犬養裕美子のお墨付き! 日常和食の“老舗”、代々木上原「青」

犬養裕美子のお墨付き! 日常和食の“老舗”、代々木上原「青」

2016/10/07

“アナログレストラン”はレストランジャーナリスト犬養裕美子が選ぶ「いい店」。作り手がその場できちんと料理をしていること。小さくても居心地のいい空間とサービス、かつ良心的な値段。つまり人の手、手間をかけた「アナログ」で「アナ場」な店。第13回は 。

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

人気の街・代々木上原で早14年。今日も淡々と店は開く

藍染の地に白く抜いた「青」の文字。店先に飾られた季節の野の花とぼんやりともる灯りを見るとホッとする。代々木上原が今のように“おいしい街”としてにぎわうよりかなり前、2002年にオープした当時からこの店は何も変わっていない。

代々木上原でも。まわりはバーが多い一画

実はこの街に長年オフィスがあった関係で、私にとっては懐かしい“地元”。居酒屋よりも落ち着けて、料理には個性があってリーズナブル。しかもラストオーダー深夜1時という、仕事に追われ続けていた時期だったこともあってとても使い勝手の良い店だった。

しばらくすると雑誌にも登場するようになってすぐに人気店になった。それでも、夜遅くの食事にはよく利用した。ガラス越しに空席があるかそっと覗きこんだことを思い出す。扉を開けると坊主頭の店主・山根崇義さん始め、作務衣スタッフの元気な声に迎えられる。14年もたったとは思えない、貫禄こそついたが清潔な店内。山根さんも女将のさつきさんもホントに当時と変わらない。

甘海老のウニ醤油がけ900円。トロリとした食感に甘い甘海老。これだけでもおいしいが、これに醤油漬けのウニをソースかわりにちょっとつけて頂くと、塩味、甘味、旨味がよくからむ

“一歩控えたもてなし”もこの店らしさ。タイミングよくおしぼりが渡され、お酒と料理のメニューが手渡される。そしてここからがこの店ならではのお楽しみであり、悩ましい時間。まず、何を選ぶ。大きなメニューブックには60近くの料理が並ぶ。さらにこれとは別に本日の刺身、季節のメニューが差し込みで入っている。さらに今月のコース料理3400円(22:00まで)がある。これはメニューの中からピックアップされた、その月のオールスター7~8品。初めて訪れる人には、このコースに食事メニューを加えるのがおすすめ。ちなみにこのコースの値段は14年前からまったく変わっていないのがエライ!

お通し600円は、日替わりで3品。右から揚げぎんなん、高野豆腐の海老真丈はさみ、数の子とイカの奉書巻き。小さいけれど、きちんと手をかけたものを日替わりで。これを出されるとお酒がぐんとおいしくなる

すべてが名物料理! 愛される理由は旨味のチョイたし

サンマと里肝の肝醤油焼き1200円。旬のサンマの肝を味わう料理。すりおろして火を入れた里芋が不思議な食感
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店主の山根崇義さん、46歳。32歳で独立した頃と変わらない!

メニューに載っている料理の9割はもう何年も変わらない精鋭メニューばかり。私の個人的なお気に入りは、蓮根まんじゅう2コ1400円(もちもちした蓮根の食感がいい)、わたり蟹の水餃子900円(蟹の旨味は皮に包まれて楽しめる)、鶏むねときのことすり立てパルミジャーノのサラダ1100円(シーザースサラダのような、ちょっとコクあるチーズ味)、岩中豚の味噌漬け焼き1400円(和食屋なのに肉料理が旨い!)そしてご飯ものでは、ウニいくら丼1400円。単品はどれもボリュームがあり、二人でシェアするにはちょうどいい。「新しいメニューを追加するには、何かを削らなくちゃいけない。でも、どの料理にも固定のファンがいらしてなかなか外せない。それがこれだけのメニュー数になっちゃった理由なんです」。

それだけファンを引きつける理由は微妙な“旨味”の使い方にある。肝醤油、ウニ、チーズや味噌など熟成、発酵ものなど、旨味成分そのものをさりげなく使っているのだ。これは和食の枠にとらわれない発想だと思う。

マコモ茸の豚ロース巻き1200円。マコモは中まで火が通って、ザクッとした食感が特徴。豚の旨味を吸い、柚子胡椒の辛さと香りがほんのり感じられる
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女将の山根さつきさん。オープン3年目からスタッフとして活躍。いつも明るくさわやかな接客で人気

その料理に合う飲み物を選んでくれるのが、女将のさつきさん。彼女のもてなしこそこの店の大きな魅力のひとつに違いない。人気が出るとすぐに2店目、移転して変わってしまう店が多いなか、「青」は少しも変わらない。こんな店こそ応援したい。でないと、ちゃんとした料理を誰もが楽しめる値段で安心して食べられる店がなくなってしまう。

新しい店も気になるけれど、やっぱり10年を超す店には、大きなメッセージを感じる。

炙りエンガワの棒寿司1000円。カレイのエンガワを巻いた棒寿司。香りと脂のバランスが丁度よい
日本酒は以下、さつきさんのおすすめ。宮城「日高見」(超辛口純米)、伯来星(特別純米)、「長陽福娘」(純米吟醸)、「石鎚」(純米吟醸)1合800円~1000円
老若男女、幅広い客層で埋まるカウンター。19時から、22時からがにぎわう時間帯
奥にはテーブル2卓、合計8名が座れるスペースあり



住所:東京都渋谷区西原3-24-12
電話番号:03-3485-8808
営業時間:18:00~深夜1:00(LO.閉店深夜2:00)
定休日:月曜日

口コミ・写真など

※この情報は取材時の情報です。ご利用の際は事前にご確認ください。

この記事を書いたライター情報

犬養 裕美子

犬養 裕美子

レストランジャーナリスト

東京を中心に地方や海外の食文化、レストラン事情を最前線で取材。ファッション誌から専門誌まで数多くの雑誌で連載を持ち、その店の良さ、時代性をわかりやすく解説。特に新しい店の評価に対する読者の信頼は厚い。食に関わる講演・審査員など多数。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員。

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