按田餃子でたすかった精神科医の話

按田餃子でたすかった精神科医の話

2020/01/06

精神科医として総合病院に勤務する傍ら、文筆、音楽、ラジオなどマルチに働く星野概念が「食べに行く」という行為を通して、「こころ」に関する気づきをひも解く。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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色々な養生法はとても大切なことです

こんにちは、精神科医の星野概念です。

この連載は、日常の食生活の中から僕が感じたり考えたりしたカウンセリング的要素をみなさんにご紹介するものです。

時々みまわれる謎の不調の時期が少し続きました。その時、体が呼ばれるように入った按田餃子にとてもたすけられました。これはもはや養生。今回はそんな話です

  

【目次】
1. 按田餃子でたすかった話
2. 食養はとても大切


1. 按田餃子でたすかった話

・如何ともしがたい時期

なんだか元気が出ない時ってありますよね。そういう時に限って色々なことがうまくいかなかったり、誰からも連絡がこなかったりして、どんよりが深まったりするものです。

  

少なくとも、僕はそういう、如何ともしがたい時期が時々やってきます。

原因が何かは分からない。

こんな時、日頃の自分の行いが良くないせいだ、と考える人がいるかもしれません。

確かにそれも一理あるような気はします。

でも、その方向で考え始めると、さらに自己嫌悪に陥りそうで怖い。

また、仮に日頃の自分の行いの悪いところに気づき、それを正すことができたとして、それでも状況が変わらなかったら絶望的です。

  

なので、僕は自分のせいにするよりも、もっと曖昧な他者のせいにしてみることを覚えました。

・邪気みたいなもの

僕のこれまでの経験を考えると、原因不明の如何ともしがたい状況は、ある時霧が晴れたようにうまくいき始めることがあります。

  

その時は本当にスッキリするし安心するのですが、問題は、それがいつ起こるか分からないということです。

つまり、極端なことを言えば、霧が晴れるまでは待つしかない。

  

もちろん、「霧、晴れないかなぁ」と思いながら色々なことを考えたり行ったりと試行錯誤することが、「霧晴れ」を呼ぶのかもしれません。

  

でも、晴れろ晴れろと焦りすぎると、状況悪化の方向にひた走る可能性もあります。判断力が鈍っている不調な時に色々なことをやりすぎるのは危険とも言えます

  

なので僕は、どうにもならない邪気みたいなもののせいにして、

  

それを払うために休養や栄養を取って過ごそうと考えるようになりました。

  

これによって、焦りすぎるのを予防できるような気がするのです。

・最近も邪気みたいなものが

最近もそういうことがありました。

仕事でも、仕事以外でも、気分が落ち込むことばかりが起こる。

  

ような気がする。

  

そんな状態が数週間続きました。

あまり無理しないようにしようと考えて、飲みに行く頻度を少し減らして、読書の時間を増やしたりしながら静かに過ごしました。

それでもなかなか霧晴れはやってこない。

  

ある時、同業者の人とトークイベントが迫っていたので打ち合わせをしようと代々木上原で待ち合わせをしました。

彼のイベントだったこともあり、打ち合わせ場所も任せていたのですが、たまたま行こうとしていたお店がお休み。

どうしようかと言い合いながらしばらく歩きました。素敵な店がたくさんある代々木上原ですが、なんとなくピンとくるお店がありません。

その時、ピン。

  

そうだ、按田餃子に行こう!!

  

思いついてしまったので、彼にお願いして按田餃子に向かいました。

  

・体が反応した

今考えれば、邪気みたいなものを払いたかった僕の体が、按田餃子の不思議な力に、ピン、と反応したのかもしれません。

按田餃子は大好きなお店で、うまく言葉にできませんが、不思議な力があるお店なのです。

  

それは、数字などで計測できるようなものではなく、非常に感覚的なのですが、間違いなく、なんだか「たすかる」感じがするのです。

  

「間違いなく、なんだか」、という頭でうまく理解できなさそうなところがキモのような気がします。

・メニューは個性的。

何かを抱いているような形で包まれた水餃子の中には、強すぎないけど個性のある餡。行くたびに、4種類全て頼みたくなります。

木耳(きくらげ)と金針菜と豚肉の煮込みである「ラゲー煮込み」やそれをご飯にかけた「ラゲーライス」は他では食べられないメニューでとても美味しい。

僕の好物の麻婆豆腐も、油が使われておらず、しっかりとスパイシーで、思わずありがとうございます、と食べながらお礼を言いたくなります。

他にもたくさんあって、メニュー表にはそれらの説明が書いてあるのですが、その文章も面白く、真顔で冗談を言っているような説明書きが並びます。

例えば

「金針菜と海藻の和え物」の説明書きは

「すごく健康に良い」

と、メニューの説明というより、「意見」といえることが書いてあったり、

「ラゲー煮込み」の説明書きは

「按田的木耳金針菜豚肉煮込」

と、突然漢字だらけになっていたり。

飲み物も色々と楽しく、古代米酒白酒ハイボールがあったり、「すごく助かる酒」と説明されている包命酒というメニューがあったりします。

ソフトドリンクでは、スパイスの味がすごく美味しい「自家製コーラ」

  

や、ターメリックたっぷりの「ターメリックレモネード」、それから「木耳汁(キクラゲジュース)」というちょっと注文するのに勇気がいるメニューもあります。

それらを色々楽しみながら、たすかりたい僕は、最後に「薬草のゼリー」と説明されている「仙草ゼリー」を頼みました。

これがまた、すごく美味しいお茶のようなゼリーで、テレビの「すべらない話」の「すべらんなぁ〜」のような感じで、「たすかるなぁ〜」と自然に言葉が漏れました。

  

・実際にたすかった

驚くことに、その翌日、霧は晴れました。

  

本当に、邪気のようなものが払われたのかもしれません。

按田餃子の不思議な力は本当にすごいなぁと実感すると同時に、それに反応した自分の体を褒めたたえたくなりました。

  

2.食養はとても大切

僕は、体やこころの不調に悩んでいる人と診察室で会います。

それは総じて診療と言えます。

病院や薬局に行って、診療を受けたり薬をもらったりすることは、不調を治すための行為です。

これにあたり、常に考えるのは、なるべく負担のかからないことを心がけたいということです。

  

例えば薬には副作用があります。西洋医学の薬だけでなく、漢方薬も副作用はゼロではありません

ただ、副作用の頻度は明らかに漢方薬の方が少ないので、個人的には、なるべく多く勉強していきたいと考えています。

状況にもよりますが、副作用や負担は当然少ない方が良いですよね。それを追求していくと、「治療」というより「養生」という雰囲気になっていきます。

  

・養生とは

養生とは、概ね自分で行うことができる健康法とか、体操とか、食事などを指します。

治療と呼ばれるものほどの急激な効果はありませんが、負担なく、じわじわと効果があり、養生を続けることでその効果を持続させることができます。

体に優しい食事を心がけることは、食事による養生なので食養と言えます。

毎回間違いなく健康的な食事をしなければならないということではないと思うのですが、時々、体が喜ぶ食事をすることで、不調をある程度防ぐことができたり、今回の僕のように不調から回復するきっかけになるのだと思います。

そのためには、明らかに体が喜ぶ感覚を味わってみることが大切です。

按田餃子は、食養の感覚を育てるのに最適なお店だと思います。

  

年のはじめに、体をいたわる話ができて良かったです。

  
  

文・構成:星野概念
イラスト:権田直博


星野概念(ほしのがいねん)

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精神科医

権田直博(ごんだなおひろ)

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