからも、長門の愛される中華食堂であって欲しいと思います
- 竹原さん
- 竹原さん
- そんな風に、街とともにお店をやっているのが生きがいかも知れませんね。あの頃ラグビーを必死でやってた子供らが大きくなって、頭が薄くなったり、太ったり(笑) でも、「ああ、元気でやってるな」って。
―やっぱり感慨深いものですか?
- 竹原さん
- 竹原さん
- それはもうね。その子らの子供がまた、中学生、高校生になってお店にやってきたりしたりしますから。親子四代で来る人もおりますよ。ありがたいなと思うし、嬉しいですね。でも、「最近来ないな」と思ったら、亡くなってたって聞いたり、そういったときはやっぱり寂しいですね。
―桃屋さんは人生が料理を通じて交差する場所なんですね
- 竹原さん
- 竹原さん
- いやあ、そんな大げさなことじゃなく、みなさんがこんやったら潰れてしまうから(笑) 続けていけるのは本当に、みなさんのおかげですよ。
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