『シン・ゴジラ』で話題の京急、その車両基地に樋口監督が潜入!

『シン・ゴジラ』で話題の京急、その車両基地に樋口監督が潜入!

2016/09/18

大ヒット中の映画『シン・ゴジラ』。様々な鉄道が登場するこの映画で、他の追随を許さない“破壊されっぷり”で注目されたのが京急電鉄だ。今回はその金沢検車区に、監督・特技監督をつとめた樋口真嗣氏が潜入取材。映画に登場した800形車両などを見学し、撮影秘話や“京急愛”を語ってもらった!

Yahoo!ライフマガジン編集部

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潜入したのは樋口監督!

 

樋口真嗣(ひぐちしんじ)●特撮技術監督・映画監督・映像作家として、特撮、アニメ、実写と幅広く活躍。映画『ゴジラ』(84)では造形助手、『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95)では特技監督、そして大ヒット中の『シン・ゴジラ』では、監督・特技監督をつとめている


今回訪れた金沢検車区は、横浜市金沢区にある京急電鉄(以下、京急)の車両基地。京急の車両の日常的な検査や、清掃などを行っている場所だ。「ここには『シン・ゴジラ』の撮影前にCG制作のスタッフの方も来られて、映画に登場する800形車両を予定時間を超えてまで入念に見学されていました」と京急広報の宮本さん。

金沢検車区の検査庫。金沢文庫駅と金沢八景駅の間にある

今回、この検車区を訪れた樋口監督は鉄道好き。映画に登場する京急の車両を800形に指定したのは樋口監督の発案だという。ちなみに総監督の庵野秀明氏も鉄道好きのため、「京急については俺が『800形じゃないとイヤ!』と言って、江ノ電に関しては庵野が『300形じゃないとイヤ!』と言っていた(笑)」とのことだ。

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大好きな京急の車両を前に取材中は終始笑顔の樋口監督。左は検車区長の長谷川さん

「ホント、映画の中ではヒドい目に遭わせちゃってスミマセン!」と挨拶&謝罪をしてから見学をスタート。最初に見学をしたのは「デト11・12形」。今はなき旧1000形車両の廃車発生部品を活用して作られた、機材運搬用の電動貨車だ。

デト11・12形。機材運搬列車として利用されている

「東急車両 昭和33年」という製造年の示されたプレートを見て、樋口監督も「私より年上ですよ!」と大興奮。その後は中にも入らせてもらい、往年の車両の雰囲気を味わいながら移動した。

「東急車輛 昭和33年」のプレートを撮影
デト11形の車内に入り大興奮の樋口監督。右は広報課の飯島さん

次に見学したのは「アント」と車両を分割せずに台車だけを取り外せる「台車抜取装置」だ。ウィ~~ンと音を立てながら機械から上下左右に移動し、スピーカーからアナウンスが流れる中で、樋口監督は「いやぁ~秘密基地ですねぇ! メカもの作品の元ネタは大体こういうところから来てるんですよ」と満面の笑み。実は『新世紀エヴァンゲリオン』好きという長谷川検車区長も「エヴァのジオフロントも~」と会話に加わり盛り上がっていた。このようなメカ満載な検車区は、子供からメカ好きの大人まで心をくすぐられること間違いなしだ!

ウィ~~ンと音を立てながら沈んでいくアント。確かに秘密基地っぽい!

続いて車両検査の様子を見学。この金沢検車区では、6日ごとに行う「列車検査」、3カ月以内に1度のペースで行う「月検査」などを行っているそう。

電車の速度をコントロールする主制御器を検査中。電車もカッコいいし、働く男もカッコいい!

樋口監督は広報の飯島さんと「京急は設計思想が硬派ですよね」「そうですね。ボルスタレス台車を使わないところとか、独特の考え方があるかもしれないです」と話しながら、普段は見られない車両の足元部分を観察。映画の中で破壊してしまった800形と対面した際は、「壊すのは愛情表現なんですよ! 京急さんは回復運転に定評があるし……」と弁解していた。

広報の飯島さん(中央)、宮本さん(右)と話し込む樋口監督

足元を見た後は真上から車両を見学。「普段は屋根の上部分を点検するスタッフしか通らない」という通路を歩き、「夢の様な光景ですよ!」と樋口監督。愛する800形を真上から見て、「上は意外とつるんとしているんですねぇ」と感心していた。

ズラリと並んだ車両を真上から眺め、「夢の様な光景ですよ!」と樋口監督

そしてパンタグラフの上げ下げも間近で観察。その後、スライダー(パンタグラフが架線と接触する部分)を触りながら見せてもらい、運転車両部の中村さんから「この部分は鉛筆の芯と同じ純カーボンなんです。減りは早いですが、そのぶん架線には優しいという特徴がありますね」と解説を受けていた。

パンタグラフの上がり下がりを間近で見学。スマホで動画も撮影していた樋口監督
交換前のパンタグラフのスライダー部分。触ってその質感を確かめる

そして車両の中に入り、自動車両洗浄装置の中に突入! 洗剤、ブラシ、水が次々と出てきてグヮグヮグヮ~と車体が洗われるのを、運転席から観察するという貴重な体験をした。なお車体の正面だけは手作業で洗っているそうだ。

自動車両洗浄装置の中に突入!
洗剤、ブラシ、水で側面が勢い良く洗われていく。ベストポジションで動画を撮影する樋口監督
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京急の車両で「ダァ シエリイェス!! 」とアナウンス!

運転席ではマイクを持たせてもらい、「ダァ シエリイェス!! 」(※ドア閉まりますの意)と京急風のアナウンスをして大満足の樋口監督。ドアの開け閉めや、人や物が挟まったときの「再開閉」のやり方を教わりながら、「以前にドア開閉シュミレータを一度体験してから、駆け込み乗車がいかに危険なことなのかわかりましたよ!」と熱弁していた。


電車を出た後は、新1000形1800番台車両のモックアップを観察。1800番台の車両では、先頭車前面中央に貫通路を設置するという変更が加えられたため、このようなモックアップを作って様々な検討を行ったそうだ。この車両には樋口監督がゴジラのイラスト付きでサイン! ゴジラの尻尾の先には、見事に吹っ飛ばされた京急の車両まで描き込まれている。

新1000形1800番台の車両設計に用いられた木製モックアップ。「ニコニコ超会議2016」に今も出展した
サインを頼まれた樋口監督。何やらイラストも描いているよう……
「京急さん、『シン・ゴジラ』ではヒドい目にあわせてゴメンナサイ!」(樋口監督)
完成したイラスト付きサインがこちら。京急の職員さんからは歓声が!
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800形の台車が転がるシーンは、ゴジラの容赦ない破壊の後で「一部のわかる人にだけほっこりしてほしかった」(樋口監督)という配慮もあったそう

なお、映画の中では大変な目にあっている京急の車両だが、最初に京急に届いた撮影協力依頼では「『800形の電車とゴジラが絡むシーンがある』程度しか書かれていなかったんです(笑)」と広報の飯島さん。しかし車両が破壊される事実が判明しても、京急側は「もうゴジラだから仕方ないじゃないか!」と撮影に全面協力。ゴジラに破壊されたとき、車体と台車がどのように分裂するか……という資料まで提供したという。


また、お婆さんを背負った人が踏切を渡ってゴジラから逃げるシーンは、京急の北品川駅近くで撮影。その場面は、ゴジラ襲来で京急が運休している設定だが、この区間は通過する電車の本数も多い。徐行で走る区間でもあるため、電車の往来が途切れて踏切が開く時間は極めて短かった。
また踏切を渡る人を真横から撮影しようとすると、景色の抜けが良すぎて遠くを走る電車も見えてしまうため、撮影は難航。それでも庵野総監督は、この数秒のシーンのために撮影場所もアングルも一切妥協せず、京急側から許可を得た時間の倍以上、撮影を続けたという。

写真左から、広報課の飯島さん、宮本さん、検車区長の長谷川さん、技術主任の川原さん、樋口監督、技術主任の佐々木さん、技術係の島田さん、運転車両部の中村さん

撮影に立ち会っていた広報の飯島さんは、その映像へのこだわり・情熱に感動したそうだ。『シン・ゴジラ』で京急が登場するシーンはゴジラ襲来の恐怖や緊迫感がリアルに伝わってくる場面が多いが、それは作り手側の妥協を許さない姿勢と、京急側の全面的なサポートにより生まれたものだったわけだ。
そして最後に、電車の方向幕を『シン・ゴジラ』でもゴジラが近くを通る京急蒲田に設定し記念撮影。京急電鉄のみなさん、この撮影にも全面協力していただいてありがとうございました!

映画『シン・ゴジラ』

映画『シン・ゴジラ』

全国東宝系にて絶賛公開中!

総監督・脚本/庵野秀明 監督・特技監督/樋口真嗣 潤監督・特技統括/尾上克郎 出演/長谷川博己 竹野内豊 石原さとみ

取材・文/古澤誠一郎 撮影/高仲建次 取材協力/京急電鉄 東宝株式会社

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