犬養裕美子のお墨付き! 3年探して決めた運命の場所『髙しま』

犬養裕美子のお墨付き! 3年探して決めた運命の場所『髙しま』

2019/12/30

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第77回江戸川橋「蕎麦 髙しま」

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

都心とは思えない落ち着いた環境の中で蕎麦打ちに打ち込む

個人的なことで申し訳ないが、毎朝1時間のウォーキングが習慣化して1年。中でも神田川沿いは、いちばんのお気に入りコース。江戸川橋と面影橋の間、駒塚橋を渡るあたりは静かで風情があるエリアだ。ある日、そんなコースを歩いているとこれまでなかった白い小さな行灯が目に 入った。「蕎麦 髙しま」と書かれている。後日さっそく行ってみて、驚いた。元印刷工場だった店内は天井が高く、細長い。広~い店内なのにカウンター3席、テーブル3卓、個室1部屋。元気のいい女将さんと、厨房にこもって蕎麦を打つ店主のふたりで営んでいる様子。

一番奥に鎮座いたしますは、店主の祖父(享年103歳)から譲り受けた仙台箪笥。「新しい店はこの箪笥が見える店にしたくて」と店主の山田さん
ざる830円。以前は蕎麦9に対して粉が1。新店では蕎麦10に対し粉は外1。より繊細で細やかなそばを目指す

「29歳の時、渋谷の『多心』という店で独立しました」という山田心さん(41歳)。そこはカウンタ―10席、テーブル8席、個室2部屋。「満席だと30人を超えるので、スタッフ3人を雇っても かなり忙しくて」。結構なことだと思うが、山田さんはそれが苦痛になってきたらしい。

「これでは自分の打ちたい蕎麦が打てない」(心さん)

そこでもっと規模を縮小し、蕎麦打ちに打ち込める理想の店を作ろうと考えた。休日となると、奥さんの奈津子さんと一緒に、都内はもちろん湘南へ行ったり、信州へ行ったり。

「3年ぐらい探し続けたある日、ここに案内されたんです」(心さん)

即決! だったという。神田川沿いの風景は、まるで時代劇のセットのように風情がある。物件は印刷工場だったため、ガスがなく工事費用は余分にかかったが、そのかわり理想どうりの店ができあがった。

オープンは2019年4月。屋号を「高しま」としたのは、山田さんの故郷・長野県諏訪のシンボルが高島城だったから。

かけ850円 まろやかでやさしいかけそばのつゆ。透明感があり、飲み干しても塩からくない。細いそばとのバランスもすばらしい

「隠れ家という言葉がぴったりの店なんですが、隠れ家すぎて、お客様も気が付いてくれない」と笑う奈津子さん。

そうは言っても私のように神田川沿いの散歩の途中に偶然見かけて…とか、近所の住民情報で知って…とか。少しづつ店。の存在が知られるようになり、今では週に3回は足を運ぶ常連もいる。

「すぐそこにお住いのおじいちゃまですが、いらっしゃる時はきっちり予約の電話をくださいます」(奈津子さん)

ここが支持されるのは蕎麦だけでなく、つまみや料理が充実していることも大きな理由ではないだろうか。昼でも夜でも20品は用意されている。

定番の蕎麦前もあれば、季節の素材を使ったものなど。どれも素材の持ち味を活かしてていねいに作られている。いまどき、蕎麦屋でこれだけの仕事をしている店も珍しい。そんな肴を当てに、日本酒やワインなどを楽しんでいると、しっかりとお腹も満足。

左上・助子(タラの子)のうま煮750円、右上・金時芋のレモン煮600円、左前・揚げ銀杏730円、右前・秋ナスの田舎煮650円。「ほどほどにおいしいのが理想」という

さらに前日までの予約で、つまみ数品に蕎麦、甘味のセットの昼コース3850円、夜コース4400円がある。ふらりと寄るのもいいが、これがもっともお得。初めての時は予約をして行くべき!

日本酒は岩手出身の女将さんの担当。 左から岩手「南部美人」820円。宮城「勝山献」1130円、岩手「赤武」1000円
いつも笑顔の看板娘・奈津子さんは前のお店のお客さんだった!  店主の山田心さん。蕎麦づくりにすべてを注ぎたいという思いが、新店で叶った。「以前の忙しさとは違うやりがいを感じます」

※2019年12月31日(火)大晦日の営業
昼:11時30分〜13時30分L.O(売り切れ次第終了)
夜:17時〜と19時〜の2部制 (予約制)
(年始は2020年1月6日夜の部から営業)

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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