絹糸が織りなす美!国の伝統的工芸品に指定された伊賀くみひも

2019/09/12

絹糸が織りなす美!国の伝統的工芸品に指定された伊賀くみひも

組紐の技術は奈良時代に大陸から伝わったといわれ、仏具、武具、装身具など、時代によって用途が変化していった。伊賀では1世紀ほど前に産業として根付き、帯締めや羽織紐の特産地として発展してきたが、近年は厳しい状況下にある。

中広

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明治時代中期から産業として発展

「伊賀くみひも」は、江戸に残っていた組紐の技術を習得した初代廣澤徳三郎が、明治35年に故郷の上野上林で開業したのを始まりとする。

当時、欧化政策の熱が冷め、和服が見直されていた。また、明治40年頃には女性の間で組紐の帯締めが人気を博し、以来、帯締めや羽織紐に組紐が使われるようになっていく。そんな社会背景も手伝って、組紐の需要は高まるばかりだった。

組紐を組む「組子」の大半は農家の女性たち。主な産業がなかった伊賀において、手内職の工賃が格段に高い組紐は、たちまちのうちに広がり、定着していった。最盛期、組子は3千人を超え、組紐を作る「高台」は嫁入り道具のひとつに数えられたという。

組台は丸台、角台、高台、綾竹台の4種類が一般的で組紐の種類や柄に応じて使い分ける。主流となる高台は畳半分ほどの大きさ。竹型のヘラで打ち込み、目を整えながら組んでいく。複雑な柄出しができるのが特徴だ
丸台は、数多くの組み方ができる万能の台。使える玉数に限界があるため、柄の種類は少ないものの組目の美しさが持ち味
比較的球数の少ない紐を組むのに使われる角台。組まれた紐が下へ下がっていく丸台に対して、角台では上に組み上がる
綾竹台は機織りのように、上下の糸の間に緯糸を入れてヘラで打ちながら組む台である

昭和24年には三重県組紐協同組合(組合員数88人)が結成され、地場産業としての基盤が整えられた。それまでの手組みに加え、機械組みの導入も進み、やがて伊賀は国内最大の和装組紐の生産地へと成長を遂げる。

昭和51年12月15日、国の伝統的工芸品に指定された。


外国製品の流入と和装需要の低下

昭和45年頃に韓国製組紐、昭和55年頃に中国製組紐が進出してきた。さらに、昭和50年代は洋装ライフスタイルが急速に一般化した時代で、着物離れが顕著となった。これらの影響により、製品の供給過剰、工賃の低下を招き、組子の数は減少の一途をたどった。

平成に入ってからも、長引く日本経済の低迷が、需要低下に拍車をかける。

多様で優美な「組み」と配色の「美」が魅力の伊賀くみひも

「東日本大震災も大きな痛手となりました。東北地方は着物の消費地で、組紐にとっては大きな商圏のひとつでしたから」と三重県組紐協同組合理事長の山口明彦さんは話す。

組合員数は設立当初の3分の1にまで減ってしまい、組合青年部もここ数年は活動を休止している。組子の減少に伴って高齢化が課題となり、新規の組子確保も難しい状況が続く。組紐の製造工程に欠かせない染色、糸繰りを担う外注業者も激減した。

山口明彦さん

山口明彦さん

三重県組紐協同組合理事長


周知の拡大に努め後継者確保を図る

各組紐店も手をこまねいていたわけではない。従来の帯締めや羽織紐以外に、ネクタイやバッグ、アクセサリーなどの新商品を開発して、新規需要の開拓に取り組んできた。なかでもストラップは、組紐ならではの鮮やかな色使いが評判を呼んで流行した。最近の注目は刀の飾り紐だ。ゲーム「刀剣乱舞」の人気にあやかって、商品をそろえた。

古くから親しまれてきた、伊賀くみひもの帯締め

周知拡大の一環で、資料展示や商品販売、製作体験ができる施設「伊賀くみひもセンター」を昭和53年に開館。平成29年4月には、旧上野歴史民俗資料館に「伊賀伝統伝承館伊賀くみひも 組匠の里」としてリニューアルオープンした。

「組匠の里」では組紐の切売もしている。シンプルな組み方の紐が多いが、色が多彩で、少量でも購入できると人気

前年公開の映画「君の名は。」のヒットも追い風となって、来館者、体験希望者が急増した。製作体験に100人以上(団体客を除く)が詰めかけた日もあったという。リピーターも増え、なかには組紐作りのインストラクターとして館で指導する人も出てきた。

「組匠の里」1階にある組紐体験教室。2階には団体用の部屋もあり、毎年多くの人が体験に訪れている
組紐体験の様子。組匠の里では8玉の丸台を使って金剛組で、キーホルダーまたはブレスレットを作ることができる。インストラクター(写真右)が丁寧に指導してくれるので、小学生でも楽しめる
組紐ならではの鮮やかな色使いが好評

また、伊賀市内の全小学3年生を対象に、夏休みと冬休みの2回、組紐の体験講座を開いている。子どもたちに伝統産業である組紐に関心を持ってもらい、後継者確保に繋がればとの期待を込める。

「このところ組合員の店のなかに、家業を継ぐためにUターンしてきた若い世代が現れています」。少なからず明るい兆しも見られると、山口理事長は最後に微笑んだ。

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