北海道東神楽町の「HAL Market」で挑戦する若手農業者

北海道東神楽町の「HAL Market」で挑戦する若手農業者

2019/09/09

北海道上川郡東神楽町ひじり野にあるHAL Marketは、同町の若手農業者が中心となって出資・設立し、運営を担っている青果店です。農作物を作るだけでなく経営感覚を養い、新しい農業のあり方を模索している人々の熱意を取材しました。

中広

中広

若手農業者の焦燥感が生み出した青果店

雪解けの春、まるでラディッシュのような緑と赤をあしらったのぼり旗が、道道294号線沿いの東神楽町ひじり野地区にはためきます。4月から11月まで、今年も期間限定の青果店、HAL Market(ハル・マーケット)が開店しました。同店は東神楽町の若手農業者が、農作物の流通、販売、そして消費者のニーズまでを学ぶ場として運営しています。

HAL Market外観
4月から11月までオープンするHAL Marketは野菜収穫の最盛期になると、店頭には豊富な商品が並び出します

運営会社である株式会社東神楽アグリラボの設立は2017年5月。同町にゆかりのある農業プロデューサー脇坂真吏さんと、地域の20代から40代の若手農業者を中心に立ち上げられました。主要メンバーは、家業である農業を受け継ぐ、あるいは受け継いだばかりの世代です。

日本では、農業の後継者不足が懸念されて久しい状況。市場からは農作物の色形といった品質を厳しく求められるものの、なかなか高値では取引されず、担い手が減少しています。「こうした問題に直面している若手農業者は、今後、営農だけでなく多角的な視点を持たなければという危機感を募らせていたんです」。そう話すのは、同社取締役の安藤有一さん。

自分たちが丹精込めた農作物を、どのように消費者に届けるべきか。また、消費者のニーズが分かれば、仕事に生かせるアイデアも生まれるのではないか。

安藤有一さん

安藤有一さん

株式会社東神楽アグリラボ 取締役

農業者の熱い気持ちに脇坂さんが応えて、コンセプトを立案。東神楽町の事業者や町民も参画して法人化し、HAL Marketは誕生したのです。

試行錯誤を繰り返し、おいしい農作物を販売

同店のコンセプトは、出来たて野菜の販売。そこには、生産者ならではの強いこだわりが込められています。

例えばスーパーマーケットに並ぶトマトの場合、実が青いうちに収穫し、3〜4日の流通過程で赤く熟したものを店頭に並べます。しかし、本当においしいのは、完熟してから摘み取ったトマトなのだと安藤さん。どんな野菜でも、出来上がったタイミングが一番おいしいと知っているからこそ、それを提供したいのだと言葉を重ねます。

食べごろに育ったほうれん草を丁寧に手で収穫。そのままHAL Marketに並べます

同店では、朝一番で収穫する農作物の入荷予定をS N S で告知。随時チェックして、楽しみにしてくれるファンも増えてきたそうです。「その季節に採れた野菜が並ぶから、野菜の旬がわかると思います」と、安藤さん。

5月には甘くておいしいアスパラがおすすめ野菜として登場しました
収穫前のアスパラ

一方で、不慣れな青果店経営は、試行錯誤の連続でした。

例えば品揃え。コンセプトには自信があるものの、いざ経営を始めてみると、思うように売上は伸びませんでした。メンバー内で話し合いを重ね、品揃えの少なさに原因があると考え、2年目は売り場面積を2倍に拡張。野菜を豊富に並べた店づくりが功を奏し、売上は回復してきたそうです。

野菜のおいしさを引き立てる、国産の調味料も並びます。農業プロデューサーとして全国を回る脇坂さんが厳選
りんごジュースやオリーブオイルはギフトとして人気

また、野菜はその日のうちに食べてほしいと考え、少量ずつ購入できるよう量り売りを実施。来店者の求めに応え、香草やスーパーで見かけないような珍しい野菜にも挑戦しました。

野菜の量り売りは、家族の人数やメニューに合わせて購入できると好評

「お客様との会話から得るものは多いですね」。ニーズはもちろん、野菜をどのように調理して食べているかなどを聞き、コミュニケーションのなかから、店づくりや経営に生かせるアイデアも生まれているそうです。

地域の人々とつながり農業者の成長を促す

同店の評判は広がり、今や遠方からの来店者もいるそうです。しかし安藤さんは、「もっと、ひじり野の人々に来てほしいんです」と話します。地産地消はもちろん、農家とまちの人々がつながる場所。それが同店の目指すビジョンだからです。

近所との交流が当たり前のようにあったむかしから、時代が変わり、人付き合いの希薄化した現在。農家そのものの減少によって、農業者と地域の人々との接点は少なくなってきています。農家がどのような思いを込めて作物を育てているか、そんな一端に触れてほしい。それが農業者の成長にもつながるのだと、安藤さんは言葉を結びました。

今年度は、販売スタッフの増員など体制を強化し、さらなる売上アップを目指すHAL Market。出来たて農作物の発信基地として、また熱意あふれる若手農業者の学びの場として、今後も成長を重ねていく姿が楽しみです。

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中広

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中広は岐阜に本社を置く広告会社です。 地元の情報を各戸配布のハッピーメディア(R)『地域みっちゃく生活情報誌(R)』のブランドで発信しています。

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