散歩中の精神科医が出会った体も心も豊かになるパン屋

散歩中の精神科医が出会った体も心も豊かになるパン屋

2019/08/29

精神科医として総合病院に勤務する傍ら、文筆、音楽、ラジオなどマルチに働く星野概念が「食べに行く」という行為を通して、「こころ」に関する気づきをひも解く。

星野 概念

星野 概念

精神科医

食べるものを選ぶことで、体も心も豊かになるような気がします

こんにちは、精神科医の星野概念です。

この連載は、日常の食生活の中から僕が感じたり考えたりした、こころに関連するような要素をみなさんにご紹介するものです。

日々飲食を続けるうち、酒も食べ物も自然なものに惹かれるようになっています。関東近郊の静かな住宅街に、驚くほど素晴らしいパン屋を見つけました。しかも散歩中に。今回はそんな話です。

  

【目次】
1. 静かで小さい素敵なパン屋
2. 食べるものを選ぶことは心を元気にすると思う


1. 静かで小さい素敵なパン屋

・散歩が大切

以前勤務していた病院に時々当直の仕事をしに行ったり、休日の日直業務をすることがあります。

夜や休みの日は病院の食堂も通常どおりの稼働をしておらず、食事の時は出前を頼むか、携帯電話を持って、近くのスーパーやコンビニに買い物に行きます。その間にもし何かがあって連絡が来たら、走って戻れるくらいの場所にいくつかお店があるのです。

  

日直や当直業務中は基本的に外には出られません。なので、買い物に出る時の10分ほどは外の空気を吸う貴重な時間です。

コンビニやスーパーまで行くだけですが、微妙に通る道を変えたりして自分の中で楽しみます。もはや小さな散歩と言えます。

・突然パン屋

コンビニまでの道は住宅だらけ。関東近郊の静かな住宅街という感じで、細い道を歩いて向かいます。

  

そんな中、ひときわ緑の多い、小さな森のような感じの庭がある家がありました。

なんだかいいなぁと思って、不審者に思われない程度に中を覗いてみると、なんとパン屋!

  

病院のこんな近くにパン屋があるなんて、3年間勤務していたのに全然知らなかった。

そのパン屋の名前は

のはらぱん

このネーミングから想像するのに見合った、絵本に出てくるような小さな素敵なパン屋です。

  

・曜日によって商品が変わる

外の看板には手書きで、

水 シフォンケーキの日

木 スコーンの日

金 ワッフルの日

土日 焼きたてパンの日


と書いてありました。

なるほど、日によって置いてある商品が変わるんですね。

これはなんだか、毎日行きたくなる感じかもしれない。

しかもその日は日曜日でした。つまり、

焼きたてパンの日!

  

やった!

しかもその下の看板には

シチリア産オリーブオイル
店内に各種取り揃えてございます。


と書いてあります。

  

なんだと!

僕はイタリアワインがとても好きなので、色々飲んでいるうちに、オリーブオイルにも様々なものがあると知って、ちょうど興味を持ったところでした。

  

これはもう、行くしかない!

・色んなパン 売り切れ続出

入ってみると店主の女性が明るい笑顔で迎えてくれます。

パンと言えばジャムおじさんですが、ジャムおじさんを若返らせて、女性にした感じ。

  
  
  

つまり、ジャム姉さんです。

  
  

ジャム姉さんがお店を一人で切り盛りしているようで、「今日は色んなパンがあったんですけど、ほとんど売り切れちゃいました」と教えてくれました。

そんな地元で人気のパン屋なのに、病院の誰からも聞いたことなかった。もしかしたら、これ以上売り切れないようにみんな情報を隠していたのかもしれません。なんて考えてしまう僕は卑しいでしょうか……。

  

その日はフォカッチャ、くるみパン、チョコパンが残っていたので買うことにしました。

  

・ナイス酵母!

店内には「のはらぱんのこだわり」という張り紙があって、これも手書きで

・てまひまかけて一つ一つ丁寧に手作りしています。

・厳選した素材を使っています。

・化学調味料や添加物の使用を極力抑えています。

・食べておいしいだけではなく、体にもやさしい物を作るように心がけています!!


と書かれています。

最高じゃないですか!

しかも、厳選された素材には、北海道産小麦、石垣島の塩、シチリア産オリーブオイルなどが並ぶ中、酵母は

ホシノ天然酵母!

  
  
  

ナイス酵母すぎる。
調べたところ、かなり興味深い酵母でした。

・さらにオリーブオイルも素晴らしい

数種類のオリーブオイルで、これもまたとても自然な造りをされたもののよう。

少し味見をさせてくれたのですが、美味い!フルーティなのに味にコシがある。

まさか当直中にオリーブオイルを購入すると思いませんでしたが、衝動的に買い、今でもなくなると買いに行っています。

話を聞くと、息子さんが

カーザアデーレ

という出店などがメインのお店をやっていて、そこの商品が置いてあるそうです。

・パン屋に行くためにシフトを入れる

それ以降、のはらぱんに高頻度に通うようになりました。

息子さんにもお会いして、イタリアに買い付けに行った時の話を聞いたりして超楽しい。

さらに、娘さんは高知でチョコレート屋をやっているとのことで、その商品も置いてあります。とても優しいチョコレートです。

  

今となっては、その病院からは異動しましたが、先ほど書いたように、当直や休日の日直はしています。シフトはもちろん、のはらぱんが閉まっていない日。

  

もはやのはらぱんに合わせて非常勤勤務のシフトを考えていると言っても過言ではありません。

2.食べるものを選ぶことは心を元気にすると思う

僕が、飲んだり食べたりが人一倍好きであろうことがバイアスになっているかもしれませんが、自分の体のことを考えて食べるものを選ぶという行為は、気持ちがとても豊かになるもののような気がします。

  

体と心の調子は互いに影響し合っています。

  

まさに心身相関。

  

僕はここのところ、漢方薬の勉強も始めたのですが、化学物質ではないものを薬にしてきた東洋医学は、西洋医学ばかり学んできた自分にとっては驚愕の連続です。

  

実際自分でも試していて、日々調子が良いのを実感しています。

食べ物もそれと恐らく同じです。

日々続けることで、少しずつ豊かになっていくと思えば、選ぶのも楽しくなる。

そして、そういうものを扱っているお店の人たちは、みんな話していて心地よいのです。

あぁ、これを読んでくださった皆さんに、のはらぱんに行ってみて欲しいけど、パンが売り切れるから複雑だなぁ。やっぱり行かないで。でも行ってみて。

なんてぐるぐる考えてしまう僕は、やっぱり卑しいでしょうか……。

  
  

文・構成:星野概念
イラスト:権田直博


星野概念(ほしのがいねん)

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精神科医

権田直博(ごんだなおひろ)

権田直博(ごんだなおひろ)

画家

この記事を書いたライター情報

星野 概念

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精神科医

総合病院に勤務し、日々精神医療に従事する傍ら、執筆や音楽活動を行う。

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