大掃除シーズンに問う「遊園地かと思った」ド派手ごみ焼却場の謎

大掃除シーズンに問う「遊園地かと思った」ド派手ごみ焼却場の謎

2019/12/30

2019年もいよいよ残りあとわずか。みなさん、大掃除はもう済ませましたか? 家中を片付けて積もるごみ袋を目の前にして、改めて考えたいごみ処理問題……おっと、シリアスになりそうでしたが、今回は、そんな問題もポップかつアーティスティックに解決してしまいそうな焼却場のお話です。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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舞洲の入り口にそびえる夢幻の宮殿!?

遠目からも一瞬で目に飛び込んでくる舞洲工場の外観

大阪の湾岸エリアをドライブしていると、突如現れる独特な見た目の建物。どうにも気になって仕方がないという人も多いのではないでしょうか。その正体は、大阪市・八尾市・松原市・守口市のごみを焼却する施設「舞洲(まいしま)工場」です。場所柄、近所の大型テーマパークの関連施設か何かと勘違いして訪ねてくる人もいるという都市伝説を聞いたことがある人もいるのでは?

\外観をデザインしたのはこの人!/

建物内にはフンデルトヴァッサーの経歴や作品を紹介するパネル展示も

この舞洲工場の外観をデザインしたのは、オーストリアを代表する芸術家で建築家のフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー。曲線を多用したフォルムに奇抜な色彩、そこに自然との共生というテーマを盛り込んだ彼の建築物は、日本やオーストリア、ドイツなどで圧倒的な存在感を放っています。

ごみはどうやって燃やすの? 工場見学スタート

工場の右側にあるのは、有害物質を取り除いたガスを排出する煙突。展望台じゃないのでお間違いなく
舞洲工場の見学プログラムを担当している森永さん

不思議な外観を鑑賞してすっかり心をつかまれていたところで、ふと思い出す。そうだ、ここはごみ焼却場! 個人、団体ともに広く工場見学を受け付けているんです。ということで、さまざまな設備を兼ね備えた見学コースを大阪広域施設組合の森永一洋さんに案内していただきます。

大阪広域施設組合・森永さん
大阪広域施設組合・森永さん
「当施設は多様化するごみを適正に処理するため2001年4月に開業しました。ごみ焼却施設の視察はもちろん、フンデルトヴァッサーさんの建築を生で見たいというファンの方など、国内外から年間1万8000人もの方が見学に来られます」
モザイクタイルがかわいい見学ポイントへの通路もフンデルトヴァッサーテイスト全開!

エレベーターで5階に上がり工場見学がスタート。舞洲工場の模型が出迎えた先に、巨大なごみピットが現れます。窓の外に見えるのは、巨大なクレーンが休みなくごみを運ぶ様子。収集車などで運ばれたごみは、まずここに集積されます。深い谷のようなピットには、1日に最大900トンものごみが集められるのだとか。

作業工程を詳しく知ることができる断面模型
メカメカしいクレーンの動く姿に思わず興奮!
森永さん
森永さん
「ごみクレーンは完全オートメーション操作で、一度に約7~8トンのごみをつかむことができます。広い空間で巨大な鉄の爪が行ったり来たりしている様子は、SFやメカ好きな方なら、きっと喜んでいただけると思います」
ごみ焼却時に稼働する巨大タービン

ごみピットで集められたごみは投入ホッパから焼却炉へと移動し、約1000℃の炎で焼却。完全に灰となったごみはここで一気に焼却前の20分の1の体積となり、灰ピットへ移動します。この作業の過程でごみを燃料とした火力発電が行われるのですが、舞洲工場ではその電力を施設の運用だけでなく電力会社へ販売するなど、エネルギーの製造にも取り組んでいます。

タービンでの火力発電を体感できるコーナー。ハンドルを回すと右側のオブジェに明かりが灯ります

ごみを焼却するとダイオキシンや有毒な排ガスが発生します。舞洲工場の大部分を占めているろ過集じん器やガス洗浄塔では、これらを分解し、有害物質を基準値の100分の1まで落とし込んで無害化。環境への配慮もばっちりです。

ろ過設備の前では、アニメーションで作業工程を解説してくれます

工場見学もいよいよ佳境。ここで登場するのが、大阪市では唯一、舞洲工場にしかない粗大ごみの破砕施設。ピットの底に積み上がった自転車や家具といった大型のごみがクレーンゲームのようにつかまれ、ガシャガシャと音を立てながら隣の破砕装置へ送られる様は圧巻の一言です。

粗大ごみピットの作業は窓からすぐ見下ろせるので迫力満点
収集車が集まるごみの投入スペース。これ、巨大ロボ発信するやつですか!?

工場内の機械を24時間体制で管理する中央制御室、そして屋上庭園を見終えると見学も終了。かなりの駆け足&ダイジェストでお届けしましたが、実際のコースは、この倍以上の設備や施設を見学できますよ!

中央制御室のコントロールパネルも曲線を用いたフンデルトヴァッサー風味

ところで素朴な疑問なのですが、この見た目でごみ焼却場というのがいまだに信じがたい……いったい、どのような経緯でこの外観になったのでしょうか。そして、都市伝説となっている、あの超人気テーマパークと間違えるという人は本当にいたのでしょうか。

森永さん
森永さん
「舞洲は大阪に2008年のオリンピックを招致しようという活動があった際、会場として予定されていたエリアで、その玄関口にインパクトのある建物を建てたかったこと、そして環境を重視するフンデルトヴァッサーさんの創作テーマと大阪市の思いが共鳴して、このような工場が誕生したと聞いています。また、ちょうど大型テーマパークと同じ時期に完成したということもあり、当初は間違えて入ってくる人もいたと聞いています」
屋上庭園は、予約見学者のみ入ることができるスペース(上記の写真)と、一般に開放されたスペースがあります

お~、やっぱりテーマパークや遊園地と勘違いする人、いるんですね! 広さ1万5000平方メートルでこの見た目だと、そりゃそう思うわな。実際、見学コースは体験アトラクションなども豊富で、遊園地ばりの楽しさでしたよ。見学希望の方は、舞洲工場のホームページから予約できるので、この記事を読んで環境問題やフンデルトヴァッサーに興味を持たれた方は、ぜひ一度、足を運んでみてください。

こちらも要チェック! 舞洲スラッジセンター

舞洲工場の真向かいにそびえ立つ舞洲スラッジセンター

舞洲工場を訪れる際に気になっていたこと。「あれ、もう一つ似た建物あるよね……」。そうなんです! 舞洲工場から徒歩すぐの距離にもう一つ、フンデルトヴァッサーが外観デザインを担当した「舞洲スラッジセンター」があるんです。こちらは、大阪市内の下水処理場から地下パイプを経由して運ばれてくる汚泥を処理し、溶融スラグという埋戻し材などに利用される粒状の物質を生成する施設です。

飾り用の窓がたくさんあるのもフンデルトヴァッサー建築の特徴
一般開放されているエントランスでは、施設の概要や下水処理の仕組みを説明する展示が見学できます

こちらの施設も事前予約で見学が可能。各下水処理場から送られてきた水分約98%の汚泥を脱水→乾燥→粉砕→溶融という行程を見ることができます。

集められた汚泥が脱水され、水分約80%の「汚泥ケーキ」と呼ばれる状態に
溶融スラグは運搬車で集積場に運ばれます。これまたメルヘンチックな外観

舞洲工場と同じく、舞洲スラッジセンターでも溶融炉の排熱を汚泥の乾燥に利用するなど環境問題への取り組みを行っており、人と環境にやさしいというモットーを実践。アート鑑賞と同時に環境問題を学ぶことができる舞洲の2つの施設。大阪が世界に誇るスポットとして今後、さらに注目が集まることが予想されます。

フンデルトヴァッサーの曲線へのこだわりが感じられる舞洲スラッジセンターのエントランス

取材・文=伊東孝晃(クエストルーム)、写真=久保秀臣

\改めて問いたい案件/

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