県生産量の約4割を占める三重県木曽岬町の「木曽岬トマト」

2019/09/01

県生産量の約4割を占める三重県木曽岬町の「木曽岬トマト」

真っ赤な色が食欲をそそるトマト。サラダやパスタなどに用いられ、食卓を鮮やかに彩る。三重県木曽岬町は、県内有数のトマト生産地。県4割に相当する年間約1200 万玉を出荷している。出荷時期に木曽岬町小林にあるトマト選果場を訪れた。

中広

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豊富な地下水を用いたハウス栽培を開始

県生産量の約4割を占める木曽岬町産のトマト。安定した供給を支える「木曽岬町トマト部会」のメンバー33人は、収量や品質の向上を目指して、互いに切磋琢磨する。高齢化などにともない、国内の農業従事者は減少の一途をたどるが、部会には20~30代の若手も所属している。

昭和30年代、木曽岬町でビニールハウスでのトマト栽培が始まった。「冬でも食べてもらいたいと、先人たちによりハウス栽培が導入されました。ビニールで土壌をただ覆うだけでは、冬場に作物が凍ってしまう。ハウス内の温度を一定に保つための熱設備に用いられたのが、豊富な地下水でした」と、木曽岬トマト部会部会長を務める伊藤清実さんが教えてくれた。

「木曽岬町トマト部会」のメンバー

「環境制御型ハウスなど新しい技術が開発され、農業も変わりつつある。若い人も農業に携わってほしい」と部会長の伊藤清実さん(上写真・前列右から3番目)。5年前から栽培に携わる伊藤達郎さん(前列左から2番目)は、「1ヘクタール規模のハウスを建て、雇用を増やすことが目標」と先を見据える。

昭和41年には「北勢冬春トマト」の指定産地に選定。全国的にもまだ珍しかった選果場が導入されたのも、この頃のことだという。「仕分け・発送などを行う選果場があることにより、流通が効率化。生産者はさらに増えていきました」。

青みがまだ残る状態で収穫し、選果場で追熟をする
収穫から約3日後、熟れた状態で消費者のもとへ届く

平成8年には、カメラセンサー付きのトマト選別機を導入。検査員によるばらつきを防ぐだけでなく、高精度なサイズ選別を可能とし処理能力も格段に向上した。

町内で生産されたトマトは、選果場に集まる。カメラ付きの選別機でサイズを選別。目視検査を経て、箱詰めされ、各地の小売店などへ出荷される。ベルトコンベアで次々とトマトが運ばれるさまは圧巻

平成29年度は、約1200万玉を選果し約59万箱を出荷。秀品率が高い「桃太郎系」をはじめ、大玉の「みそら」「りんか」など数種類を、8~9月をのぞいてほぼ年間に渡って消費者へ届けている。

コンピューターによる管理で安定供給を実現

選果場から車で数分。木曽岬トマト部会に所属する若き生産者・伊藤達郎さんを訪ねた。到着した先に待ち受けていたのは、一般的なかまぼこ型のビニールハウスではなく、工場のような大きな建物。真っ白な外観で、周囲のビニールハウスより倍以上も背が高い。

スリッパに履き替えるよう促され、ハウスの中へ。汗ばむような熱気の中に待ち受けていたのは、見渡す限りに並ぶトマトの株だった。足元には真っ白なビニールシートが広がり、土は見当たらない。その代わりに、ロックウールといわれる繊維培地が数十センチ間隔で置かれていた。

達郎さんの農場では、ロックウールを培地とした養液栽培を採用。培地に管を通して液肥を与え、トマトを育てている。「ロックウールは保水性が高く、水分量を管理しやすい。培地が独立しているため病気になっても他のトマトへの伝染を防げますし、供給も安定しています」。

達郎さんのハウスでは、ロックウール培地を採用。病気の伝染が少ないのがメリット

達郎さんが、家業のトマト栽培に携わり始めたのは5年前。昨年6月、ハウス内の温度や照度、二酸化炭素濃度をコンピューターで管理する環境制御型ハウスを建てた。「働いてもらいやすい環境を第一に考えました。養液栽培は土などによる汚れが少なく、ぬかるみもないため、体への負担を軽減できます」。水やりの頻度は照度によって異なるが、天気が良い日は1日に20回ほど。すべて自動で行われている。

ハウスには、背丈を優に超えるトマトの株が見渡す限りに並ぶ。養液栽培におけるメリットは、安定した供給と作業負担が少ないこと。土壌のぬかるみや凹凸がないため、収穫用台車を操作しやすく、作業効率も上がる

電力に頼るがゆえのデメリットもある。「停電をしてしまうと、すべてがストップしてしまう。昨年の台風のときは、発電機をつなげてなんとか乗り切りました」。

濃厚な甘さにファン続出!フルーツトマト「とまリッチ」

主要品種である「桃太郎系」のほか、木曽岬町では近年さまざまな品種を育てる。達郎さんの環境制御型ハウスから徒歩1分。小さなビニールハウスでは、小ぶりなトマト「とまリッチ」が実をつけていた。トマトの下部には、放射線状の筋が入っている。「お尻の星が、甘さのしるしです」と、達郎さんが実をもぎってくれた。一口食べると、肉厚な食感に驚く。歯ごたえがあり、甘味も強い。

細やかな給水管理によって育まれた、濃厚な甘さと肉厚な歯ごたえが魅力の「とまリッチ」。つややかな赤色と、放射線状の筋「スターマーク」が甘さの目印だ。商品名の名づけ親は、鈴木英敬三重県知事

おいしさの秘密は、給水量にある。「与える水を制限すると実が小さくなる分、トマトの糖分が凝縮され甘みが増すんです」。給水量の細やかな匙加減が、出来を大きく左右。独特な味わいは、生産者の創意工夫なくして生まれない。尻腐れなどの障害も多く、「とまリッチ」は他の品種と比べて収量が低い。

「糖度8度以上の甘味の強いトマト。フルーツのようにそのまま味わってほしい」と達郎さん。普段使いだけでなく贈答品としても人気が高く、達郎さんのもとを訪れて直接購入する人も多いという。

木曽岬町産のトマトは、JAみえきた農産物直売所木曽岬店ほかで購入可能。「健康にいいし、私もよく食べます!」と伊藤さんは、地元産のトマトに太鼓判を押す。「そのままで食べるのはもちろん、生のトマトからつくるソースは格別ですよ」と微笑む。

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