「ゴールデンカムイ」で注目のアイヌの食と文化を北海道で体験!

特集

スケール特大! 北海道のおでかけ体験

2019/08/08

「ゴールデンカムイ」で注目のアイヌの食と文化を北海道で体験!

北の大地・北海道を舞台にした漫画「ゴールデンカムイ」やドラマ「永遠のニシパ」で注目を浴びているアイヌ文化。人々を惹きつけるその魅力とは? 実際にアイヌの食と文化が体験できる場所が札幌にあるということで、行ってまいりました!

Yahoo!ライフマガジン編集部

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知るほどに奥深い「アイヌの食と文化」を体験してみよう!

今回はこちらのアイヌ料理を作ります。 あの“チタタプ”(肉や魚のたたき)した「オハウ」(汁物)も!

イランカラプテ(こんにちは)! 明治時代の北海道を舞台に、アイヌの少女と元軍人のタッグが繰り広げる冒険漫画「ゴールデンカムイ」で、関心を高めているアイヌ文化。ただ、実際に文化に触れたり、アイヌ料理を食べたことのある人はまだそう多くはないと思います。そんな貴重な体験ができる場所が札幌にあるということで、「アイヌ料理 ウパシ」を訪れました。
\指導してくれるのはこの方!/

石井ポンペさん

石井ポンペさん

「アイヌは小さい頃に、神にさらわれないようにいろんな名前をつけます。ポン=小さいという意味で、ポンペは小さい子どもということ」。成長して個性が出てくるようになってから、正式な名前をつけるそう

まずは「カムイノミ」で神に今日の体験の安全をお祈りします

「カムイノミ」は、神に祈る(カムイ=神に、ノミ=〜に祈る)儀式のこと。ちなみにカムイは、動物や植物、火や水などの自然だけではなく、家や食器・道具など人間のまわりにあって、人間に関わりのあるものすべてに宿るといいます。

石井ポンペさん
石井ポンペさん
「火を通して、神に今日の安全のお祈りを捧げます」
儀式の前にこちらの装束から選んで着用。アイウシ(棘)やモレウ(渦巻き)、シク(目)、ぺカンペ(菱)などをモチーフにした文様が施されています
石井ポンペさん
石井ポンペさん
「文様にはそれぞれ意味があります。諸説ありますが、例えばアイウシ(棘)文様を中心に、ツノが出ているのは『魔物が入ってこないように』ということ。大地と道を表すという人もいます。あるいは、左右対称の文様で『必ず返ってくるように』と一筆書きでつながっているともいわれています」
ポンペさんが持っているのは「トノト(お酒)」が入った「トゥキ(器)」と「イパクスイ(木彫りのヘラ)」
残すのはいけないと思い、トノトを飲み干す

最後は、お互いに「イヤイライケレ(ありがとう)」と言葉を交わします。

火にもカムイが宿ると思うととても特別な気持ちに

ヒンナヒンナ! 命を大事にいただく「アイヌ料理の醍醐味」

カムイノミを終えたら、次は料理体験へ。ウパシの主催者である紀國雪子さんの指導のもと、「ユクオハウ(鹿肉の汁物)」「コンブシト(昆布の団子)」を実際に作ります。紀國さんは、日高地方のフチ(おばあさん)たちにアイヌ料理を学び、その魅力を伝える活動をしています。
①【ユクオハウ】(鹿肉の汁物)
ユクは直訳すると肉のこと。アイヌでは鹿を肉と呼び、大切な食料になっています。今回は、煮込んだりつみれにするとおいしい鹿のスネ肉を両手に持った包丁でチタタプ(細かく刻まれたもの=たたき)します。

鹿のスネ肉をぶつ切りにし、「プクサ(ギョウジャニンニク)」を混ぜてチタタプ!

チタタプ、チタタプ……

はじめにポンペさんがお手本を。立て膝がかっこいい

チタタプ、チタタプ、チタタプ……

プクサの香りが食欲をそそります

チタタプ、チタタプ、チタタプ、チタタプ…… ダン、ダン、ダンと包丁でまな板を強く叩きますが、スネ肉は想像以上に硬く、細かくするにはかなり力が要ります。

心配そうに見守るポンペさん

見るのとやるのとでは大違い。チタタプはとても難しい。ヒレや尾など硬い部分を丸ごとチタタプする鮭ならさらにどうなるのだろう。ちなみに実際は、チタタプするときに「チタタプ、チタタプ……」と言いながら刻むことはないそう。

チタタプした鹿のスネ肉を団子状に丸めて「プクサキナ(ニリンソウ)」、マイタケをイン!

味付けはシンプルに塩のみ。「アイヌの味をなるべく忠実に再現して食べてほしいんです」と紀國さん。というのは、醤油や味噌は、和人との交易が始まる前まではなかったためで、アイヌ料理では塩のほか、昆布や干したプクサキナ、燻製にした肉や魚で味の調整をしていたといいます。
②【コンブシト】(昆布の団子)
お次は、コンブシト。乾燥したコンブをさらに油でカラカラになるまで揚げて、すり鉢で細かくします。白玉粉で作った団子の茹で汁で粉状になった昆布を伸ばして、団子に絡めたらできあがり。

煮詰めるとなんとも芳しい香りが。「当時、油は貴重だったため、ひょっとしたら昔は焼いていたのかもしれませんね」(紀國さん)

日本列島では北海道沿岸と三陸海岸でしか採れない、交易の重要なアイテム「昆布」はアイヌ語が起源だともいわれています。

紀國さんの盛り付けを参考に……

ヒンナヒンナ(感謝感謝)でイペアンロー(いただきます)!

アイヌ料理の盛り付け完成!!!

左上から時計回りに、ペネイモ、ワラビ、トゥレプ、ラタシケプ、ごはん(シアマム=米、ムンチロ=粟、ピヤパ=ひえ、メンクル=いなきび、チポロ=筋子を添えて)、ユク、チップ(ニジマス)、コンブシト

*写真のほかに、セタエント(ナギナタコウジュ)で煎れたお茶もつきます。
*予算によってメニューは変わります。


海の幸、山の幸を余すところなく使ったアイヌ料理。まずは食べ物をいただくことに感謝の気持ちを込めて、「ヒンナヒンナ」(「ヒンナ」は感謝を表す言葉で、おいしいは「ケラアン」と言います)。

「ヒンナ(感謝)」。本当は、いただいたものを両手に取って上下させます。おいしそうすぎて顔もほころぶ
食べるときに一度水で戻し、形成して焼いて食べる

こちらの「ペネイモ」は、雪の中に入れて発酵させたジャガイモを洗って潰し、乾燥させた保存食。モチモチ、ほっくり不思議な食感で初めての味だけれどケラアン!

トゥレプは鱗茎からデンプンを取り出し、片栗粉のようにも使われていた

ポンペさんが山に入り、採ってきてくれた「ワラビ」と「トゥレプ(オオウバユリ)」。「トゥレプ」は根の部分を塩炒めに。歯ざわりはサクサク、ホクホクでほんのり甘くてこれまたケラアン!

少し苦味のあるシケレペは高い薬効があり、ミカンの原種といわれている(青い実は乾燥する前のもの)

「カボチャと豆のラタシケプ(和え物・混ぜ物)」は、柔らかくなるまで煮込んだ豆とカボチャに乾燥させた「シケレペ(キハダの実)」をスパイスに混ぜ込んで。カボチャの甘みとシケレペのほのかなシビレ・苦味がとても合います。

エゾシカのモモ肉をステーキに。あっさり淡白な味

「コンブシト」はコンブの旨味と団子の甘味がお互いを引き立て、「ユクのステーキ」は臭みや脂身もなくあっさりとした味で、「お肉(命)をいただいている!」という実感がわきました。

「干したプクサキナはたまに白い花が潜んでいて、オハウに戻すと顔を出すこともあるんですよ」(紀國さん)

「ユクとマイタケのオハウ」は、塩とマイタケ、ニリンソウでこんなに味が出るのか!と驚き。チタタプした肉団子は噛めば噛むほど肉の旨味が出てきます。

左が北海道ならではの果実ハスカップで、右はトペンペ(エンレイソウの実)。緑色だけれど熟しています

デザートは、「ハスカップとトペンペ(エンレイソウの実)」。ハスカップは口直しに、ちょうどいい甘酸っぱさ。トペンペは、皮をむかずにこのまま食べます。見た目に反してとても柔らかい! 瑞々しくて優しい甘味がしました。

聴いて、学んで、一緒に演奏して。アイヌ音楽の楽しさに触れる

「さて何やろうかな。トンコリやろうか」。おもむろに楽器を手にしたポンペさん。トンコリとは、カラフトアイヌの代表的な楽器のひとつで、5弦楽器です。

これはオヒョウの木の皮でできた「ヤラ(木の皮)トンコリ」。ポンペさんが作ったので「ポンコリ」と呼んでいる
石井ポンペさん
石井ポンペさん
「♫ランランラン〜、ランランラン〜、ト〜キトランラン、トキ〜トランラン〜」(*沼で鳥がキトピロ=ギョウジャニンニクをついばむ様子を表した歌)
“ポンコリ”の柔らかく優しい奏でに、北の大地へと思いを馳せる
「ストゥ」(制裁に使ったおしおき棒)ではなく、「レプニ」を打ち付けて拍子をとります

沖縄民謡をアレンジしたウチナー・ポップを広めながら平和活動をしているミュージシャンの喜納昌吉さんと一緒に、東京やニューヨークの野外コンサートで演奏したこともあるポンペさん。沖縄民謡の「涙そうそう」や朝鮮民謡の「アリラン」などもアイヌ語で披露してくれました。ほかにも様々な楽器が登場して……。

オオハナウドで作った単筒笛「ヘヌウド」は、ブォ〜ン!と地響きのような低い音が
石井ポンペさん
石井ポンペさん
「これは森に入って植物を採取するときに必ず森に向かって吹くんです。すると1kmくらい先まで聞こえるものだから、森の動物たちが『あ、人が来る。道を空けないと』となって隠れる。悪い動物から身を守る(魔除けの)意味があるんです。父がキノコや山菜を森に取りに行くときに使っていた。オーストラリアでもアボリジニは木をくり抜いたディジュリドゥという木管楽器を使っています」
こちらは木で作られた「イパプケニ(鹿笛)」。これを吹くと鹿や鳥が寄ってくるんだそう

シンプルだけど奥深い!
「ムックリ」を一緒に演奏してみよう

ムックリとは竹と糸でできた口琴のこと。糸を引っ張り弁を振動させて音を出す仕組みで、これを軽く口に当てて共鳴させ、唇の形や呼吸に変化をつけて様々な音色を生み出します。

石井ポンペさん
石井ポンペさん
「大体3分練習すればできるようになる。小学生でもすぐに音を出せますから」
ムックリの持ち方から丁寧に教えてくれる
「ビョーンビョーンビョーン」と愉快な音が響きます

どうしたことでしょう、なかなか音を出せないでいると……「ムックリ1本でベートーベンやドボルザークを演奏して、カナダやニューヨーク、サンフランシスコを渡り歩いてきた」と言うポンペさんの指導にも熱が入ります。

「左手はしっかり固定して親指をほっぺにくっつけること。手が一緒に動いてるよ。あまり口の中に入れすぎない! 冷や汗かいてきたな(笑)」(ポンペさん)

「師匠、やりました! 音が出ます(3回に1回くらい)!」「よし、合格! それではステージに上がりますよ」。なんとかコツをつかみ、最後は二人でセッション!

ポンペさんの渋い顔がムックリ奏者のデキをあらわします

「アイヌ料理 ウパシ」は、博物館などとはまた違った、双方向で「アイヌ料理・文化を身近に体験でき、触れ合える場所を」という思いで3年ほど前にできました。
また現在、ポンペさん指導のもと、新十津川町に「チセ(家)」を建設中とのこと。「柱になる木やチセを建てる土地などすべての神にお伺いをたてて、茅を刈り、木を倒すところから始めています。ありがたいことに日本各地から興味のある方がお手伝いに来てくれています」(紀國さん)。鋭意、年内の完成を目指して頑張っているそう。みなさんも実際にエカシ(おじいさん)やフチ(おばあさん)と触れ合い、アイヌが大切にしてきた知恵や文化を知る旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
*料理名や言葉、着物の文様、生活文化などは地方によって違いがあります。ここでご紹介したのは、日高地方のものになります。

【取材後記】
「やっぱり歴史を語るのはキツい」。取材の中で印象に残ったポンペさんの言葉です。明治初期にアイヌ文化は明治政府の同化政策のもと抑圧され、ポンペさんの世代でさえ、すべてを知ることはできずに育ち、大人になって再び文化を興そうと活動をしています。「大学などで歴史を語ることはありますが、できれば食文化や音楽を伝え、それを楽しんでほしい。そして歌も踊りも観光地の見せ物としてではなく、もっと身近なものになってほしいんです」


今回の取材を通して、アイヌ文化はあらゆるものに感謝し、敬意をはらい、そしてお互い様でいる、ということなのかと感じました。身の回りのものにカムイが宿ると捉えると世界の見え方も変わってくる。それは現代社会でも生かせる世界観なのではと考えさせられました。

撮影/克 取材・文/Yahoo!ライフマガジン編集部

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