東京とNYで蕎麦修業した青森の名店! “金髪店主”のこだわり

特集

【特集・第1回】地元人が推薦! グルメ甲子園 〜 蕎麦編 〜

2019/08/14

東京とNYで蕎麦修業した青森の名店! “金髪店主”のこだわり

蕎麦とロックをこよなく愛す、名物店主のいるお店。(ふい~らあ倶楽部)

Yahoo!ライフマガジン編集部

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極限まで“風味”にこだわる! 金髪モヒカンだった店主の、NY仕込みの蕎麦打ち

熱に弱く、殻をむいた瞬間から劣化が始まるという、扱いが非常に困難な蕎麦。そんな繊細な日本蕎麦の“風味”にとことんこだわり抜いているという、青森県弘前市の名店『彦庵』を訪れた。

石臼挽き自家製粉『彦庵』
噂の「彦庵」に到着! お腹ぺこぺこです

遂にやってきました! 青森県民にお蕎麦といえば? と聞くと必ず店名が挙がる「彦庵(HIKOAN)」。 地元民の噂によると、なにやら店主は20代の時に都内で有名な蕎麦の名店と、NYで長年修業を積んで今に至るのだとか……。
東京→NY→青森って、一体どんな店主さんなのだろう? と興味津々で店内に。

店内は広く、奥に蔵を改装した座敷があります

店内にはジャズが流れており、和風でありながら現代的なお洒落さが感じられます。

蔵を改装して作ったという座敷部屋。中はとても広くて、開放感があり、ゆったりできます
『彦庵』店主の石戸谷洽彦(いしだやはるひこ)様

店主のご登場! と思ったら……き、金髪⁉

店主 石戸谷さん
店主 石戸谷さん
「いらっしゃい」
ライター 阿部
ライター 阿部
「はじめまして! 今日はよろしくお願いします! あの……なんだかロックな雰囲気ですね!(笑)」
石戸谷さん
石戸谷さん
「24歳までロックバンドやってたんだよ。それの名残だね(笑)」
ライター 阿部
ライター 阿部
「ロックバンドから、蕎麦職人へ転身……? なぜお蕎麦屋さんを始めようと思ったのですか?」
NY修業時代のころの店主様。当時24、5歳。ハイキックがすごい(笑)

話によると、杉並区でロックバンドをやっていた当時24歳の店主は、日本テレビ系列のドラマ『前略おふくろ様』の影響で、急に厳しい環境に身を投じて、自分の限界に挑戦してみたくなったのだとか……。それから都内でも随一の厳しさで有名だった蕎麦屋『本むら庵』の門戸を叩き、蕎麦職人の世界に足を踏み入れたという。

石戸谷さん
石戸谷さん
「『6ヶ月修業したら、自分の店持たせてください』って初日で言ったら、馬鹿やろう! って思い切り怒鳴られてさ(笑)。結局自分の店持つまでにそれから6年かかったね」

それからお店に住み込みで働き、毎朝誰よりも早く起きて、調理場を借りて練習に励んでいたという。その甲斐あって『本むら庵』で約3年間厳しい修業を経たのち、NY店の店長に抜擢されたという店主。NYのSOHOで3年の修業期間を経て、平成7年に弘前市に店舗をオープンさせたそう。

店主に、お蕎麦へのこだわりを聞いてみると……?

石戸谷さん
石戸谷さん
「とにかく蕎麦本来の魅力を殺さないように。なるべくそのまま活かすことに最もこだわっています。だからうちは石臼で蕎麦を挽いている」
石臼挽きに使用される、石臼

蕎麦は本来熱に弱く、一般的に広く使用されているロール挽きという製法だと、機械で一気に挽くため、熱によって蕎麦の風味がほぼ失われてしまうらしい。そのため、手間暇かかっても風味を損なわず蕎麦の持つ素材の味が十分に引き出せる、石臼挽きにこだわっているのだとか。

石戸谷さん
石戸谷さん
「あとうちの蕎麦は、風味を活かすため粗挽きにしているんだ」
ライター 阿部
ライター 阿部
「粗挽き?」
石戸谷さん
石戸谷さん
「蕎麦をつなぎなしで十割にしようとすると、相当挽いてパウダー状にしないとブツブツ切れちゃうんだけど、そこまで熱を通すと蕎麦の風味って全部飛んじゃうんですよ。だからうちは蕎麦の風味を極限まで活かすために、荒く挽いてるんです
ライター 阿部
ライター 阿部
十割だから美味しいっていうわけじゃないんですね……
石戸谷さん
石戸谷さん
「あとは、スピード命だね」
むいた蕎麦の実
石戸谷さん
石戸谷さん
「蕎麦の実は、むいた瞬間から劣化が始まるんですよ。だから蕎麦作りはすべて一気呵成で仕上げなきゃいけない。“打ちたての前に、挽きたて。挽きたての前に、むきたて”みたいな
カビ付きの鰹節
鰹節削り機

自分でお店を持つとなった時に選びに選び抜いたという鰹節削り機は、壊れてから何度も修理し、23年間も同じものを使い続けているという。

石戸谷さん
石戸谷さん
「鰹節は出汁にする直前に削ってるんだよ。蕎麦つゆはね、よく聞くかもしれないけど、“かえし”っていうのがあって、そのベースとなる醤油を、うちはかめに入れて、地中に埋めて熟成させるの」
地中に埋められた醤油がめ
ライター 阿部
ライター 阿部
「寝かせるとどうなるんですか?」
石戸谷さん
石戸谷さん
角が取れてまろやかになる。地上より地下の方が温度が安定してるんでね。光も当たらないから寝かせるにはちょうどいい。で、だしを取る直前に鰹節を削る。もう、これでつゆの味、全然違いますからね
ライター 阿部
ライター 阿部
「夏にぴったりな、冷たいお蕎麦で一番のおすすめはなんですか?」
石戸谷さん
石戸谷さん
「うちで昔から一番よく出るのは、鴨汁そばですね。あと、もうひとつすごい出るのがあって……清水森ナンバおろしそばっていうのがあるんですよ」
ライター 阿部
ライター 阿部
しみずもりなんば? なんばって何ですか!?」
石戸谷さん
石戸谷さん
「なんばっていうのは、南蛮のことです。とうがらし」
ライター 阿部
ライター 阿部
「なるほど! 私辛いの大好きです! 絶対美味しそう!!」
石戸谷さん
石戸谷さん
「ピリ辛なんだけど、唐辛子ほど辛くないから、ちょっと焼いてバリッとそのまま食べられちゃうんですよ。これを刻んで、うちの自家製蕎麦味噌でつけて、上に乗せたのが『清水森ナンバおろしそば』。これがねえ、癖になるみたいで、一度食べると皆また頼むんですよ」
「清水森ナンバ」(唐辛子)

この「清水森ナンバ」、実は一度消えてしまった品種だそうで、現在 “在来津軽清水森ナンバブランド確立研究会”という会が立ち上がり(店主も会員)、弘前大学の協力で農業の技術的な研究を重ね、今かなり復活してきたのだそう。

「清水森ナンバおろしそば」は、そんな“幻の唐辛子”が乗った、貴重なお蕎麦なのです!

ライター 阿部
ライター 阿部
「聞いてるだけでお腹空いてきました」

ということで、開店以来不動の1位を確立しているという、「鴨汁そば」と、一度食べると病みつきになってまた頼まずにはいられなくなるという「清水森ナンバおろしそば」、そしてボリューム満点という天もりを注文することに‼︎(食べ過ぎ)

わ〜美味しそう!! 早速きました! 幻の唐辛子「清水森ナンバ」が乗った、お蕎麦です
清水森ナンバおろしそば(1200円・税込み)

では、いただきます!!

自家製味噌であえた、清水森ナンバ(唐辛子)を、蕎麦にからめる

一口食べてみると……。
まず、蕎麦の風味がすごい! 蕎麦の風味と、荒く挽いている感が伝わってくる雑穀のような歯ごたえを感じました。そして確かにピリ辛だけど、凄くちょうどいい清水森ナンバ。今まで食べたことのないお味です。森林の中に佇んでいるような、爽やかで独特な風味が口いっぱいに広がって……と思ったらピリリッとした辛さがやってきて、本当に病みつきになりそう!

次に、1番人気だという「鴨汁そば」をいただきました。

鴨汁そば(1500円・税込み)
肉厚な鴨肉。鴨汁の香りが食欲を刺激します

噛みごたえのあるモチモチとした蕎麦に、鼻に抜けるだしの香りと、肉厚な鴨の旨味。かえしにこだわっているのを凄く感じます。つんと刺すような醤油のしょっぱさは一切感じられず、まろやかな甘みが口に広がって凄く美味しいです。

雑炊用ごはんを追加 鴨汁そば用小ライス(120円・税込み)

「最後は、雑炊にするのがおすすめです!」ということで、ごはんも注文しました。だし汁が美味しすぎて、もう言葉が出ません……(笑)。最高です。

そして最後は、天もりがやってきました。

天もり(一人前1750円・税込み)
巨大なエビ天ぷら

エビの身のボリュームが凄い!! 衣でごまかすなどということは一切なく、エビの身そのものがかなり大きくて、ジューシー。そしてもうひとつジューシーなのが舞茸! こんなにジューシーなんですか? 舞茸って。というくらいすごいです。

ライター 阿部
ライター 阿部
「いや〜。本当に全部美味しくて、お腹いっぱい、幸せいっぱいです。ありがとうございました」
石戸谷さん
石戸谷さん
「あ、せっかくだからちょっと裏、みてく?」
ライター 阿部
ライター 阿部
「裏……?」

なにやら店主、ガレージ裏に“秘密基地”を隠し持っているらしい。ちょっとだけ覗かせてもらえることに……!

趣味のバイクにまたがる店主様
ライター 阿部
ライター 阿部
「こ、これはすごい……!!」
石戸谷さん
石戸谷さん
「これね、NY時代に集めたコレクションなんだよ。このサンドバッグもそう」
飼い猫ちゃんと

もともと受験部屋としてトラック二台を購入し、改造したのだとか。
勉強、絶対集中できないでしょっ‼︎(笑)

※ヱビスビールは店内にはないそうです
もうひとつの秘密基地。夜はここのバーでくつろぐそう
お店の前で記念写真

ありがとうございました! アットホームな雰囲気で凄くリラックスできました。またお盆休みに訪れたいと思います!

取材メモ/どこまでも蕎麦の持つ本来の魅力に最大限挑戦する、店主。その仕事に対する熱心さに心打たれました。今回の取材で最も印象に残ったのは、蕎麦へのこだわりはもちろんですが、やはり一番は店主のキャラでした(笑)。一度会うとまた来たくなる、引き込まれるキャラクターをお持ちの店主がいるお店、ぜひ一度訪れてみてください!

取材・文・撮影=阿部万里英

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