カフェライターに聞いた、2020年が上質カフェの年になる理由

カフェライターに聞いた、2020年が上質カフェの年になる理由

2019/10/16

喫茶店に入り浸っていた学生時代を経て、今や全国1500軒以上のカフェを訪れたというカフェライターの川口葉子さん。世の中の多様なブームに影響を受けながら、カフェは姿を変えてきたといいます。その移り変わりを見てきた彼女が考える、流行するカフェの傾向とは?

Yahoo!ライフマガジン編集部

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\最新カフェシーンのポイント/
ポイント1. ワンテーマスイーツで差別化
ポイント2. SNS映えで情報拡散
ポイント3. 「追体験」を誘って来店促進

10代で喫茶店に魅せられて、全国1500軒以上をめぐったというカフェライターの川口葉子さん。日本のカフェ事情に精通する彼女なら、2019年のトレンドを俯瞰して見ることができるはず。ということで、川口さんが選んだ『今年らしいお店』で待ち合わせをすることに。

窓際、隅っこの席で読書をされる川口葉子さん
川口葉子

川口葉子

カフェライター

ーー川口さんが、2019年のカフェシーンを象徴する店として選んだのは「Minimal 富ヶ谷本店」。さっそくお邪魔して、詳しい話を聞きました。

カカオ豆と砂糖だけで作る「ミニマル=最小限」のチョコレートを広める

「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル-ビーントゥバーチョコレート-)」は2014年12月に東京・渋谷区富ヶ谷から始まり、都内に5店舗を展開するクラフトチョコレートメーカー。定番の「チョコレートパフェ(1650円)」と季節替わりのシーズナルスイーツを各1種類、それらに合うコーヒーやチョコレートを味わうドリンク(407円〜)を提供する。

そして「Bean to Bar」とは、カカオ豆の選別から製造・販売までを一貫して手がけるということ。カカオ豆の産地、カカオ濃度、焙煎度などを細かく明記した常時8種類のチョコレートも販売する。

無駄がなく、シンプルな内装が心地よい

ーー今回、こちらのお店を選んだ理由をお聞かせください。

川口葉子さん
川口葉子さん
「『Minimal 富ヶ谷本店』さんは『カフェの現在と未来』を感じられるお店だと思っています。このところ世界的にクラフトのムーブメントが起こっています。例えばクラフトコーヒーやクラフトビール、クラフトチョコレートなどですね。特にチョコレートは、カフェスイーツの素材として定番です。Minimalは『Bean to Bar』というキーワードを知らしめたお店の一つであり、こちらの商品は高級ショコラティエが作るようなぜいたく品ではなく、大量生産でもない新しい『第3のチョコレート』を確立したと思っています」
同店のチョコレートはカカオ豆が粗めでザクザクとした食感が特徴的。まさに『カカオ豆を食べる』感覚を楽しめる

ーー現在のクラフトブームにのった、新しい第3のチョコレートですか。

川口葉子さん
川口葉子さん
「チョコレートの製法も『ミニマル=必要最小限』で日本の美意識に通じるものがありますね。クラウドファンディングを活用してお店のファンとともにお店を作っていく姿勢に今らしさを感じるし、経営戦略やPR方法もスマートだと思います。また、積極的にコーヒーや日本酒の専門店とコラボして、ペアリングという楽しみ方の周知にも力を入れている。私はそんなMinimalの志と行動に『現在』を感じ、また『未来』も感じています」

ーー現代らしい考えで、未来を見据えて行動しているんですね。最近のトレンドの傾向を、もう少し詳しく教えてもらえますか?

流行のポイントを「Minimal 富ヶ谷本店」から学んでみよう

ポイント1. ワンテーマスイーツで差別化

川口葉子さん
川口葉子さん
「2010年代はワンテーマのスイーツに特化したカフェが注目を浴びる傾向にありました。わかりやすい例がタピオカミルクティや数年前のパンケーキなどです。近年のカフェは昔に比べて、提供する商品のクオリティが格段に上がりました。『話題性』や『差別化を図る』という意味でも、何か一つを極めるのは効果的かもしれません」

\複数のチョコレートを味わえる定番パフェ/

「チョコレートパフェ(1650円)」はカカオ濃度80%の「HIGH CACAO」など、店頭でも販売する3種類のチョコレートを使用する※富ヶ谷本店限定
川口葉子さん
川口葉子さん
「Minimalは『チョコレートを新しくする』を理念にスタートして約5年。カカオ豆と砂糖だけで作るチョコレートの産地ごとの味の個性、おもしろさを広く伝えるためにスイーツを始めたそうです。こちらのパフェは3種類のチョコレートを使って作られていて、専門店だからこそ提供できる変化に富んだ味わいが魅力的。チョコレート好きの私としては、チェックせざるを得ません」

\チョコ×ソーダの新感覚ドリンク/

炭酸がさわやかな「チョコレートソーダ(660円)」※富ヶ谷本店と銀座店限定
川口葉子さん
川口葉子さん
「銀座店で初めてチョコレートソーダを飲んだときは衝撃を受けました。スパイスと柑橘系のフルーティな味わいで、スッキリとした後味です」

ポイント2. SNS映えで情報拡散

川口さんがInstagram(@yohko_kawaguchi)にアップしたシーズナルスイーツの「チョコレートモンブラン(1320円)」
川口葉子さん
川口葉子さん
「もう随分前から各媒体で『フォトジェニックなカフェ特集』が取り上げられていますが、いまだにSNSの影響力は侮れません。むしろメディアに掲載するよりも、SNSで拡散された情報の方がユーザーにとっては身近で、リアルですよね。写真映えを意識したインテリア作りやメニュー開発は今後も続くと思います。最近は昭和テイストを現代の視点から再解釈した『ネオ喫茶』と呼ばれる新しい喫茶店が注目を集めています。レトロブームが続いてる今、未知なのに懐かしいものを求める若い方にハマったのでしょう。とても興味深いですね」
モンブランにナイフを入れると、チョコレートアイス&サクサクの土台がお目見え。アイスにはフルーティなコロンビアのシエラネバダ産カカオを採用
川口葉子さん
川口葉子さん
「Minimalにはミシュラン星付きレストランにいた料理人など、各分野で活躍したスタッフがいて、多彩な食文化と技術が一つのスイーツに集結するんです。前回の『チョコレートのかき氷』も、ビジュアル、味ともに衝撃を受けました。こんな組み合わせもありなのかと、いつも驚きながら食べますし、写真も欠かさず撮ります(笑)」

ポイント3. 「追体験」を誘って来店促進

常時8種類のチョコレートが店頭に並び、試食も可能。商品は季節で入れ替わる
川口葉子さん
川口葉子さん
「誰か一人が大声で宣伝したからといってブームになる時代ではありません。お店が意識していなかった意外なポイントが、SNSなどで魅力として発見されて、流行につながるケースが今後も続くと思います。例えば世界観がはっきりとしたコンセプトカフェは、ユニークで人の記憶に残りやすく、話題になる可能性が高いです。でも一見普通のお店や商品が、突然注目を浴びるパターンも少なくありません。そこでポイントとなるのが、情報を受け取った人に『自分も体験してみたい』と思わせることです」
「一つずつ食べ比べてみると、カカオ豆の酸味やコクが全く異なるので驚きます」(川口さん)
川口葉子さん
川口葉子さん
「Minimalでは、クラフトチョコレートメーカーならではのユニークなスイーツを提供しています。それだけでも十分興味がそそられるのですが、このお店のように産地ごとのカカオ豆の個性をテーマにチョコレートの食べ比べを気軽に経験できるお店は少ないのでは? 体験や世界が広がる想像をさせて『行きたい』思わせることが、来店につながるのだと思います。ここは駅から徒歩10分ほどと、少し離れています。それでもわざわざ立ち寄る方は、Minimalでは『新しい体験ができて、自分を楽しませてくれる』と期待して来るのでしょう」
「Minimalはお客さまへの商品説明にも時間を惜しまないお店なんです」と川口さん。使用しているカカオ豆の特徴を聞きながら買い物ができる

ーー確かに新しい経験や世界って気になります。思いがけない流行にもちょっとした法則が隠れていたんですね、勉強になりました。

流行のポイントを三つご紹介しましたが、「なるほど、確かに」と納得された方も多いのではないでしょうか。SNSが普及している今は、魅力あふれるカフェの情報が簡単に手に入る時代です。それらの情報を参考にしながら、実際に自分の五感で味わってみたいですね。

川口さんがカフェに求める条件とは?

「年齢とともにカフェとの付き合い方が変わってきました」(川口さん)
川口葉子さん
川口葉子さん
「若い頃は目新しいお店がオープンすれば早いうちに必ず足を運んでいましたが、今はスタンプラリー的なことはせず、一つのカフェをどれだけ理解できるか、いい関係を築けるかに重きを置いています」
今回のお供は企画編集・三枝克之さんと写真家・西美都さんのビジュアルブック「時の名前」

ーーいい関係を築きたいと思うカフェとは、具体的に?

川口葉子さん
川口葉子さん
「まず、コーヒーを含めて提供するものが一定のクオリティをもっていること。その上で『地域とのつながりや文化を育てたい』など、志を持って行動をしているカフェを応援していきたいなと思っています。カフェは交流の場であると同時に、一人の時間を過ごせる場所です。年長の先輩として助言させていただけるなら、お店へのリスペクトを忘れず、自由に楽しんでもらえたらと思います」

取材・文=小島加奈子(シーアール)、撮影=小林岳夫

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