Groovy広東! 目黒|サエキ飯店

Groovy広東! 目黒|サエキ飯店

2019/12/03

中国料理に魅せられて、国内はもとより中国にも足繁く通って取材する中国料理探訪家・サトタカさん。“中国を食べ尽くす”プロに、今行くべき東京の中華料理店を教えてもらいます。

FOOD PORT.

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リズミカルで小気味よく、キレがあって、痛快!

 

カウンター越しに見える手さばきに、からだの動きに、惚れ惚れする。

骨付きの鶏肉をトン、トン、トンとリズミカルに中華包丁で切り分け、カウンター越しにトンと置く。翻ってシュンシュンと湯気を上げる蒸籠を開けば、ブリンと弾力のありそうな魚が湯気とともに現れる。煙が出るほど熱したピーナッツ油をその上にじゅ~っとかければ、ナンプラーと葱が焼けた香ばしい香り。隣のコンロでは土鍋がチンチンに熱されて、この後どうなるのか余談を許さない。

「サエキ飯店」のカウンターはライブだ。リズミカルで、小気味よく、キレがあって、痛快。BGMにジャズが流れているわけではないのに、この店にいると、まるでジャズのようだと思う瞬間がたびたび訪れる。動きに、料理に、グルーヴ感がある。

料理は広東、視野は世界!

 

店主の佐伯悠太郎さんは、高校卒業後、広東料理の名店を経て、香港で4店舗、広東省で修業して帰国。ナチュールワインと広東料理の店「楽記」で料理長を務めた後、世界一周の旅に出て開業した30代の料理人だ。

私は旅先で出会って以来、佐伯さんが20代の頃からの付き合いになるが、彼は料理人人生の始まりから一貫して広東畑だった。ゆえに、技術は紛れもなき広東。しかし、そのマインドは“広東バカ”でも中華一辺倒でもない。

「肉がうまいって聞いたんで」と、アルゼンチンに向かったと思えば、ペルーのクスコまで行ったのに、マチュピチュを見ずに「日式カレーうどんのおいしさが沁みたんですよ」と真顔で語ったり、旅の途中で香港に寄ってベトナム人と1か月農業をしてみたり。

旅から帰ってきた後に聞く武勇伝は、いつだって新鮮だ。現在、店に並ぶジョージアワインも、旅の途中で「世界各地でいろいろ飲んでみて、これなら自分がすすめられる」と思ったことがきっかけだったりする。

 

そんな佐伯さんの店だから、食べる方もどこか軽やかな気持ちで、かつ、食べる気まんまんで訪れたい。

料理はおまかせのコース1本のみ。前菜の鶏や豚耳、大根餅で軽く胃袋をドライブさせ、1杯飲み終わったくらいのところでギンギンに熱した土鍋料理が登場したら、五感のすべてを鍋の中にフォーカスしよう。

そこには揚げたハタ、ぶりんぶりんのすっぽんなど、その時、とっておきの“いいもの”しかない。蓋を開けると同時に中の香りが溢れ出せば、ボルテージが上がらぬ者などいないだろう。

 

さらに続く蒸し魚は身も香りも弾けるよう。たまらず米を欲した時は、ジャスミンライスも好きなだけ。米に魚のタレをつつーっとかけて掻きこむのもまた至福。最後、手製のワンタンメンをすすり、デザートを食べるまで、集中と興奮は続く。

無我夢中で食べ、ふと顔を上げれば、ある時はカッカッと湯切りをし、ある時はワインを注ぐ佐伯さんがいる。その動きは実にGroovy。よくジャズで使われる言葉だが、この言葉がぴたりとくる。

 

今回のコラムのタイトル『Groovy』は、ジャズピアニストのレッド・ガーランドが1957年にリリースした名盤の名称からとった。1曲目「C Jam Blues」の、はじめは静かに、次第に小気味よく、キレイにスイングしていく様子は、カウンターで前菜から気持ちを高めて助走していくような感覚とシンクロする。

この店もまた、調理場から醸し出されるグルーヴが心地よく、飽きるなんてことがないと思える。続く限り、何度も通いたい店だ。

 
サトタカ(佐藤貴子)

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「美味しい日本が集まる港」をコンセプトとした、日本の食文化を発信する「FOOD PORT.(フードポート)」。最新ニュースやレストラン情報、編集部独自のコンテンツなど、独自の視点で発信していきます。

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