映画の力を信じて街中の賑わい創出を目指す「前橋シネマハウス」

2019/09/03

映画の力を信じて街中の賑わい創出を目指す「前橋シネマハウス」

2018年3月、前橋中心街に開館したミニシアター、前橋シネマハウス。幾多の苦労があっても前を向き、映画上映を通してまちを元気にしたいと奮闘する、支配人の日沼大樹さんに話を聞いた。

中広

中広

難題を承知のうえで開館を決意した理由

かつて、前橋中心街は多くの人で賑わっていた。

活気ある商店街。人が溢れる数々のデパート。そして、家族や気のおけない友人、恋人と出かける先として、映画館があった。

しかし、前橋文映やオリオン座といった、地域で長く親しまれてきた映画館が、2000年代に入ると相次いで閉館。2006年、リヴィン前橋店WALK館内にあったシアター、前橋テアトル西友が閉館すると、一時、前橋市から映画館は無くなってしまう。

その後、2007年にオープンした大型ショッピングモール、けやきウォーク前橋内に複合映画館が開業。しかし、再び前橋中心街に映画館が誕生するまでは、3年待たなければならなかった。

2009年、前橋市が取得したリヴィン前橋店WALK館跡地に、シネマまえばしがオープン。映画上映を開始するも、2011年頃から始まった階下の美術館、アーツ前橋の開業工事の影響などから、やがて興行上映は中止されてしまう。

再び消えた、前橋中心市街地の映画の灯火。そんな折、前橋市からシネマまえばしの後を引き継いで、映画館運営を打診されたのが、有限会社群馬共同映画社の日沼大樹さんだった。

日沼大樹さん

日沼大樹さん

前橋シネマハウス 支配人

「制作費の少ないインディペンデント系作品を上映する劇場にしたいと、2017年初め頃からお声がけをいただきました」と日沼さんは振り返る。しかし、都内ですら経営難からシアターが閉館する時代。例え良作でも、集客が見込めない作品を上映する映画館の運営は無理だと断った。

加えて、日沼さんにはノウハウがなかった。群馬共同映画社は、映画の製作・配給・上映を行う会社である。「劇場運営は、畑違いだったんです」。

それでも、何度も市の担当者から打診されると、徐々に心が動かされた。「映画や芸術で地域を活性化したい。それが市の思いでした」。自分も生まれ育った前橋市を映画で豊かにしたい。そう考え、2017年の夏に劇場オープンを決意。しかし、それは困難への始まりだった。

熱意と創意工夫で地域に愛される場所を作る

前橋中心街に文化の発信拠点を作りたい。街中の賑わい創出の一助になりたい。そんな信念を持った日沼さんは、2018年3月のオープンに向けて、急ピッチで準備に取り掛かる。

他の映画館を訪れては話を聞いて運営ノウハウを勉強し、配給会社に挨拶回りをする日々。「急な準備だったので、ずいぶんと配給会社さんには怒られました」と、日沼さんは苦笑いする。

開業への予算は少なかったが、何とかやり繰りしてプロジェクターと音響機材は納得のいくものを準備。特に音響設備は、群馬共同映画社の音響を専属で見ている音響技師の選び抜いた逸品を揃え、作品ごとに調整を行い、最高の音を提供しているのだと胸を張る。

やがて迎えた前橋シネマハウスのオープン。当初は、事前告知と期間限定キャンペーン料金の恩恵で、多くの人が足を運んでくれた。しかし、その後はパタリと客足が途絶えてしまった。

前橋シネマハウスの外観
シアターは2つあるものの、ほとんどは1スクリーンのみで上映。席数は合計で150席、各回完全入れ替え制となる

「本当に良いと自信のある作品を上映しても、ひと桁しかお客様が入らない日も。正直、参りました」。子供向けの有名映画、シネコン向けの大作映画。いろいろと試したものの、客数は伸びない。思い悩むなか、イベントを仕掛けたところ風向きが変わってきたという。

例えば、競輪を題材にした映画を上映する際には、現役競輪選手と監督のトークショーを実施。同時に、市内の競輪関係者や団体に声をかけ、来館を促した。

「観てほしい映画がある。その映画で感じ取ってほしいものがある。だからこそ、いろいろな団体へ飛び込んで、ぜひ観てくださいと案内できるんです」

『カランコエの花』を上映した際のイベント。日沼さん自ら俳優とトークを交わす

日沼さんの地道な努力は功を奏し、前橋シネマハウスの認知度向上に伴って客足が回復。オープンから1年の来館者数は、目標としていた1万人を大幅に超え、1万5千人を記録した。

県内の他の映画館で観られない作品、日沼さんがぜひ観てほしいと思った作品、前橋市や群馬県が舞台となった作品、シネコンなどで上映してヒットした作品。この4つが前橋シネマハウスで上映する映画の選定基準

さまざまな困難を、熱意と創意工夫で乗り越えてきた日沼さん。映画館運営のやりがいを聞くと、「いい映画だったよ」「良い場所ができた。長く続けてね」と、来館者から言葉をかけられるのが一番だと笑顔を向ける。

映画には、人を動かす力がある。それが前橋中心街の賑わいづくりにつながると信じている。信念を胸に、今日も前橋シネマハウスはスクリーンの幕を開く。

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